[O-MT-15-3] 人工股関節置換術後の動作のQOLと満足度が一致しない患者の特徴
Keywords:人工股関節置換術, QOL, 満足度
【目的】人工股関節置換術(THA)術後の理学療法の一つの目標としてADLの獲得・向上があり,その結果,QOLの向上が見込める。しかしながら臨床現場においてはTHA術後の満足度と動作能力が一致しない患者も散見される。そこで,本研究の目的は患者立脚型評価における動作面のQOLと満足度に一致しない患者の特徴を把握することとした。
【対象と方法】対象はTHAを施行された65名(男性14名,女性51名,年齢60.2±12.8歳,BMI 22.9±3.3kg/m2)とした。対象者は当院のTHA術後プロトコールに準じてリハビリテーションを行い,術後3週で退院となった。測定項目はTHA術後5ヶ月の身体能力,術側の股関節ROM,下肢筋力とした。身体能力としてはTimed up and go test,立ち座りテスト,階段昇降テストを用いて測定した。股関節ROMの測定は,日本リハビリテーション医学会の測定方法に準じて術側の屈曲と伸展のROMを計測し,5°単位にて記録した。下肢筋力は,術側の膝関節伸展筋力,股関節外転筋力を測定した。膝関節伸展筋力の測定にはIsoforce GT-330(OG技研社製),股関節外転筋力の測定には徒手筋力計Hand-Held Dynamometer(日本MEDIX社製)を用いて等尺性筋力を測定した。それぞれ2回測定し最大値を採用した。筋力値は膝関節伸展筋力と股関節外転筋力はトルク体重比(Nm/kg),脚伸展筋力は体重比(N/kg)を算出した。また,QOLの患者立脚型評価として,THA術後5ヶ月の日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)を評価した。さらに,環境因子として住宅環境やベッドの有無を調査した。JHEQの満足度と動作項目を組み合わせたマトリックスを作成し,満足度と動作項目が一致する群(A群),動作項目が高く満足度が低い群(B群),動作項目が低く満足度が高い群(C群)の3群に分類した。統計処理は,3群間の各測定項目の比較には,一元配置分散分析および多重比較を行い統計学的有意基準は危険率5%未満とした。
【結果と考察】A群は27名(41.5%),B群は19名(29.2%),C群は19名(29.2%)であった。B群は他の2群と比較してJHEQの疼痛が不良の傾向であった(p=0.08)。また,C群は,他の2群と比較して自宅にベッドが有意に設置されていた(p<0.05)。以上より,THA術後5ヶ月において動作のQOLが低いが満足度が高い,あるいは動作のQOLが高いのに満足度が低い患者の存在が明らかとなった。また,動作のQOLが高く満足度が低い症例の満足度には,自宅の環境因子や疼痛が影響していることが示唆された。この結果から,理学療法を展開する上でTHA術後の満足度の向上を図るには,除痛を積極的に行い,自宅環境を考慮する必要があることが示された。
【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,THA術後5ヶ月の動作面のQOLと満足度が一致しない患者の満足度の向上を図るための根拠のある介入の一助となることを示唆していると考えられ,理学療法研究として意義があると思われた。
【対象と方法】対象はTHAを施行された65名(男性14名,女性51名,年齢60.2±12.8歳,BMI 22.9±3.3kg/m2)とした。対象者は当院のTHA術後プロトコールに準じてリハビリテーションを行い,術後3週で退院となった。測定項目はTHA術後5ヶ月の身体能力,術側の股関節ROM,下肢筋力とした。身体能力としてはTimed up and go test,立ち座りテスト,階段昇降テストを用いて測定した。股関節ROMの測定は,日本リハビリテーション医学会の測定方法に準じて術側の屈曲と伸展のROMを計測し,5°単位にて記録した。下肢筋力は,術側の膝関節伸展筋力,股関節外転筋力を測定した。膝関節伸展筋力の測定にはIsoforce GT-330(OG技研社製),股関節外転筋力の測定には徒手筋力計Hand-Held Dynamometer(日本MEDIX社製)を用いて等尺性筋力を測定した。それぞれ2回測定し最大値を採用した。筋力値は膝関節伸展筋力と股関節外転筋力はトルク体重比(Nm/kg),脚伸展筋力は体重比(N/kg)を算出した。また,QOLの患者立脚型評価として,THA術後5ヶ月の日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)を評価した。さらに,環境因子として住宅環境やベッドの有無を調査した。JHEQの満足度と動作項目を組み合わせたマトリックスを作成し,満足度と動作項目が一致する群(A群),動作項目が高く満足度が低い群(B群),動作項目が低く満足度が高い群(C群)の3群に分類した。統計処理は,3群間の各測定項目の比較には,一元配置分散分析および多重比較を行い統計学的有意基準は危険率5%未満とした。
【結果と考察】A群は27名(41.5%),B群は19名(29.2%),C群は19名(29.2%)であった。B群は他の2群と比較してJHEQの疼痛が不良の傾向であった(p=0.08)。また,C群は,他の2群と比較して自宅にベッドが有意に設置されていた(p<0.05)。以上より,THA術後5ヶ月において動作のQOLが低いが満足度が高い,あるいは動作のQOLが高いのに満足度が低い患者の存在が明らかとなった。また,動作のQOLが高く満足度が低い症例の満足度には,自宅の環境因子や疼痛が影響していることが示唆された。この結果から,理学療法を展開する上でTHA術後の満足度の向上を図るには,除痛を積極的に行い,自宅環境を考慮する必要があることが示された。
【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,THA術後5ヶ月の動作面のQOLと満足度が一致しない患者の満足度の向上を図るための根拠のある介入の一助となることを示唆していると考えられ,理学療法研究として意義があると思われた。