[O-NV-06-5] 脳卒中片麻痺患者に対する神経筋電気刺激とミラーセラピーの併用治療は即時的に足関節機能を改善させるのか?
―シングルケースデザインによる検討―
Keywords:脳卒中片麻痺患者, 神経筋電気刺激, ミラーセラピー
【はじめに,目的】
脳卒中後運動麻痺に対する治療として神経筋電気刺激(Neuromuscular Electrical Stimulation:NMES)とミラーセラピー(Mirror Therapy:MT)の併用の有効性が報告されている。
この併用治療は,NMESによる運動感覚入力に,MTの視覚的イメージを追加することで,よりリアルな運動感覚を惹起させることが可能であり,関節運動を改善することができると考えられている。
しかしながら,下肢に対してNMESとMTの併用した研究は散見される程度である。以上より,本研究の目的はNMESとMTの併用治療が脳卒中患者に対して及ぼす即時的影響について検討した。
【方法】
対象は76歳男性で,2015年12月に右放線冠に梗塞巣を認め,軽度の左片麻痺を呈した。また高次脳機能障害は軽度の注意障害が認められた。感覚障害はなく,Brunnstrom Recovery Stage(BRS)は左下肢IVであった。歩行は短下肢装具を装着し4点杖を用いて見守りレベルであったが,疲労時に左足尖の引っかかりが観察された。
研究デザインは,AB型シングルケースデザインを採用した。A期はNMESを実施し,B期はNMESにMTを併用し,各期間は3日間とした。介入時間は1日20分とした。NMESのパラメーターは周波数50Hz,パルス持続時間は250μsec,on/off時間はそれぞれ5秒,10秒に設定した。電極位置は麻痺側前脛骨筋モーターポイントと腓骨神経幹直上とした。電流強度は両期間で疼痛が出現しない範囲で関節運動が起こる程度(A期:平均31mA,B期:平均29mA)とし,それぞれ1日20分,3日間実施した。
測定項目は,麻痺側自動足関節背屈可動域(背屈自動ROM),Fugl-Meyer Assessment下肢項目(FMA),6分間歩行(6MD),10m歩行時間(10MWT)とし,各期前後に測定した。背屈自動ROMについては画像処理ソフトImage Jを使用し,異なる3名のセラピストが評価し,その平均値を算出した。
【結果】
背屈ROMについては,A期では変化がなかったが,B期では背屈9.8度の改善を認めた。FMAは介入時21点であったが,B期以降23点へと改善した。6MDではB期に6mの改善を認めたが,10MWTは変化がなかった。
【結論】
本研究は,単一症例報告ではあるがNMESとMTの併用治療の即時的介入効果について検討し,脳卒中片麻痺患者の下肢機能を改善することができた可能性がある。また,NMES単独では効果がない症例に対しては,視覚的イメージを追加することで治療効果が得られることが示唆された。
しかしながら,動作レベルでの改善は認められず,3日間という短期間ではパターン化した歩行には影響を与えることができなかったと考えた。
今後は,NMESとMTの併用治療の長期的な効果を検証するとともに,サンプルサイズを増大し比較対照試験を実施していく必要がある。
脳卒中後運動麻痺に対する治療として神経筋電気刺激(Neuromuscular Electrical Stimulation:NMES)とミラーセラピー(Mirror Therapy:MT)の併用の有効性が報告されている。
この併用治療は,NMESによる運動感覚入力に,MTの視覚的イメージを追加することで,よりリアルな運動感覚を惹起させることが可能であり,関節運動を改善することができると考えられている。
しかしながら,下肢に対してNMESとMTの併用した研究は散見される程度である。以上より,本研究の目的はNMESとMTの併用治療が脳卒中患者に対して及ぼす即時的影響について検討した。
【方法】
対象は76歳男性で,2015年12月に右放線冠に梗塞巣を認め,軽度の左片麻痺を呈した。また高次脳機能障害は軽度の注意障害が認められた。感覚障害はなく,Brunnstrom Recovery Stage(BRS)は左下肢IVであった。歩行は短下肢装具を装着し4点杖を用いて見守りレベルであったが,疲労時に左足尖の引っかかりが観察された。
研究デザインは,AB型シングルケースデザインを採用した。A期はNMESを実施し,B期はNMESにMTを併用し,各期間は3日間とした。介入時間は1日20分とした。NMESのパラメーターは周波数50Hz,パルス持続時間は250μsec,on/off時間はそれぞれ5秒,10秒に設定した。電極位置は麻痺側前脛骨筋モーターポイントと腓骨神経幹直上とした。電流強度は両期間で疼痛が出現しない範囲で関節運動が起こる程度(A期:平均31mA,B期:平均29mA)とし,それぞれ1日20分,3日間実施した。
測定項目は,麻痺側自動足関節背屈可動域(背屈自動ROM),Fugl-Meyer Assessment下肢項目(FMA),6分間歩行(6MD),10m歩行時間(10MWT)とし,各期前後に測定した。背屈自動ROMについては画像処理ソフトImage Jを使用し,異なる3名のセラピストが評価し,その平均値を算出した。
【結果】
背屈ROMについては,A期では変化がなかったが,B期では背屈9.8度の改善を認めた。FMAは介入時21点であったが,B期以降23点へと改善した。6MDではB期に6mの改善を認めたが,10MWTは変化がなかった。
【結論】
本研究は,単一症例報告ではあるがNMESとMTの併用治療の即時的介入効果について検討し,脳卒中片麻痺患者の下肢機能を改善することができた可能性がある。また,NMES単独では効果がない症例に対しては,視覚的イメージを追加することで治療効果が得られることが示唆された。
しかしながら,動作レベルでの改善は認められず,3日間という短期間ではパターン化した歩行には影響を与えることができなかったと考えた。
今後は,NMESとMTの併用治療の長期的な効果を検証するとともに,サンプルサイズを増大し比較対照試験を実施していく必要がある。