[O-NV-11-3] 妊娠中の発症によりリハビリテーションに苦慮した視神経脊髄炎の一例
Keywords:視神経脊髄炎, 妊娠, リハビリテーション
【はじめに,目的】
視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica:NMO)は視神経炎と3椎体以上にわたる脊髄炎を特徴とし,抗アクアポリン4抗体陽性で診断が確定する。NMOは男女比1:9と女性に多く,好発年齢30代で妊娠・出産が可能な年代に一致する。今回,妊娠中に発症したNMO症例を担当したので報告する。
【方法】
症例は20歳代女性。経妊3回,出産2回。妊娠18週。X-8日帯状疱疹の診断。X-4日頭痛や発熱,歩行障害。X-3日髄膜炎疑いにてI病院入院し治療開始したが,左半身麻痺と項部硬直出現し当院搬送。入院時,下肢に重い四肢の運動麻痺や感覚障害,排尿障害認め,Th3以下アロディニア。帯状疱疹の疼痛で上肢も動かせず,下肢の伸張反射頻発。MRIは視床下部にFLAIRで高信号。下部延髄からTh10にかけてT2で高信号。脳脊髄炎としてステロイドパルス療法や免疫グロブリン大量療法開始。X+16日抗アクアポリン4抗体陽性。帯状疱疹罹患しNMOを発症したと確定診断された。
【結果】
X+2日理学療法開始。ASIA motor score(以下ASIA):40/100。MMT(右/左):肩屈曲4/2,手指屈曲4/2,下肢1/1。触覚Th3以下脱失。下肢運動覚脱失。EDSS:9.0。motor FIM:15/91。麻痺に加え疼痛も強く体位変換全介助。X+10日両下肢及び体幹の痙縮増強。他動の股屈曲で腹直筋に強い収縮が誘発され,急激な体幹・股伸展と右下肢の突っ張りや引き込みが出現し端座位保持困難。X+21日靴底に滑り止めを貼付し起立練習開始。X+31日右短下肢装具で歩行練習開始。X+34日自己排尿。X+38日左視野狭窄あり視神経炎発症。X+40日頃より手指の使用で誘発される有痛性強直性痙攣出現したが,副作用や胎児への悪影響を懸念しカルバマゼピン(carbamazepine:CBZ)は処方されず,手すりや杖の把持困難。軽いプッシュアップによる殿部横移動で移乗しX+49日車椅子自走やトイレ排泄自立。X+71日妊娠28週,ASIA:75/100。MMT(右/左):肩屈曲4/4,手指屈曲4/4,股屈曲4/4,股伸展3/3,膝伸展4/3,足背屈4/3。触覚Th3以下異常感覚。下肢運動覚軽度鈍麻。EDSS:6.0。motor FIM:80/91。肩や前腕での伝い歩きでセルフケア自立し退院。妊娠37週3日I病院で自然分娩にて出産。
【結論】
NMO再発率は,妊娠期に低下し出産後3か月は高まるとされている。本症例は妊娠18週に発症,運動機能は改善したが急性期治療中に視神経炎も発症した。疾患活動性が高く出産後の再発が懸念されること,妊娠中で回復期への転院が不可能なことを考慮し,セルフケアが遂行できる安全な移動手段獲得での出産前退院を目標とした。腹部の痙縮や腹緊を回避しながらのプッシュアップ,腹部を圧迫しない起立・歩行練習方法の選択,CBZ投与なしでの有痛性強直性痙攣対策など症状の変化に応じた様々な配慮が必要であった。
視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica:NMO)は視神経炎と3椎体以上にわたる脊髄炎を特徴とし,抗アクアポリン4抗体陽性で診断が確定する。NMOは男女比1:9と女性に多く,好発年齢30代で妊娠・出産が可能な年代に一致する。今回,妊娠中に発症したNMO症例を担当したので報告する。
【方法】
症例は20歳代女性。経妊3回,出産2回。妊娠18週。X-8日帯状疱疹の診断。X-4日頭痛や発熱,歩行障害。X-3日髄膜炎疑いにてI病院入院し治療開始したが,左半身麻痺と項部硬直出現し当院搬送。入院時,下肢に重い四肢の運動麻痺や感覚障害,排尿障害認め,Th3以下アロディニア。帯状疱疹の疼痛で上肢も動かせず,下肢の伸張反射頻発。MRIは視床下部にFLAIRで高信号。下部延髄からTh10にかけてT2で高信号。脳脊髄炎としてステロイドパルス療法や免疫グロブリン大量療法開始。X+16日抗アクアポリン4抗体陽性。帯状疱疹罹患しNMOを発症したと確定診断された。
【結果】
X+2日理学療法開始。ASIA motor score(以下ASIA):40/100。MMT(右/左):肩屈曲4/2,手指屈曲4/2,下肢1/1。触覚Th3以下脱失。下肢運動覚脱失。EDSS:9.0。motor FIM:15/91。麻痺に加え疼痛も強く体位変換全介助。X+10日両下肢及び体幹の痙縮増強。他動の股屈曲で腹直筋に強い収縮が誘発され,急激な体幹・股伸展と右下肢の突っ張りや引き込みが出現し端座位保持困難。X+21日靴底に滑り止めを貼付し起立練習開始。X+31日右短下肢装具で歩行練習開始。X+34日自己排尿。X+38日左視野狭窄あり視神経炎発症。X+40日頃より手指の使用で誘発される有痛性強直性痙攣出現したが,副作用や胎児への悪影響を懸念しカルバマゼピン(carbamazepine:CBZ)は処方されず,手すりや杖の把持困難。軽いプッシュアップによる殿部横移動で移乗しX+49日車椅子自走やトイレ排泄自立。X+71日妊娠28週,ASIA:75/100。MMT(右/左):肩屈曲4/4,手指屈曲4/4,股屈曲4/4,股伸展3/3,膝伸展4/3,足背屈4/3。触覚Th3以下異常感覚。下肢運動覚軽度鈍麻。EDSS:6.0。motor FIM:80/91。肩や前腕での伝い歩きでセルフケア自立し退院。妊娠37週3日I病院で自然分娩にて出産。
【結論】
NMO再発率は,妊娠期に低下し出産後3か月は高まるとされている。本症例は妊娠18週に発症,運動機能は改善したが急性期治療中に視神経炎も発症した。疾患活動性が高く出産後の再発が懸念されること,妊娠中で回復期への転院が不可能なことを考慮し,セルフケアが遂行できる安全な移動手段獲得での出産前退院を目標とした。腹部の痙縮や腹緊を回避しながらのプッシュアップ,腹部を圧迫しない起立・歩行練習方法の選択,CBZ投与なしでの有痛性強直性痙攣対策など症状の変化に応じた様々な配慮が必要であった。