The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-09] 口述演題(神経)09

Sat. May 13, 2017 6:10 PM - 7:10 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:北山 哲也(山梨リハビリテーション病院理学療法課)

日本神経理学療法学会

[O-NV-09-1] 慢性期脳卒中患者におけるBody mass indexと筋量および筋内脂肪量との関連

赤澤 直紀1, 原田 和宏2, 大川 直美3, 貴志 将紀3, 田村 公之3, 森山 英樹4 (1.徳島文理大学保健福祉学部理学療法学科, 2.吉備国際大学大学院保健科学研究科, 3.河西田村病院リハビリテーション室, 4.神戸大学大学院保健学研究科)

Keywords:慢性期脳卒中患者, Body mass index, 筋量

【はじめに,目的】過体重や肥満傾向にある脳卒中患者の生存率と日常生活動作能力は,痩せ型の患者よりも高いことが報告され,この脳卒中患者における肥満と良好な予後との関連は,肥満パラドックスとして知られている(Doehne, et al., 2013)。一方,脳卒中患者における体重の減少は,麻痺側下肢の筋量減少や筋内脂肪量の増大といった発症後に生じる二次的な骨格筋の変化と関連することが指摘されている(Scherbakov, et al., 2013)。これらを考慮すると,痩せ型の脳卒中患者ほど,筋量が減少し,筋内脂肪量が増大していることが推察され,これらが肥満パラドックスの成因の一つとなっている可能性がある。しかし,脳卒中患者における体重と筋量および筋内脂肪量との関連は不明である。この関連性を明らかにすることは,脳卒中患者における肥満パラドックスの成因解明の一助となり,脳卒中患者の支援方法の発展に対して,有益な知見を付加すると考える。本研究の目的は,慢性期脳卒中患者におけるBody Mass Index(BMI)と筋量および筋内脂肪量との関連を調査することである。



【方法】対象は,発症から6カ月以上経過した脳卒中患者58名であった。評価項目は,麻痺側と非麻痺側の大腿四頭筋の筋量と筋内脂肪量および歩行自立度(FIM歩行スコア)とした。大腿四頭筋の筋量と筋内脂肪量は,超音波画像診断装置(Nanomaxx,SonoSite社)のBモード法で撮影された横断面画像の筋厚と筋輝度から評価した。筋厚と筋輝度の計測には,Image J softwareを用いた。筋厚は,大腿直筋と中間広筋の筋厚の合計値とした。筋輝度は,大腿直筋と中間広筋の輝度の平均値とした。筋輝度は,8 bit gray-scaleを用いて数値化した。筋輝度は筋内脂肪量が多いと高値となり,少ないと低値を示すことで評価される(Pillen, et al., 2006)。BMIと麻痺側および非麻痺側の筋厚と筋輝度との関連性は,Kendall検定を用いて調査した。併せて,脳卒中患者の歩行自立度と筋量との関連(Jørgensen, et al., 2001)を考慮し,BMIと両下肢の筋厚と筋輝度との関連について,FIM歩行スコアを制御変数とした偏相関分析を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。



【結果】BMIと麻痺側と非麻痺側の筋厚および筋輝度との間には有意な相関関係を認め,相関係数はそれぞれ0.438,0.399,-0.475,-0.400であった。偏相関分析の結果においても,BMIと麻痺側と非麻痺側の筋厚および筋輝度との間に有意な相関関係を認め,偏相関係数はそれぞれ0.637,0.628,-0.702,-0.577であった。



【結論】本研究により,過体重や肥満傾向にある脳卒中患者においては,筋量が増大し,筋内脂肪量が減少する傾向,一方,痩せ型な患者では,筋量が減少し,筋内脂肪量が増大する傾向が示された。この関連性が肥満パラドックスの成因の一つになっているのかもしれない。