The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-11] 口述演題(神経)11

Sun. May 14, 2017 9:00 AM - 10:00 AM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:神沢 信行(甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科)

日本神経理学療法学会

[O-NV-11-4] 急性期ギラン・バレー症候群患者における基本動作障害の臨床的特徴

谷内 涼馬1, 妹尾 美由紀1, 田邊 良平1, 林 宏則1, 鳥居 剛2 (1.独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンターリハビリテーション科, 2.独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター神経内科)

Keywords:急性期, ギラン・バレー症候群, 基本動作

【はじめに,目的】

ギラン・バレー症候群(GBS)の重症例では,2週間で筋萎縮をきたすことも報告されている。そのため,発症直後の急性期から適切な評価および介入を行う必要がある。多くのGBS患者で進行性四肢筋力低下による基本動作障害がみられるが,その特徴について報告した先行研究は見受けられない。本研究の目的は,急性期GBS患者における基本動作障害の臨床的特徴を明らかにすることである。

【方法】

2010年1月1日から2016年6月30日までに,当院にて7日以上理学療法介入を行ったGBS患者24名を対象とした。対象の年齢,性別,理学療法期間,Hughesの機能グレード尺度(FG),Revised version of the Ability for Basic Movement Scale(ABMSII),四肢筋力,感覚障害の有無,自律神経障害の有無,退院転帰を診療録より後方視的に抽出した。四肢筋力はDanielsらの徒手筋力検査法(MMT)を参考に,slight(MMT4~5),moderate(MMT3),severe(MMT0~2)の3段階にカテゴリー化した。対象を軽症群(FG0~3)と重症群(FG4~6)に分類し,重症度による背景因子の比較を行った。nadir期におけるFGとABMSIIの関係については,Spearmanの順位相関係数を求めた。nadir期のABMSIIとその各項目を従属変数,四肢筋力を独立変数としてStepwise法による重回帰分析を行い,基本動作に影響を及ぼす四肢筋力について検討した。また,重症群における臨床的に意義のある変化を退院時にFGが2段階以上改善することと定義し,FGの改善を検出する⊿ABMSIIのMinimal Clinically Important Difference(MCID)を検討した。統計処理にはIBM SPSS Statistics 21を使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】

軽症群は9名,重症群は15名であり,年齢,理学療法期間,ABMSII,四肢筋力に有意差を認めた。四肢筋力においては重症群ほど近位筋に筋力低下がみられ,遠位筋は両群共に低下していた。また,nadir期のFGとABMSIIには有意な負の相関(rs=-0.88)を認めた。重回帰分析の結果,ABMSIIに影響する四肢筋力としてhamstringsが抽出された(R=0.75,R2=0.56)。項目別の分析では,Sit upに影響する四肢筋力としてhamstringsとtriceps brachiiが抽出され,最も適合性が良かった(R=0.85,R2=0.72)。重症群を退院時にFGが2段階以上改善した重症回復群(n=10),改善がみられなかった重症遷延群(n=5)に分類し,⊿ABMSIIのROC分析を行った結果,MCIDとしてのcut-off値は8であった(AUC=0.90[95%信頼区間;0.74-1.00])。

【結論】

急性期GBS患者において,重症例ほど基本動作障害も重度である傾向が示された。重症例は軽症例に比して四肢近位筋の筋力が低下しており,hamstringsとtriceps brachiiの筋力低下が基本動作障害に関連する可能性が示唆された。さらに,重症例においてABMSIIが8点改善することは,FGの改善と関連していた。今後,これらの臨床的特徴を考慮した治療介入を進める必要があると考えられた。