The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-15] 口述演題(運動器)15

Sat. May 13, 2017 6:10 PM - 7:10 PM B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:青木 一治(名古屋学院大学リハビリテーション学部理学療法学科)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-15-2] 人工股関節全置換術後3カ月の歩数・身体活動レベルに関係する因子の調査

分藤 英樹1,3, 井上 博文1, 山田 健治2, 都甲 純1, 穴見 早苗1, 永田 帆丸1, 朝来野 恵太1, 小出 美和1, 加藤 浩3 (1.大分県立病院リハビリテーション科, 2.大分県立病院整形外科, 3.九州看護福祉大学大学院看護福祉学研究科健康支援科学専攻)

Keywords:人工股関節全置換術, 健康, 指導

【はじめに,目的】

歩数と活動強度(メッツ)は健康づくりの目安として健康日本21に明記されており,一般的指標である。しかし,人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)後の歩数,活動強度の回復過程についての報告は希少である。また,当院では外来リハビリテーションは行っていないため,自宅退院直前(THA後1カ月目)の自主練習指導は不可欠である。そこで,効果的な自主練習指導を実践するため,THA後3カ月目の歩数,身体活動レベル(以下,強度)と関係が深いTHA後3カ月目の因子について調査した。


【方法】

対象は2016年にTHAを施行した女性10名(年齢66.8±8.3歳)とし,慢性関節リウマチ,中枢神経疾患,再THAの症例は除外した。THAは全て同一医師により後側方アプローチにて施行した。測定は自宅退院となるTHA後1カ月目と3カ月目とした。

歩数(歩/日)と強度はライフコーダGS(スズケン社製)を用いて1週間程測定し,歩数の最低値,最大値,中央値を抽出した。ライフコーダに設定されている強度1,2はウィンドウショッピングなどの歩行,3は健常定常歩行,4は速歩である。強度1~4は各頻度を日毎で分け測定期間の平均値とした。歩数,強度以外の評価項目は疼痛(安静・荷重・歩行時のNumerical Rating Scale),関節可動域(両股関節屈曲・伸展・外転・内転,膝関節屈曲・伸展,足関節背屈・底屈),筋力(両股関節屈曲・伸展・外転,膝関節屈曲,伸展),TUG(通常・最大努力),10m歩行スピード(通常・最大努力),Life-Space Assessment,SF-36,JHEQ,自己効力感の9項目とした。筋力の測定には徒手筋力計モービィ(酒井医療)を用いた。

統計処理はSPSS 23(日本IBM社製)を使用し,THA後3カ月目の歩数,強度に関連する因子についてSpearmanの順位相関分析を用いて検討した(p<.01)。


【結果】

歩数(歩/日)は最低値,最大値,中央値の順に1カ月目1530±963,2716±1114,2040±1022であり,3カ月目2127±1419,4777±2429,3339±2041であった。強度1~4の割合(%)は順に1カ月目33.5,53.4,11.1,1.9であり,3カ月目31.2,45,12.6,11であった。

相関については,3カ月の歩数と術側膝関節屈筋,強度1とSF36体の痛み・社会生活機能,強度2とSF36身体機能,強度3と術側股関節屈・外転筋,膝関節屈筋,対側股関節屈筋,強度4と術側股関節屈筋・外転筋,膝関節屈筋,対側股関節屈・伸筋が相関していた。

【結論】

THA後3カ月の最大歩数は65歳以上の女性の平均歩数4500歩/日に近いが,健康日本21の示す目標値6000歩/日には及ばず,健康づくりのためにはさらなる改善が必要である。歩数の向上によって強度1・2の頻度も高くなることから,退院までに心理機能面へのアプローチも必要である。

また,強度3・4の割合は改善傾向であるものの23%と低い。自主練習指導の際には,術側股関節だけに着目するのではなく膝関節や対側股関節も意識して筋力発揮を促す必要がある。