The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-18] 口述演題(運動器)18

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:小松 泰喜(日本大学スポーツ科学部)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-18-2] 大腿骨近位部骨折における栄養状態と退院時FIM項目の関連
神戸市急性期総合病院の理学療法士による多施設共同研究

中馬 優樹1, 田中 利明2, 井上 達朗2,4, 坂本 裕規3,4 (1.済生会兵庫県病院, 2.西神戸医療センター, 3.神戸市立医療センター中央市民病院, 4.神戸大学大学院保健学研究科)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 栄養状態, 多施設共同研究

【はじめに,目的】

大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン(第2版)では大腿骨近位部骨折術後の歩行能力回復に影響する因子に年齢,受傷前歩行能力,認知症が挙げられているが,近年,栄養状態が歩行能力に影響するとの報告もされるようになってきた。しかし歩行以外の日常生活動作能力(以下,ADL能力)と栄養状態との関連に関する報告はまだ少ない。そこで今回,大腿骨近位部骨折患者において栄養状態が退院時ADL能力と関連があるのか,またADL能力のどのような項目に影響があるのかを検討した。

【方法】

第2・3次救急総合病院の3施設に2013年6月1日から2016年6月30日に入院した患者を調査対象とした。大腿骨近位部骨折の手術を施行した466名のうち,65歳未満例,死亡・術後急性増悪例,受傷前歩行不能例,術後免荷期間を要した例を除いた333名(男性64名,女性269名,83.4±7.4歳)を対象とした。

ADL能力は術後と退院時にFIM運動項目(以下,mFIM)を,歩行能力は10m歩行速度,TUGを術後2週・退院時に測定した。栄養評価は術前・術後のAlb・Hbを記録した。また術前のAlb値を用いてGNRIを算出し,基準値である92未満を低栄養群,92以上を良好群とした。基本情報とmFIM各項目・歩行能力において2群間で比較を行った。数値項目にMann-Whitneyの検定と対応のないt-検定,カテゴリー項目にχ2検定を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

低栄養群は178名(83.8±7.3歳),良好群は155名(83.0±7.5歳)に分類され,年齢や骨折部位・在院日数・HDS-Rなどに差は認めなかった。低栄養群の退院時mFIMは整容(p<0.05),清拭(p<0.01),上衣更衣(p<0.05),トイレ(p<0.05),排尿管理(p<0.01),排便管理(p<0.01),合計点数(p<0.05)で有意に低値を示した。退院時10m歩行速度は低栄養群26.7±19.0秒,良好群17.8±6.7秒と低栄養群で有意に遅く(p<0.01),TUGも低栄養群43.3±25.3秒,良好群26.6±11.9秒と有意差を認めた(p<0.01)。

【結論】

10m歩行速度,TUGは低栄養群で有意に遅く,先行研究と同様の結果であった。退院時mFIM合計点数では低栄養群で有意に低値であり,栄養状態が退院時ADL能力に影響している可能性が示唆された。各項目でみると,更衣やトイレ動作など自宅復帰に影響する項目でも有意差を認めた。これらのADL項目には体幹機能や非術側下肢機能などが影響していると考えられるが,今回これらの評価は行えていないため,関連性については不明である。

今回,低栄養を示した大腿骨近位部骨折患者を対象にFIMを用いて退院時ADLの特徴を検証した。整容・トイレ・上衣更衣・排尿排便管理において有意に低値を示し,低栄養は歩行能力のみならずセルフケアを含めたADL能力に影響があることが示唆された。これらは自宅復帰を目指すうえで重要な項目であり,今後さらに詳細な評価と関連性についての検証が必要であると思われる。