[O-NV-11-2] 嚥下障害を合併した脊髄小脳変性症に対する呼吸リハビリテーションの効果
―表面筋電図を用いた嚥下筋の機能評価―
Keywords:脊髄小脳変性症, 補助呼吸筋, 呼吸リハビリテーション
【はじめに,目的】脊髄小脳変性症(以下,SCD)は,嚥下障害の合併頻度が高く誤嚥性肺炎,窒息をきたす事が多く現在でも増加傾向を示す神経難病の一つである。我々は,嚥下筋活動と呼吸機能の関係性について予備研究を実施し,呼吸筋活動が嚥下リズムと同調しない事による嚥下筋活動の抑制について報告した。運動失調を背景にした嚥下機能と呼吸機能は密接に関係している事から,本研究では呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)が嚥下機能に与える効果について検討する事を目的とした。
【方法】対象は,SCD12名(男性5名,女性7名)でありICARSは10点から35点で,舌,上下肢,体幹に運動失調を有しており,ソフト食を介助にて摂取している者とした。平均年齢62.7±7.2歳,平均身長161.3±2.6cm,平均体重47.2±5.6kgであった。測定条件は同一対象者に対し呼吸リハの実施と未実施での嚥下機能を,顎二腹筋,胸鎖乳突筋を被験筋とした表面筋電図学的解析を実施した。昼食の前に10gの試料を3回嚥下した際の平均筋電量(μV)を100%とし,食事終了後に同条件で嚥下した際の平均筋電量を正規化(%)し参考値とした。呼吸機能は,食事中全体のSpO2,ETCO2を測定した。呼吸リハは,①シルベスター法,②肋間筋,補助呼吸筋ストレッチ,③呼吸介助の3種類を昼食の30分前に20分実施し2週間の介入期間で呼吸リハが嚥下機能に及ぼす効果を検証した。統計的手法は,表面筋電図学的解析,呼吸機能,咽せ込み回数について,呼吸リハ未実施群と実施群における両群の差について対応のあるt検定を実施した。なお,有意確率は5%とした。
【結果】表面筋電図学的解析の結果は,顎二腹筋の介入前は71.2±4.3%,介入後は89.4±5.6%であり介入後は有意に高値を示した。甲状舌骨筋の介入前は68.7±4.1%,介入後は79.9±3.4%であり介入後は有意に高値を示した。胸鎖乳突筋の介入前は132.7±8.6%,介入後は92.4±5.5%であり介入後は有意に低値を示した。SpO2の介入前は,91.4±2.5%,介入後は93.2±3.6%であり統計学的に差は認めなかった。ETCO2の介入前は39.7±5.1%,介入後は31.3±3.3%であり統計学的に差は認められなかった。咽せ込み回数の介入前は6.2±2.7回,介入後は3.1±2.4回であり介入後は有意に低値を示した。
【結論】
SCDの嚥下機能は,呼吸リハによって改善が認められた。呼吸と摂食嚥下は密接な関係があるものの,舌や体幹に生じる運動失調を主症状とするSCDは両者の調節が困難となり徐々に補助呼吸筋の活動が増加していく。頸部筋が呼吸に関与する中で,嚥下に関与する筋群も補助呼吸に牽引される結果,嚥下への関与が減弱していくことが示唆される。呼吸リハの継続は,円滑な呼吸状態を維持させ,嚥下筋の摂食に対する活動性を維持させる事が明確になった。今後は効果の持続性についての検討が必要である。
【方法】対象は,SCD12名(男性5名,女性7名)でありICARSは10点から35点で,舌,上下肢,体幹に運動失調を有しており,ソフト食を介助にて摂取している者とした。平均年齢62.7±7.2歳,平均身長161.3±2.6cm,平均体重47.2±5.6kgであった。測定条件は同一対象者に対し呼吸リハの実施と未実施での嚥下機能を,顎二腹筋,胸鎖乳突筋を被験筋とした表面筋電図学的解析を実施した。昼食の前に10gの試料を3回嚥下した際の平均筋電量(μV)を100%とし,食事終了後に同条件で嚥下した際の平均筋電量を正規化(%)し参考値とした。呼吸機能は,食事中全体のSpO2,ETCO2を測定した。呼吸リハは,①シルベスター法,②肋間筋,補助呼吸筋ストレッチ,③呼吸介助の3種類を昼食の30分前に20分実施し2週間の介入期間で呼吸リハが嚥下機能に及ぼす効果を検証した。統計的手法は,表面筋電図学的解析,呼吸機能,咽せ込み回数について,呼吸リハ未実施群と実施群における両群の差について対応のあるt検定を実施した。なお,有意確率は5%とした。
【結果】表面筋電図学的解析の結果は,顎二腹筋の介入前は71.2±4.3%,介入後は89.4±5.6%であり介入後は有意に高値を示した。甲状舌骨筋の介入前は68.7±4.1%,介入後は79.9±3.4%であり介入後は有意に高値を示した。胸鎖乳突筋の介入前は132.7±8.6%,介入後は92.4±5.5%であり介入後は有意に低値を示した。SpO2の介入前は,91.4±2.5%,介入後は93.2±3.6%であり統計学的に差は認めなかった。ETCO2の介入前は39.7±5.1%,介入後は31.3±3.3%であり統計学的に差は認められなかった。咽せ込み回数の介入前は6.2±2.7回,介入後は3.1±2.4回であり介入後は有意に低値を示した。
【結論】
SCDの嚥下機能は,呼吸リハによって改善が認められた。呼吸と摂食嚥下は密接な関係があるものの,舌や体幹に生じる運動失調を主症状とするSCDは両者の調節が困難となり徐々に補助呼吸筋の活動が増加していく。頸部筋が呼吸に関与する中で,嚥下に関与する筋群も補助呼吸に牽引される結果,嚥下への関与が減弱していくことが示唆される。呼吸リハの継続は,円滑な呼吸状態を維持させ,嚥下筋の摂食に対する活動性を維持させる事が明確になった。今後は効果の持続性についての検討が必要である。