[O-NV-10-3] 急性期脳卒中患者における回復期病院退院時の歩行自立度予測モデルの作成
~決定木を利用した予後予測の試み~
Keywords:後期高齢者, 歩行自立, 予後予測
【はじめに,目的】我々は先行研究で理学療法開始時評価から長期的な歩行自立度予測を報告した。しかし入院時は意識障害や急性期治療により日常生活動作が制限されている場合があり,先行研究でも2週時以降に予後予測を行うことの妥当性が報告されている。そこで本研究では開始時に加え2週時の理学療法評価から高齢脳卒中患者の回復期病院退院時での歩行自立可否を予測するモデルを提示することを目的とする。
【方法】対象は2014年4月~2015年6月までに当院に入院加療した75歳以上の一側テント上病変でリハビリテーション(以下リハ)を施行した急性期脳卒中患者連続110名とした。研究デザインは後ろ向き観察研究で,下記の項目を診療録と回復期リハ病院転帰時に当院へ返還される経過報告書を用い後方視的に調査した。調査項目は,年齢,性別,半球,疾患,脳卒中既往の有無,入院前mRS,開始時Japan Stroke Scale(以下JSS)・National Institute of Health Stroke Scale(以下NIHSS)・Japan Coma Scale(以下JCS)・上田式片麻痺機能テスト(以下12Gr)の上肢・下肢,開始時と2週時のRevised version of the Ability for Basic Movement Scale(以下ABMSII)・Functional Ambulation Categories(以下FAC)・機能的自立度評価法(以下FIM)の運動項目・認知項目別の合計点,初回座位保持の可否,半側空間無視の有無,プッシングの有無,失語の有無,回復期病院退院時転帰を独立変数とし屋内歩行自立可否を従属変数とした。屋内歩行自立の定義は二木の分類に準じて最低限1人で日中トイレへ行くことが出来るとした。解析はまず屋内歩行自立可否(自立群・非自立群)を従属変数とし,独立変数に関してX2検定・Mann-WhitenyのU検定・対応のないt検定を用い二群間で比較を行った。次に単変量の結果有意な差を認めた独立変数に対して決定木分析Chi-squared Automatic Interaction Detection(以下CHAID)を用いて実施した。統計ソフトは,SPSS22を用い有意水準を5%未満とした。
【結果】単変量では年齢,疾患,JSS,NIHSS,入院前mRS,JCS,初回座位保持の可否,開始時と2週時ABMSII・FAC・FIM各項目,上肢・下肢12GrはP<0.01で,性別,プッシングの有無はP<0.05で有意差を認めた。次にCHAIDによる分析結果,判別的中率は93.6%で屋内歩行自立の因子は,2週時のABMSIIと認知FIMと入院前mRSの3項目が採択された。本モデルは,第1層で2週時ABMSIIが17と25を境に3群に分岐し,ABMSII17~25の群は第2層で入院前mRSが0を境に2群に分岐した。さらにABMSII17~25かつ入院前mRS0の群は第3層で2週時認知FIMが17を境に2群に分岐した。モデルの精度は感度88.4%,特異度97%,陽性的中率95%,陰性的中率92.8%であった。
【結論】縦断研究における屋内歩行自立可否の予測には2週時のABMSIIと認知FIMと入院前mRSが有益であった。2週時評価から客観的な予後予測が行え,予測に基づく理学療法アプローチの立案や患者・家族・他職種間との長期目標の共有を行う一助になり得ると考える。
【方法】対象は2014年4月~2015年6月までに当院に入院加療した75歳以上の一側テント上病変でリハビリテーション(以下リハ)を施行した急性期脳卒中患者連続110名とした。研究デザインは後ろ向き観察研究で,下記の項目を診療録と回復期リハ病院転帰時に当院へ返還される経過報告書を用い後方視的に調査した。調査項目は,年齢,性別,半球,疾患,脳卒中既往の有無,入院前mRS,開始時Japan Stroke Scale(以下JSS)・National Institute of Health Stroke Scale(以下NIHSS)・Japan Coma Scale(以下JCS)・上田式片麻痺機能テスト(以下12Gr)の上肢・下肢,開始時と2週時のRevised version of the Ability for Basic Movement Scale(以下ABMSII)・Functional Ambulation Categories(以下FAC)・機能的自立度評価法(以下FIM)の運動項目・認知項目別の合計点,初回座位保持の可否,半側空間無視の有無,プッシングの有無,失語の有無,回復期病院退院時転帰を独立変数とし屋内歩行自立可否を従属変数とした。屋内歩行自立の定義は二木の分類に準じて最低限1人で日中トイレへ行くことが出来るとした。解析はまず屋内歩行自立可否(自立群・非自立群)を従属変数とし,独立変数に関してX2検定・Mann-WhitenyのU検定・対応のないt検定を用い二群間で比較を行った。次に単変量の結果有意な差を認めた独立変数に対して決定木分析Chi-squared Automatic Interaction Detection(以下CHAID)を用いて実施した。統計ソフトは,SPSS22を用い有意水準を5%未満とした。
【結果】単変量では年齢,疾患,JSS,NIHSS,入院前mRS,JCS,初回座位保持の可否,開始時と2週時ABMSII・FAC・FIM各項目,上肢・下肢12GrはP<0.01で,性別,プッシングの有無はP<0.05で有意差を認めた。次にCHAIDによる分析結果,判別的中率は93.6%で屋内歩行自立の因子は,2週時のABMSIIと認知FIMと入院前mRSの3項目が採択された。本モデルは,第1層で2週時ABMSIIが17と25を境に3群に分岐し,ABMSII17~25の群は第2層で入院前mRSが0を境に2群に分岐した。さらにABMSII17~25かつ入院前mRS0の群は第3層で2週時認知FIMが17を境に2群に分岐した。モデルの精度は感度88.4%,特異度97%,陽性的中率95%,陰性的中率92.8%であった。
【結論】縦断研究における屋内歩行自立可否の予測には2週時のABMSIIと認知FIMと入院前mRSが有益であった。2週時評価から客観的な予後予測が行え,予測に基づく理学療法アプローチの立案や患者・家族・他職種間との長期目標の共有を行う一助になり得ると考える。