The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-12] 口述演題(神経)12

Sun. May 14, 2017 10:20 AM - 11:20 AM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:中 徹(群馬パース大学保健衛生学部理学療法学科), 座長:羽田 晋也(星ヶ丘医療センターリハビリテーション部)

日本神経理学療法学会

[O-NV-12-1] 胸髄損傷者の床から車いすへの移乗の獲得に影響する要因の検討
~プッシュアップのストラテジー,座位バランスに着目した3症例間の比較~

宮垣 さやか, 島袋 尚紀 (独立行政法人地域医療機能推進機構星ヶ丘医療センターリハビリテーション部)

Keywords:胸髄損傷, プッシュアップストラテジー, 床から車いすへの移乗

【はじめに,目的】

胸髄損傷者の移乗動作の獲得には,プッシュアップ動作(以下プッシュアップ)における最大高の向上が必要であると報告されている(堅田,1988,菊谷,1987)。しかし,臨床においては最大高を十分獲得した胸髄損傷者でも床から車いすへの移乗(以下床からの移乗)に難渋する場合が散見され,プッシュアップのストラテジーや動作中のバランスの不良さがその要因として考えられる。そこで今回は,当院に入院していた胸髄損傷者の床からの移乗の獲得とプッシュアップ,座位バランスの関連を比較検討したので報告する。


【方法】

本研究は後ろ向きデザインを用い,対象は2016年4月~2016年9月の間に当院へ4~5カ月入院していたASIA impairment Scale Bの胸髄損傷者3症例(以下A,B,C)とした。対象の平均年齢は30.7±12.5歳,受傷日からの日数が平均140.7±8.0日,性別はA,Cは男性,Bは女性であった。3症例の機能残存レベルは,AはTh12,BはTh9,CはTh10で上肢機能には問題がなかった。床からの移乗はA,Bは自立し,Cは見守りが必要であった。プッシュアップは,長座位で「臀部を最大まで浮上し,その時点で下降させてください」と口頭指示し,矢状面から撮影した動画を用い検討した。肩峰,大転子,第1仙椎(以下S1),を身体指標として,動画解析ソフトBMPmeasureで座標化し,臀部浮上開始時から臀部最高点時の間のS1の上方変位量を最大高,肩峰とS1を結ぶ直線と垂線のなす角の変位を体幹前傾角変位として算出し,3試行の平均値を採用した。今回,体幹前傾角変位を良好なストラテジーの指標とした(水上,2001)。また座位バランスを示すISMGを診療情報から調査した。


【結果】

最大高(cm)は,Aは28.3,Bは25.7,Cは21.3であった。体幹前傾角変位(°)は,Aは34.1,Bは19.8,Cは5.2であった。ISMGは,A,CはFair,BはGoodであった。


【結論】

今回,床からの移乗を獲得したA,Bと獲得できなかったCを比較検討した。プッシュアップは,水上の示す平均値(最大高24.12cm,体幹前傾角変位29.9°)と比較しA,B,Cとも最大高は平均値とほぼ同等であったが,体幹前傾角変位は,Aのみが十分であった。また座位バランスが良好であったのはBのみであった。後上方への浮上となる床からの移乗は,方向性の要素も含むため体幹をコントロールする能力が重要であると報告があり,(DanyG,2003)以上から考察すると,Bは,Aに比べストラテジーは不良であったが,座位バランスが良好であったことで,Aと同様に床からの移乗を獲得できたと考えられた。Cは,最大高は十分であったにも関わらず,ストラテジー,座位バランスともに不良であったために床からの移乗を獲得できなかったと考えられた。本研究からは,胸髄損傷者の床からの移乗において,最大高だけではなくストラテジー,座位バランスが重要な要素である可能性が示唆された。