第52回日本理学療法学術大会

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-07] 口述演題(神経)07

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:甲田 宗嗣(広島都市学園大学健康科学部リハビリテーション学科)

日本神経理学療法学会

[O-NV-07-2] パーキンソン病の前傾姿勢に対する理学療法効果に影響する因子の検討

笠井 健治1, 水田 宗達1, 石﨑 耕平1, 高山 智絵1, 牧野 諒平1, 遠藤 穂奈美1, 市川 忠2 (1.埼玉県総合リハビリテーションセンター理学療法科, 2.埼玉県総合リハビリテーションセンター神経内科)

キーワード:パーキンソン病, 姿勢, リハビリテーション

【はじめに,目的】パーキンソン病(Parkinson's Disease:以下PD)患者は前傾前屈姿勢を取りやすく,疾患の進行に伴い日常生活動作を阻害する要因となる。前傾姿勢に対するリハビリテーションの効果に関する報告はあるが,その効果に関与する要因について報告した先行研究は見当たらない。本研究はPD患者の前傾姿勢に対する理学療法の効果に関連する要因を後方視的に検討し,明らかにすることを目的とした。

【方法】情報収集は診療録および理学療法報告書,作業療法報告書から入院時と退院時の情報を抽出した。対象は当センターにH25年8月からH27年9月までの間にリハビリテーションを目的に入院したPD患者52名の内,入院時に5°以上の前傾姿勢を認めた32名(69.7±6.6歳,男性20女性12名)とした。脊柱手術歴および外傷歴,PD以外の神経疾患の既往があるものは除外した。評価項目は年齢,入院期間,前傾姿勢角度(Spinal mouseにてT1とS1を結んだ線と鉛直線の成す角を計測),安静時腰痛(VASにて計測),Functional reach test,片脚立位保持時間,Timed up and go test遂行時間,10m歩行時間,パーキンソン病統一評価尺度の第三部(以下MDS-UPDRSIII)の総合計点と固縮項目(item2,3),無動項目(item1,4-8,14),体軸症状項目(item9-13),振戦項目(item15-18)の各小計,日本語版The Montreal cognitive assessmentの総合得点と視空間認知項目,注意項目の各小合計,一日当たり換算ドーパミン服薬量(以下Levodopa equivalent dose:LED)とした。入院時と比較して退院時に前傾姿勢が5°以上改善していた症例を姿勢改善群,それ以外を非改善群に大別し,年齢と入院期間以外の項目は入院時と退院時の変化量を求めた。リハビリテーションは1日合計で2時間を週5回以上実施した。統計学的分析は姿勢改善群と非改善群の差の検定を各項目について入院時の評価結果と変化量に関して行った。その後,有意な差を認めた項目を説明変数,姿勢改善群と非改善群を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。差の検定は正規性および分散を確認した後,対応のないt検定もしくはMann-Whitney検定を用いた。いずれも有意水準は5%とした。

【結果】入院時と退院時でLEDに有意な差はなかった。姿勢改善群は17名,非改善群は19名で,群間の比較ではMDS-UPDRSIIIの総合計点(p=0.01)固縮項目(p=0.01)と無動項目(p=0.02)の変化量にのみ有意な差を認めた。また,二項ロジスティック回帰分析では固縮項目のみが抽出され,オッズ比(95%信頼区間)は0.59(0.36-0.97)であった。

【結論】前傾姿勢の改善には固縮症状の変化が関連していた。このことからPD患者の前屈姿勢に対する理学療法においては四肢や頸部を含めた異常筋緊張を緩和させるアプローチが重要であることが示唆された。