[O-MT-17-4] 跛行の有無は人工股関節全置換術後患者の転倒予測因子となる
Keywords:人工股関節全置換術, 転倒, 変形性股関節症
【はじめに,目的】
人工股関節全置換術(THA)後患者は転倒の危険性が高い。THA後患者は転倒により大腿骨ステム周囲骨折や脱臼などの重篤な傷害を受ける場合があり,転倒予防対策が必要である。しかし,THA後患者の転倒発生原因については未だ明らかになっていない。我々の研究において,末期変形性股関節症では跛行の有無が転倒発生に関連することが明らかになっている。そこで本研究では,THA後の跛行の有無と転倒発生の関連性について検討することを目的とした。
【方法】
2013年2月から2015年2月までに当院にてTHAを施行した患者286名を対象とした。対象除外基準は,男性,慢性関節リウマチ,大腿骨頭壊死症,中枢神経疾患,精神疾患,めまいを有する者,大腿骨頚部骨折術後,再THA,THA後1年以内に反対側THAを受けた者とした。
転倒調査は,THA後1年間の転倒経験の有無と転倒発生日を自己記入式のアンケートと問診にて聴取した。転倒発生に関連する要因として,手術前に年齢,BMI,服薬数,合併症の有無を調査し,術後3週経過時に股関節屈曲・伸展・外転・内転可動域(ROM),股関節外転筋力,膝関節伸展筋力,10m歩行時間,跛行の有無を調査した。筋力はHand-Held Dynamometer(アニマ社製μTas F-1)を使用して,手術側の最大等尺性筋力を測定し,トルク体重比(Nm/kg)を算出した。跛行の有無は歩行観察により跛行の程度を4段階(跛行なし,軽度,中等度,重度)にて判定し,中等度か重度の場合を跛行ありとした。跛行の程度の判定基準は,跛行なしは異常運動なし,軽度は骨盤・下肢に軽度の異常運動あり,中等度は骨盤・下肢に明らかな異常運動ありまたは体幹に軽度の異常運動あり,重度は体幹・骨盤・下肢に明らかな異常運動ありとした。
統計解析はCox比例ハザードモデルを用いて強制投入法によりTHA後の跛行の有無と転倒発生の関連性について検討した。モデル1はCrudeモデルにて跛行の有無を投入し,モデル2にて年齢,BMIで調整を行い,モデル3にて服薬数,合併症の有無,ROM,筋力,10m歩行時間で調整した。有意水準は全て5%とした。
【結果】
対象者のうち除外基準に該当せず,欠損値のないTHA後患者162名(年齢:62.6±8.7歳)を解析対象とした。THA後1年間での転倒発生率は31.5%(51名)であった。Cox比例ハザードモデルによる分析の結果,跛行の有無(調整済みハザード比:3.62,95%信頼区間:1.86-7.06,p<0.01)と膝関節伸展筋力(調整済みハザード比:0.25,95%信頼区間:0.07-0.85,p<0.05)が転倒発生に関連する因子として抽出された(モデル3)。
【結論】
THA後患者の転倒には跛行と膝伸展筋力の低下が関連していることが明らかになった。特に跛行を有する患者の転倒危険率は3.6倍であり,跛行の有無はTHA後患者の転倒発生の有力な予測因子と言える。転倒予防の観点からも跛行の改善はTHA後のリハビリテーションの重要課題であると考える。
人工股関節全置換術(THA)後患者は転倒の危険性が高い。THA後患者は転倒により大腿骨ステム周囲骨折や脱臼などの重篤な傷害を受ける場合があり,転倒予防対策が必要である。しかし,THA後患者の転倒発生原因については未だ明らかになっていない。我々の研究において,末期変形性股関節症では跛行の有無が転倒発生に関連することが明らかになっている。そこで本研究では,THA後の跛行の有無と転倒発生の関連性について検討することを目的とした。
【方法】
2013年2月から2015年2月までに当院にてTHAを施行した患者286名を対象とした。対象除外基準は,男性,慢性関節リウマチ,大腿骨頭壊死症,中枢神経疾患,精神疾患,めまいを有する者,大腿骨頚部骨折術後,再THA,THA後1年以内に反対側THAを受けた者とした。
転倒調査は,THA後1年間の転倒経験の有無と転倒発生日を自己記入式のアンケートと問診にて聴取した。転倒発生に関連する要因として,手術前に年齢,BMI,服薬数,合併症の有無を調査し,術後3週経過時に股関節屈曲・伸展・外転・内転可動域(ROM),股関節外転筋力,膝関節伸展筋力,10m歩行時間,跛行の有無を調査した。筋力はHand-Held Dynamometer(アニマ社製μTas F-1)を使用して,手術側の最大等尺性筋力を測定し,トルク体重比(Nm/kg)を算出した。跛行の有無は歩行観察により跛行の程度を4段階(跛行なし,軽度,中等度,重度)にて判定し,中等度か重度の場合を跛行ありとした。跛行の程度の判定基準は,跛行なしは異常運動なし,軽度は骨盤・下肢に軽度の異常運動あり,中等度は骨盤・下肢に明らかな異常運動ありまたは体幹に軽度の異常運動あり,重度は体幹・骨盤・下肢に明らかな異常運動ありとした。
統計解析はCox比例ハザードモデルを用いて強制投入法によりTHA後の跛行の有無と転倒発生の関連性について検討した。モデル1はCrudeモデルにて跛行の有無を投入し,モデル2にて年齢,BMIで調整を行い,モデル3にて服薬数,合併症の有無,ROM,筋力,10m歩行時間で調整した。有意水準は全て5%とした。
【結果】
対象者のうち除外基準に該当せず,欠損値のないTHA後患者162名(年齢:62.6±8.7歳)を解析対象とした。THA後1年間での転倒発生率は31.5%(51名)であった。Cox比例ハザードモデルによる分析の結果,跛行の有無(調整済みハザード比:3.62,95%信頼区間:1.86-7.06,p<0.01)と膝関節伸展筋力(調整済みハザード比:0.25,95%信頼区間:0.07-0.85,p<0.05)が転倒発生に関連する因子として抽出された(モデル3)。
【結論】
THA後患者の転倒には跛行と膝伸展筋力の低下が関連していることが明らかになった。特に跛行を有する患者の転倒危険率は3.6倍であり,跛行の有無はTHA後患者の転倒発生の有力な予測因子と言える。転倒予防の観点からも跛行の改善はTHA後のリハビリテーションの重要課題であると考える。