The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-01] 口述演題(神経)01

Fri. May 12, 2017 11:00 AM - 12:00 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:保苅 吉秀(順天堂大学医学部附属順天堂医院リハビリテーション室)

日本神経理学療法学会

[O-NV-01-6] 重度歩行障害を有する急性期脳卒中患者に必要とされる長下肢装具使用期間の検討

熊谷 謙一, 山内 康太, 小柳 靖裕, 荒川 修治 (製鉄記念八幡病院)

Keywords:長下肢装具, 脳卒中, 歩行

【はじめに,目的】

脳卒中患者に対する長下肢装具使用は,治療効果のエビデンスに乏しい本邦に限られた治療手段である。長下肢装具から短下肢装具へ移行(カットダウン)可能となる期間やその割合は不明であり,これらの情報は装具作成に重要な情報となりうる。今回,歩行不能で,長下肢装具を使用した急性期脳卒中患者を対象に,長下肢装具のカットダウン可能な割合および,カットダウンまでに必要とされる期間を検討した。

【方法】

対象は2010年4月から2015年2月に脳卒中発症1週以内に当院入院し,発症前ADLが自立しており,リハビリテーションが行われた連続1102例中,入院期間中に長下肢装具を用いた歩行練習が行われた50例(4.5%)とした。長下肢装具使用期間の推定値検討にはKaplan-Meier estimateを用い,急性期病院退院まで追跡を行った。エンドポイントは長下肢装具のカットダウンとし,50%の症例がカットダウンするまでの期間を算出した。データは中央値(四分位範囲),実数(割合)で記載した。

【結果】

対象者の特性は,年齢74(69-79)歳,男性25例(50%),梗塞29例(58%),入院時National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)score 13.5(6.3-18)点であった。理学療法開始は入院1(1-3)日後で,離床開始日は入院3(2-5.3)日であった。また,入院7日目における装具を使用しない状態での歩行能力は,47例(94%)が介助下で歩行不可能で,Barthel Index 5(0-20)点,FIM 25(18-47.3)点と重度身体機能障害を認めた。長下肢装具使用開始日は,入院9(7-14.8)日,理学療法開始7(5-12.8)日であった。在院日数は39(33-45.5)日であった。長下肢装具使用期間は19(12-27)日で,このうち長下肢装具のカットダウンは,入院中に27例(54%)で得られた。長下肢装具離脱までの推定期間中央値は26(95%信頼区間:19.1-32.9)日であった。退院転帰は49例(98%)が回復期病院,1例(2%)が施設退院となっていた。発症半年後の追跡は44例(88%)で可能であり,mRSの中央値は4(3-4)で,自立歩行(mRS0-3)可能な症例は16例(32%)であった。

【結論】

長下肢装具は急性期脳卒中患者の5%に使用されていた。このうち長下肢装具のカットダウンは半数で得られ,約1ヶ月間の継続介入が離脱に必要と考えられた。長下肢装具の必要とされる推定使用期間は,急性期病院での使用期間よりも長かったため,平均的には回復期病院転院後に長下肢装具を離脱しやすいと考えられた。また,今回長下肢装具は全例施設備品を使用されていた。急性期脳卒中患者に対する長下肢装具は約1ヶ月の使用で半数がカットダウン可能であったことから,患者に経済負担をかけない,備品を用いた積極的治療介入が望ましい可能性が示唆される結果であった。