[O-NV-04-1] 脳卒中後片麻痺者の膝関節運動を改善するロボット機構付長下肢装具の開発
Keywords:ロボット, 脳卒中後片麻痺, 歩行
【はじめに,目的】
一般的に,脳卒中後片麻痺者においては,膝関節に歩容異常が生じやすいことが知られている(DeQuervain IAK, 1996,Mulroy S, 2003)。近年,このような歩行パターンを改善するための方策として,ロボットを使用したリハビリテーションが行われている。我々の研究グループでは,歩行時の膝関節の屈曲伸展運動を補助する機構を取り付けて長下肢装具をロボット化する装置を開発した。これまで,3名の脳卒中後片麻痺者に対してプロトタイプを用いた検討では,遊脚期の麻痺側膝関節屈曲角度の増加が観察された。本研究では,実際に長下肢装具を利用した機器を用い,脳卒中後片麻痺者の歩行機能に与える影響について検討した。
【方法】
対象者は地域在住の脳卒中後片麻痺者17名(男性14名,女性3名)とした。対象者に装具なしでの歩行課題とロボットを用いた歩行課題を快適歩行にてランダムな順序で行わせた。ロボット課題では,機器を装着して補助トルクを与えない10m歩行(ロボットpre条件),補助トルクを膝関節に与えた状態での連続歩行,および再度トルクを与えない10m歩行(ロボットpost条件)を行った。両課題ともに連続歩行は3分間計測し,1分毎の時間間隔で分割して解析を行った。
使用した機器は,内蔵したセンサーから歩行周期を自動判別し,適切なタイミングで膝関節の屈曲伸展運動を補助するよう設計されている。本測定における補助トルクの大きさは歩容が崩れない適切な大きさまで測定者が調整した。
各歩行条件のパフォーマンス指標として歩行速度,10mあたりの歩数を算出した。また,麻痺側膝関節角度を対象に電気ゴニオメーターにより歩行時の膝可動範囲を算出した。まず,装具装着自体の影響を調べるために,ロボットpre条件と装具なし条件を比較した。次に補助トルクの影響を調べるために,ロボットpre条件とロボット条件での歩行を比較した。連続歩行中の違いを見るためにロボット条件と装具なし条件で比較し,最後に事後効果を確認するためにロボットpre条件とpost条件を比較した。パフォーマンス指標と膝可動範囲は対応のあるt検定またはWilcoxonの符号付順位和検定,一元配置反復測定分散分析またはFriedman検定によって比較を行った。
【結果】
装具装着のみでは歩行速度,歩数,膝可動範囲のいずれも変化が見られなかった。しかし,補助トルクを与えることで,歩行速度の有意な増加(p<0.01),歩数の有意な減少(p<0.05),膝可動範囲の有意な増加を示した(p<0.01)。連続歩行中は同一課題では変化しなかったが,膝可動範囲はロボット課題において有意に大きかった(p<0.016)。また,ロボットによる事後効果は,歩行速度,歩数,膝可動範囲において有意に観察された(p<0.01)。
【結論】
本研究の結果より,ロボットによる補助トルクを与える事でパフォーマンスや関節運動を変化させることが出来,その効果は事後も持続することが示唆された。
一般的に,脳卒中後片麻痺者においては,膝関節に歩容異常が生じやすいことが知られている(DeQuervain IAK, 1996,Mulroy S, 2003)。近年,このような歩行パターンを改善するための方策として,ロボットを使用したリハビリテーションが行われている。我々の研究グループでは,歩行時の膝関節の屈曲伸展運動を補助する機構を取り付けて長下肢装具をロボット化する装置を開発した。これまで,3名の脳卒中後片麻痺者に対してプロトタイプを用いた検討では,遊脚期の麻痺側膝関節屈曲角度の増加が観察された。本研究では,実際に長下肢装具を利用した機器を用い,脳卒中後片麻痺者の歩行機能に与える影響について検討した。
【方法】
対象者は地域在住の脳卒中後片麻痺者17名(男性14名,女性3名)とした。対象者に装具なしでの歩行課題とロボットを用いた歩行課題を快適歩行にてランダムな順序で行わせた。ロボット課題では,機器を装着して補助トルクを与えない10m歩行(ロボットpre条件),補助トルクを膝関節に与えた状態での連続歩行,および再度トルクを与えない10m歩行(ロボットpost条件)を行った。両課題ともに連続歩行は3分間計測し,1分毎の時間間隔で分割して解析を行った。
使用した機器は,内蔵したセンサーから歩行周期を自動判別し,適切なタイミングで膝関節の屈曲伸展運動を補助するよう設計されている。本測定における補助トルクの大きさは歩容が崩れない適切な大きさまで測定者が調整した。
各歩行条件のパフォーマンス指標として歩行速度,10mあたりの歩数を算出した。また,麻痺側膝関節角度を対象に電気ゴニオメーターにより歩行時の膝可動範囲を算出した。まず,装具装着自体の影響を調べるために,ロボットpre条件と装具なし条件を比較した。次に補助トルクの影響を調べるために,ロボットpre条件とロボット条件での歩行を比較した。連続歩行中の違いを見るためにロボット条件と装具なし条件で比較し,最後に事後効果を確認するためにロボットpre条件とpost条件を比較した。パフォーマンス指標と膝可動範囲は対応のあるt検定またはWilcoxonの符号付順位和検定,一元配置反復測定分散分析またはFriedman検定によって比較を行った。
【結果】
装具装着のみでは歩行速度,歩数,膝可動範囲のいずれも変化が見られなかった。しかし,補助トルクを与えることで,歩行速度の有意な増加(p<0.01),歩数の有意な減少(p<0.05),膝可動範囲の有意な増加を示した(p<0.01)。連続歩行中は同一課題では変化しなかったが,膝可動範囲はロボット課題において有意に大きかった(p<0.016)。また,ロボットによる事後効果は,歩行速度,歩数,膝可動範囲において有意に観察された(p<0.01)。
【結論】
本研究の結果より,ロボットによる補助トルクを与える事でパフォーマンスや関節運動を変化させることが出来,その効果は事後も持続することが示唆された。