The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-11] 口述演題(神経)11

Sun. May 14, 2017 9:00 AM - 10:00 AM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:神沢 信行(甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科)

日本神経理学療法学会

[O-NV-11-6] 特発性正常圧水頭症患者におけるタップテスト前後の歩行解析
―矢状面下肢関節角度波形の規則性の検討―

松尾 英明1, 北出 一平1, 松村 真裕美1, 久保田 雅史1, 野々山 忠芳1, 鯉江 祐介1, 安竹 正樹1, 安竹 千秋1, 成瀬 廣亮1, 今中 芙由子1, 庄司 一希1, 嶋田 誠一郎1, 佐藤 佳州2, 北井 隆平3, 小久保 安朗4 (1.福井大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.Panasonic株式会社先端研究本部, 3.福井大学医学部感覚運動医学講座脳脊髄神経外科学領域, 4.福井大学医学部器官制御医学講座整形外科学領域)

Keywords:特発性正常圧水頭症(iNPH), タップテスト, 歩行解析

【はじめに,目的】

特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus;iNPH)患者のタップテストによる歩幅や歩行速度の改善は,シャント術成績の予測因子と報告されている。しかし,これまでタップテスト前後の歩行に関する報告は,時間距離因子のみの検討が多く,歩行中の下肢関節運動の特徴は十分に明らかでない。先行研究にてiNPH患者では歩行中の下肢関節運動の規則性が失われる可能性が報告されているが1例のみの定性的検討であるため,その詳細は不明である。本研究では,iNPH患者のタップテスト前後に3次元歩行解析を行い,時間距離因子,歩行中の下肢関節運動の変化およびその規則性を自己相関係数(autocorrelation coefficient:AC)を用いて検討した。


【方法】

対象は,2013年2月から2016年9月の期間で脳神経外科にてpossible iNPHと診断後にタップテストを施行され,歩行障害,認知機能障害,排尿障害のいずれかが改善し,後にシャント術を施行された11例(平均年齢77.0±5.0歳,男性3例,女性8例)とした。タップテスト前後にバランス評価(Berg Balance Scale:BBS),歩行解析を実施した。歩行解析は3次元動作解析装置(Vicon Motion System社)を使用した。同年代健常高齢者10名(平均年齢76.2±5.1歳,男性2例,女性8例)をコントロール群とし,同様に歩行解析を実施した。歩行解析のデータは,10歩行周期を解析対象とし,時間距離因子(ケイデンス,歩幅,歩行速度),矢状面下肢関節の関節角度ピーク値,股関節,膝関節,足関節の関節角度のACをそれぞれ算出した。タップテスト前後のBBSの比較にはWilcoxonの符号付順位検定を用いた。歩行解析データは,タップテスト前をpre-tap群,タップテスト後をpost-tap群とし,コントロール群との3群比較を行い,一元配置分散分析の後にpost hoc testとしてBonferroniの方法を用いた。いずれも有意水準は5%とした。


【結果】

BBSはpre-tap群と比較し,post-tap群で有意に改善した。ケイデンス,歩幅,歩行速度のいずれもpost-tap群は,pre-tap群と比較し増加傾向だが,有意差を認めなかった。歩行中の矢状面下肢関節の関節角度のピーク値,股関節AC,膝関節ACではpre-tap群,post-tap群に有意差を認めなかったが,足関節ACではpre-tap群と比較し,post-tap群で有意に改善した。また,足関節ACは,pre-tap群がコントロール群と比較し有意に低値を示したが,post-tap群とコントロール群との間に有意差を認めなかった。


【結論】

iNPH症例では,歩行中の足関節運動範囲の減少を認める事は報告されているが,その規則性については不明であった。今回の解析結果より歩行中の足関節運動の規則性を反映する足関節ACは,タップテスト前にコントロール群より低値を示し,タップテスト後に改善する事から,iNPH症例における歩行特性の一つである可能性が示唆された。