The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-06] 口述演題(神経)06

Fri. May 12, 2017 6:10 PM - 7:10 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:松田 雅弘(城西国際大学福祉総合学部理学療法学科)

日本神経理学療法学会

[O-NV-06-6] 慢性期脳卒中片麻痺患者に対する足関節底屈筋群へのボツリヌス療法と機能的電気刺激を用いた短期集中的理学療法の併用による効果

中澤 正和1, 小宮山 孝1, 佐藤 幸望1, 瀧澤 弥恵1, 前田 正憲2, 片井 聡3 (1.鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院理学療法科, 2.鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院作業療法科, 3.鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院神経内科)

Keywords:ボツリヌス療法, 機能的電気刺激, 短期集中的理学療法

【はじめに,目的】

ボツリヌス療法は,脳卒中ガイドライン2015において推奨グレードAとして,脳卒中片麻痺患者の痙縮や,歩行障害に対する治療として効果が示されており,機能的電気刺激(以下FES)は,脳卒中ガイドライン2015において推奨グレードB,理学療法診療ガイドライン(第1版)において推奨グレードBとして,脳卒中片麻痺患者の歩行障害に対する治療として効果が示されている。

当院では,慢性期脳卒中片麻痺患者の足関節底屈筋群(腓腹筋,ヒラメ筋,後脛骨筋,長趾屈筋)の痙縮や歩行障害に対する治療として,ボツリヌス療法とFESを用いた短期集中的理学療法を行っている。

FESは歩行の遊脚期を検知し,総腓骨神経を電気刺激することで歩行周期に合わせて足関節の背屈を促す歩行周期同調型FES装置(WalkAide)を用いている。

本研究の目的は,慢性期脳卒中片麻痺患者に対する足関節底屈筋群へのボツリヌス療法とFESを用いた短期集中的理学療法の併用による効果について検討することである。

【方法】

対象は,2016年4~9月に当院に入院した慢性期脳卒中片麻痺患者の中から,歩行が監視レベル(FIM:5)以上で可能な15例(男12例/女3例)とした。平均年齢:57.1±11.1歳,罹病期間:5.1±4.1年,BTX施注量:156.3±60.9単位,FESを使用した理学療法期間:13.1±2日。麻痺側:右11例/左4例。下肢Brunnstrom Stage:III10例/IV5例。装具の使用:裸足2例/短下肢装具12例/長下肢装具1例。杖の使用:杖なし6例/T字杖9例。

ボツリヌス注射後,翌日から毎日1日60分の理学療法を施行した。理学療法の内容は,FESを用いたステップex,歩行exを30分行い,その他はROMexや筋力強化ex等の従来の理学療法とした。

介入前後の膝関節伸展位での足関節背屈可動域(以下ROM),膝関節伸展位での足関節背屈Modified Ashworth Scale(以下MAS),10m歩行の速度・歩行率,timed up and go test(以下TUG),6分間歩行距離(以下6MD)を比較した。統計解析はWilcoxonの符号順位検定を用い有意水準を5%未満とした。

【結果】

ROM[-5±9.1°→-2.7±8.9°],MAS[1(1-1.5)→0(0-1)],歩行速度[0.72±0.3m/秒→0.84±0.31m/秒],歩行率[95.6±18.6歩/分→102.1±16.7歩/分],TUG[20.8±8.9秒→17.1±7.3秒],6MD[215.5±85.2m→242.9±88.8m]と,各項目において有意差を認めた。

【結論】

慢性期脳卒中片麻痺患者に対する足関節底屈筋群へのボツリヌス療法とFESを用いた短期集中的理学療法の併用は,ROM,MAS,歩行速度,歩行率,TUG,6MDの改善に短期的効果があることが示唆された。また,他研究で,慢性期脳卒中片麻痺患者に対するボツリヌス注射後,FESを用いない4週間の理学療法を施行した報告では,ROM[2.6±11.1°→13.9±8°],MAS[2(1-3)→1.5(1-3)],歩行速度[0.44±0.25m/秒→0.54±0.26m/秒],歩行率[81.4±21.5歩/分→85.1±16.3歩/分]と,ROM以外ではFESを用いた本研究の方が理学療法期間が短いにも拘らず改善の差は大きかった。