[O-NV-03-2] 急性期脳卒中患者における膝伸展筋力を用いた歩行自立の判断
Keywords:急性期, 脳卒中, 膝伸展筋力
【はじめに,目的】
脳卒中患者において,麻痺側下肢筋力は歩行速度,歩行自立度と関連することが報告されており,臨床上重要な評価項目の一つである。また,歩行自立に必要な基準値が示されているが,これらは回復期から維持期を対象にした報告であり,急性期にも同様に適応できるかは不明である。早期リハビリテーションが推奨される今日において,急性期の知見は重要である。本研究の目的は,急性期脳卒中患者の麻痺側下肢筋力が歩行自立を判断する因子となるか検討し,その基準値を示すことである。
【方法】
対象は当院に入院しリハビリテーションを行った脳卒中片麻痺患者とした。除外基準は両側性の運動麻痺を有している症例,随意的な膝関節伸展運動が全くみられなかった症例,重篤な骨関節疾患,高次脳機能障害や認知症により指示に従えない症例とした。さらに,脳卒中発症後30日以内に下肢筋力測定が行えなかった症例を除外した。筋力の測定には,Hand-Held Dynamometer(アニマ社製,μTas F-100)を使用し,両側の等尺性膝伸展筋力を測定した。測定値を体重にて除し,正規化した値を用いた(N/kg)。統計学的分析は,従属変数を歩行自立(Functional Ambulation Category 4以上)の可否とし,独立変数を性別,年齢,麻痺側,下肢Brunnstrom Recovery stage(以下,BRS),麻痺側および非麻痺側の膝伸展筋力,Berg Balance Scale(以下,BBS)の7項目として,ロジスティック回帰分析を用いた。その後,抽出された因子をReceiver Operating Characteristic Curve(以下,ROC曲線)からArea Under the Curve(以下,AUC)と感度,特異度を算出し,歩行自立を判断するのに最も適したカットオフ値を求めた。解析はIBM SPSS Statistics Version 19を用い,5%を有意水準とした。
【結果】
測定対象は177名(脳出血41名,脳梗塞136名,男性107名,女性70名,平均年齢69.7±1.0歳)で,BRSはIII 10名,IV 25名,V 63名,VI 79名であった。発症から測定までの期間は中央値14.0(10.5-19.5)日で,麻痺側膝伸展筋力は中央値2.73(1.75-3.61)N/kg,非麻痺側膝伸展筋力は中央値4.07(3.15-5.08)N/kgであった。ロジスティック回帰分析の結果,歩行自立に影響を与える因子としては麻痺側膝伸展筋力体重比(オッズ比1.1)およびBBS(オッズ比1.4)が抽出された。麻痺側膝伸展筋力体重比のROC曲線(AUC 0.85)から求めた歩行自立のカットオフ値は2.87 N/kg(感度76.1%,特異度76.5%)であった。
【結論】
結果から,急性期脳卒中患者の麻痺側下肢筋力は維持期を対象とした研究と同様に,歩行自立の可否に影響をおよぼすことが示された。急性期においても,脳卒中患者のリハビリテーション介入をする上で,麻痺側下肢筋力が歩行自立の判断基準の一つとなる。
脳卒中患者において,麻痺側下肢筋力は歩行速度,歩行自立度と関連することが報告されており,臨床上重要な評価項目の一つである。また,歩行自立に必要な基準値が示されているが,これらは回復期から維持期を対象にした報告であり,急性期にも同様に適応できるかは不明である。早期リハビリテーションが推奨される今日において,急性期の知見は重要である。本研究の目的は,急性期脳卒中患者の麻痺側下肢筋力が歩行自立を判断する因子となるか検討し,その基準値を示すことである。
【方法】
対象は当院に入院しリハビリテーションを行った脳卒中片麻痺患者とした。除外基準は両側性の運動麻痺を有している症例,随意的な膝関節伸展運動が全くみられなかった症例,重篤な骨関節疾患,高次脳機能障害や認知症により指示に従えない症例とした。さらに,脳卒中発症後30日以内に下肢筋力測定が行えなかった症例を除外した。筋力の測定には,Hand-Held Dynamometer(アニマ社製,μTas F-100)を使用し,両側の等尺性膝伸展筋力を測定した。測定値を体重にて除し,正規化した値を用いた(N/kg)。統計学的分析は,従属変数を歩行自立(Functional Ambulation Category 4以上)の可否とし,独立変数を性別,年齢,麻痺側,下肢Brunnstrom Recovery stage(以下,BRS),麻痺側および非麻痺側の膝伸展筋力,Berg Balance Scale(以下,BBS)の7項目として,ロジスティック回帰分析を用いた。その後,抽出された因子をReceiver Operating Characteristic Curve(以下,ROC曲線)からArea Under the Curve(以下,AUC)と感度,特異度を算出し,歩行自立を判断するのに最も適したカットオフ値を求めた。解析はIBM SPSS Statistics Version 19を用い,5%を有意水準とした。
【結果】
測定対象は177名(脳出血41名,脳梗塞136名,男性107名,女性70名,平均年齢69.7±1.0歳)で,BRSはIII 10名,IV 25名,V 63名,VI 79名であった。発症から測定までの期間は中央値14.0(10.5-19.5)日で,麻痺側膝伸展筋力は中央値2.73(1.75-3.61)N/kg,非麻痺側膝伸展筋力は中央値4.07(3.15-5.08)N/kgであった。ロジスティック回帰分析の結果,歩行自立に影響を与える因子としては麻痺側膝伸展筋力体重比(オッズ比1.1)およびBBS(オッズ比1.4)が抽出された。麻痺側膝伸展筋力体重比のROC曲線(AUC 0.85)から求めた歩行自立のカットオフ値は2.87 N/kg(感度76.1%,特異度76.5%)であった。
【結論】
結果から,急性期脳卒中患者の麻痺側下肢筋力は維持期を対象とした研究と同様に,歩行自立の可否に影響をおよぼすことが示された。急性期においても,脳卒中患者のリハビリテーション介入をする上で,麻痺側下肢筋力が歩行自立の判断基準の一つとなる。