[O-MT-19-6] 腰部脊柱管狭窄症における脊柱矢状面アライメントと疼痛および立位重心動揺の関係
術前後の検討
Keywords:腰部脊柱管狭窄症, 腰痛, 立位重心動揺
【目的】
脊柱矢状面アライメント異常は腰痛の原因となるばかりではなく,腰椎疾患の術後遺残腰痛の原因となる。腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)症例は,安静立位時の腰椎前弯角が小さく骨盤後傾が大きい。さらに疼痛を回避するために体幹前傾を呈する。われわれは,腰椎疾患の術前における脊柱矢状面アライメントと立位重心動揺の関係を検討し,体幹前傾,骨盤後傾した症例では動揺が大きいことを報告した。しかし,疾患別の検討はできておらず,術後との比較もできていない。本研究の目的は,LCS症例における脊柱矢状面アライメントと疼痛,および立位重心動揺の術前後の関係について検討することである。
【方法】
対象は,2015年10月から16年7月に当院で術前後の評価を実施し,立位保持が可能であった腰部脊柱管狭窄症14例(男性10例,女性4例,平均年齢73.5±8.9歳)とした。検討項目は,術前と術後3ヶ月の脊柱矢状面アライメント,術前と退院時(術後2週)における立位重心動揺検査,腰痛・下肢痛のVisual Analogue Scale(以下VAS)とした。矢状面アライメントは,立位全脊柱X線側面像よりSagittal Vertical Axis(以下SVA),胸椎後弯角(以下TK),腰椎前弯角(以下LL),仙骨傾斜角(以下SS),骨盤回旋角(以下PT),骨盤形態角(以下PI)を測定した。重心動揺検査には,アニマ社製ツイングラビコーダGP-31Wを用い,開眼・閉眼での立位保持30秒間の外周面積,総軌跡長を計測した。腰痛は第2腰椎から仙骨までの殿筋を除外した部分,下肢痛は殿筋部,大腿以遠と定義した。統計学的検討は,術前と術後それぞれの矢状面アライメント,重心動揺検査,腰痛・下肢痛VASにおいて,対応のあるt検定を用い有意水準は5%とした。
【結果】
SVAは術前が56.6±43.8mm,術後は33.3±37.3mmであり両群間に有意差を認め,術後は良好なアライメントとされる0~40mmへと減少していた。TK,LL,SS,PT,PIは有意差を認めなかった。開眼時総軌跡長は術前が62.2±18.2cm,退院時は74.3±22.9cmで有意差を認め,退院時に動揺が増大していた。外周面積,閉眼時総軌跡長は有意差を認めなかった。腰痛VASは術前が39.6±26.8mm,退院時が17.1±14.6mm,下肢痛VASは術前が51.2±33.0mm,退院時は19.4±14.1mmであり,どちらも両群間に有意差を認め,退院時は疼痛が軽減していた。
【結論】
術後は腰痛・下肢痛VASが減少し,さらにSVAも減少していた。LCS症例は,体幹前傾位となり疼痛を緩和させる姿勢をとることから,疼痛が軽減したことにより体幹の前傾が減少したと考えられる。一方,開眼時総軌跡長は退院時の方が高値を示した。腰背部に筋疲労を生じると重心動揺が増大する報告もあり,本研究においては,手術侵襲により腰背部の筋力低下を生じ,総軌跡長が増大したと考える。術後の理学療法では,術部の保護と併行して筋力増強を行い,立位バランスの向上に努める必要がある。今後はさらに体幹の筋活動も含めて検討していきたい。
脊柱矢状面アライメント異常は腰痛の原因となるばかりではなく,腰椎疾患の術後遺残腰痛の原因となる。腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)症例は,安静立位時の腰椎前弯角が小さく骨盤後傾が大きい。さらに疼痛を回避するために体幹前傾を呈する。われわれは,腰椎疾患の術前における脊柱矢状面アライメントと立位重心動揺の関係を検討し,体幹前傾,骨盤後傾した症例では動揺が大きいことを報告した。しかし,疾患別の検討はできておらず,術後との比較もできていない。本研究の目的は,LCS症例における脊柱矢状面アライメントと疼痛,および立位重心動揺の術前後の関係について検討することである。
【方法】
対象は,2015年10月から16年7月に当院で術前後の評価を実施し,立位保持が可能であった腰部脊柱管狭窄症14例(男性10例,女性4例,平均年齢73.5±8.9歳)とした。検討項目は,術前と術後3ヶ月の脊柱矢状面アライメント,術前と退院時(術後2週)における立位重心動揺検査,腰痛・下肢痛のVisual Analogue Scale(以下VAS)とした。矢状面アライメントは,立位全脊柱X線側面像よりSagittal Vertical Axis(以下SVA),胸椎後弯角(以下TK),腰椎前弯角(以下LL),仙骨傾斜角(以下SS),骨盤回旋角(以下PT),骨盤形態角(以下PI)を測定した。重心動揺検査には,アニマ社製ツイングラビコーダGP-31Wを用い,開眼・閉眼での立位保持30秒間の外周面積,総軌跡長を計測した。腰痛は第2腰椎から仙骨までの殿筋を除外した部分,下肢痛は殿筋部,大腿以遠と定義した。統計学的検討は,術前と術後それぞれの矢状面アライメント,重心動揺検査,腰痛・下肢痛VASにおいて,対応のあるt検定を用い有意水準は5%とした。
【結果】
SVAは術前が56.6±43.8mm,術後は33.3±37.3mmであり両群間に有意差を認め,術後は良好なアライメントとされる0~40mmへと減少していた。TK,LL,SS,PT,PIは有意差を認めなかった。開眼時総軌跡長は術前が62.2±18.2cm,退院時は74.3±22.9cmで有意差を認め,退院時に動揺が増大していた。外周面積,閉眼時総軌跡長は有意差を認めなかった。腰痛VASは術前が39.6±26.8mm,退院時が17.1±14.6mm,下肢痛VASは術前が51.2±33.0mm,退院時は19.4±14.1mmであり,どちらも両群間に有意差を認め,退院時は疼痛が軽減していた。
【結論】
術後は腰痛・下肢痛VASが減少し,さらにSVAも減少していた。LCS症例は,体幹前傾位となり疼痛を緩和させる姿勢をとることから,疼痛が軽減したことにより体幹の前傾が減少したと考えられる。一方,開眼時総軌跡長は退院時の方が高値を示した。腰背部に筋疲労を生じると重心動揺が増大する報告もあり,本研究においては,手術侵襲により腰背部の筋力低下を生じ,総軌跡長が増大したと考える。術後の理学療法では,術部の保護と併行して筋力増強を行い,立位バランスの向上に努める必要がある。今後はさらに体幹の筋活動も含めて検討していきたい。