The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-04] 口述演題(神経)04

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:吉尾 雅春(千里リハビリテーション病院)

日本神経理学療法学会

[O-NV-04-3] 入院中の回復期脳卒中者における歩行能力に応じた身体活動量の特性

清水 夏生1,2, 橋立 博幸3, 太田 智裕1,2, 野口 隆太郎1, 山中 誠一郎1, 齋藤 昭彦3 (1.医療法人社団輝生会初台リハビリテーション病院, 2.杏林大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学分野, 3.杏林大学保健学部理学療法学科)

Keywords:脳卒中, 身体活動量, 歩行

【はじめに,目的】

医療機関に入院した脳卒中者の入院生活における身体活動量(活動量)は乏しく,入院中の活動量増加は重要な課題の1つとされている。American stroke associationは回復期では運動機能改善のために中強度以上での活動量の増加を推奨している。比較的強度の高い活動を遂行するためには歩行能力の高さが重要な要因になると考えられるが,回復期脳卒中者における歩行能力の違いによる活動量の差異については十分に明らかとなっていない。本研究は,異なる歩行能力を有する回復期脳卒中者における入院中の活動量の特性を明らかとし,活動量を高めるための方略を歩行能力に応じて検討することを目的とした。



【方法】

回復期病院に入院中の初発脳卒中者65人(平均年齢64.2歳,発症からの平均日数62.5日)を対象に,歩行自立度,最大歩行速度,活動量を調査した。活動量の調査には3軸加速度計(OMRON HJA-350IT)を用いた。3軸加速度計の装着部位は対象者の腰部,測定時間は7時から19時までの12時間,測定期間は連続7日間,測定区間は60秒間とし,1.6~2.9 metabolic equivalents(METs)の活動に相当する低強度活動時間(LIPA),3 METs以上の活動に相当する中~高強度活動時間(MVPA)の2つの活動における1日あたりの平均活動時間を算出した。活動量を歩行能力別に比較するために対象者を歩行自立度と最大歩行速度に基づき,①歩行自立かつ歩行速度0.9 m/s以上のGroup 1(n=22),②歩行自立かつ歩行速度0.9 m/s未満のGroup 2(n=7),③歩行に見守りまたは介助を要するGroup 3(n=36)の3群に分けた。



【結果】

3群間における年齢,発症からの日数に有意な群間差は認められなかった。各群のLIPAはGroup 1が176.0分/日,Group 2が172.9分/日,Group 3が111.3分/日,MVPAはGroup 1が27.2分/日,Group 2が4.5分/日,Group 3が7.0分/日であった。歩行能力と活動強度を2要因とした2元配置分散分析および多重比較検定を用いてLIPAおよびMVPAを比較した結果,歩行能力と活動強度の間に有意な交互作用が認められた。LIPAはGroup 1またはGroup 2と比べてGroup 3では有意な低値を示し,MVPAはGroup 1と比べてGroup 2またはGroup 3では有意な低値を示した。いずれの群においてもLIPAに比べてMVPAが有意に低値を示した。



【結論】

歩行が非自立の群は歩行が自立した群に比べてMVPAのみでなくLIPAも低値を示したことから,歩行非自立者においては低強度での活動量も低下しており,LIPAの増加に歩行自立度が重要な要因となると考えられた。一方で,歩行が自立した群では歩行速度が低い群においてMVPAが低値を示したことから,MVPAの向上には歩行自立度のみでなく歩行速度がより重要な要因となると考えられた。したがって,歩行が非自立の脳卒中者では優先的に歩行自立度を高めて歩行機会を確保し,歩行が自立した脳卒中者では歩行速度をさらに高めるといった段階的な歩行への治療介入が,回復期脳卒中者の入院中の活動量増加のために有益な方略となる可能性があると推察された。