[O-MT-15-5] 股関節累積負荷の増大は変形性股関節症の進行に影響を与える
―前向きコホート研究による分析―
Keywords:変形性股関節症, 歩行, 危険因子
【はじめに,目的】
変形性股関節症(股OA)の進行には,遺伝子異常や加齢,骨形態異常などの要因が関与する。さらに,運動時の股関節への過剰な負荷などの力学的要因も疾患進行に関わると考えられている。しかし,股OAの進行と力学的要因との関連性を示した研究は皆無である。遺伝的要因や年齢,骨形態などは保存療法により変化させることはできないが,力学的要因は適切な介入で変化する可能性がある。したがって,股OAの進行と力学的要因との関連性を調査することは重要である。本研究の目的は,12か月間における股OA進行に関与する力学的要因を明らかにすることである。
【方法】
対象は,前期から進行期の二次性股OA患者50名(全例女性:年齢;47.4±10.7歳)とした。ベースラインにおける測定は,年齢,体重,股関節痛(VASによる評価)に加えて,臥位レントゲン正面像による関節変性と骨形態の評価(最小関節裂隙幅[mJSW],Sharp角,CE角,AHI),3次元動作解析装置による歩行評価(自然歩行時の歩行速度,外的股関節モーメント積分値[3平面];3試行の平均値)を行った。また,ベースライン測定時から1か月以内の連続した7日間における歩数(入浴を除く起床から就寝まで)を歩数計で記録した。歩行評価で記録した股関節モーメント積分値に患側下肢の1日平均歩数を乗じて,各3平面における股関節累積負荷を算出した。股関節累積負荷は,股関節に1日に加わる外的負荷の総量を意味する。ベースラインから12か月後にmJSWを再測定した。股OA進行の定義は,先行研究に従い12か月間におけるmJSWの0.5 mm以上の減少とした。なお,mJSWの測定は,患者情報や撮影日を盲検化し1名の検者が行った(ICC[1.1];0.97:最小可検変化量;0.36 mm)。
統計解析では,股OA進行の有無(進行群,非進行群)を従属変数,ベースラインで測定した各変数を独立変数とし,単変量および多変量ロジスティック回帰分析を行った。単変量分析でp<0.1であった独立変数を用いて多変量分析を行った。さらに,年齢と体重は交絡因子になり得るため,年齢と体重で補正した分析も行った(有意水準5%)。
【結果】
50名中21名(42.0%)で股OA進行を認め,進行群におけるmJSWの減少は1.3±0.8 mmであった。
単変量分析の結果,mJSW(進行群;2.9±1.4 mm:非進行群;3.7±1.4 mm),歩数(進行群;7411±2869歩:非進行群;6005±2157歩),前額面の股関節累積負荷(進行群;90.6±50.2 kNm•秒:非進行群;63.0±29.4 kNm•秒)がp<0.1であった。多変量分析の結果,mJSWの低値と前額面の股関節累積負荷の増大は,各々独立して股OA進行に影響を与える要因として抽出され,年齢と体重で補正しても両変数は有意であった。
【結論】
力学的要因として,前額面における股関節累積負荷の増大は12か月間における股OA進行に影響を与えることが明らかとなった。本研究結果は,股OA進行のリスクが高い患者の特定や疾患進行予防のための治療方針の決定に重要な知見である。
変形性股関節症(股OA)の進行には,遺伝子異常や加齢,骨形態異常などの要因が関与する。さらに,運動時の股関節への過剰な負荷などの力学的要因も疾患進行に関わると考えられている。しかし,股OAの進行と力学的要因との関連性を示した研究は皆無である。遺伝的要因や年齢,骨形態などは保存療法により変化させることはできないが,力学的要因は適切な介入で変化する可能性がある。したがって,股OAの進行と力学的要因との関連性を調査することは重要である。本研究の目的は,12か月間における股OA進行に関与する力学的要因を明らかにすることである。
【方法】
対象は,前期から進行期の二次性股OA患者50名(全例女性:年齢;47.4±10.7歳)とした。ベースラインにおける測定は,年齢,体重,股関節痛(VASによる評価)に加えて,臥位レントゲン正面像による関節変性と骨形態の評価(最小関節裂隙幅[mJSW],Sharp角,CE角,AHI),3次元動作解析装置による歩行評価(自然歩行時の歩行速度,外的股関節モーメント積分値[3平面];3試行の平均値)を行った。また,ベースライン測定時から1か月以内の連続した7日間における歩数(入浴を除く起床から就寝まで)を歩数計で記録した。歩行評価で記録した股関節モーメント積分値に患側下肢の1日平均歩数を乗じて,各3平面における股関節累積負荷を算出した。股関節累積負荷は,股関節に1日に加わる外的負荷の総量を意味する。ベースラインから12か月後にmJSWを再測定した。股OA進行の定義は,先行研究に従い12か月間におけるmJSWの0.5 mm以上の減少とした。なお,mJSWの測定は,患者情報や撮影日を盲検化し1名の検者が行った(ICC[1.1];0.97:最小可検変化量;0.36 mm)。
統計解析では,股OA進行の有無(進行群,非進行群)を従属変数,ベースラインで測定した各変数を独立変数とし,単変量および多変量ロジスティック回帰分析を行った。単変量分析でp<0.1であった独立変数を用いて多変量分析を行った。さらに,年齢と体重は交絡因子になり得るため,年齢と体重で補正した分析も行った(有意水準5%)。
【結果】
50名中21名(42.0%)で股OA進行を認め,進行群におけるmJSWの減少は1.3±0.8 mmであった。
単変量分析の結果,mJSW(進行群;2.9±1.4 mm:非進行群;3.7±1.4 mm),歩数(進行群;7411±2869歩:非進行群;6005±2157歩),前額面の股関節累積負荷(進行群;90.6±50.2 kNm•秒:非進行群;63.0±29.4 kNm•秒)がp<0.1であった。多変量分析の結果,mJSWの低値と前額面の股関節累積負荷の増大は,各々独立して股OA進行に影響を与える要因として抽出され,年齢と体重で補正しても両変数は有意であった。
【結論】
力学的要因として,前額面における股関節累積負荷の増大は12か月間における股OA進行に影響を与えることが明らかとなった。本研究結果は,股OA進行のリスクが高い患者の特定や疾患進行予防のための治療方針の決定に重要な知見である。