The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-12] 口述演題(神経)12

Sun. May 14, 2017 10:20 AM - 11:20 AM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:中 徹(群馬パース大学保健衛生学部理学療法学科), 座長:羽田 晋也(星ヶ丘医療センターリハビリテーション部)

日本神経理学療法学会

[O-NV-12-5] 統合失調症患者の注意機能と回避行動
健常者との違いと運動療法への期待

久保田 真次, 細井 匠 (医療法人社団総合会武蔵野中央病院)

Keywords:精神科, 注意機能, 回避行動

【はじめに,目的】

歩行者が対向者や障害物とすれ違う際に,回避することを回避行動とされている。統合失調症患者は,注意障害を有し回避行動が乏しい場面が多く見られるが,注意機能と回避行動の関係性について検討した研究は見られない。そこで,本研究では,統合失調症患者の注意機能と回避行動の関係性を調査し,運動療法後に注意機能と回避行動は向上するのか明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は,当院の精神科に入院中で視力,認知機能が保たれた統合失調症患者16名を患者群,当院に勤務する同年代の健康なスタッフ16名を健常群とした。注意機能をTrail Making Test PartA(以下:TMT PartA),TMT PartBで評価した。回避行動は廊下に長さ10m,幅1.2mの疑似通路を設定し,通路幅の中央に縦10mのメジャーを貼り付け,歩行開始地点から5mの位置に障害物として椅子を置き,横1.2mのメジャーを貼り付けた。対象者を歩行開始地点の中央に立たせ,椅子のことは伝えずに「10m先まで歩いてください」と指示した。回避行動距離は,直進方向の進路が外れた位置から椅子とすれ違う地点までの距離とし,回避行動間隔は,すれ違う際の椅子との間隔として目視とビデオカメラで確認し記録した。また,患者群16名から協力の得られた10名に後日,運動療法直後に再調査を行い,安静時に行った注意機能と回避行動の結果と比較した。運動療法の内容は集団で行うストレッチ,筋トレ,立位バランス練習,二重課題運動などを含めた複合的な運動である。患者群と健常群の比較にはMann-Whitney検定,注意機能と回避行動の相関にはピアソンの相関係数の検定,運動療法前後の比較にはWillcoxonの符号付き順位検定を行った。解析ソフトにはStatMateVを用いた。

【結果】

患者群のTMT-Aは平均115.4±62.8秒,TMT-Bは326.4±74.2秒,回避行動距離は100.6±37.0cm,回避行動間隔は11.0±2.9 cmであった。健常群のTMT-Aは平均85.7±11.6秒,TMT-Bは118.9±16.4秒,回避行動距離は154.3±39.6 cm,回避行動間隔は19.4±6.1 cmであった。両群間に有意な差が認められ(p<0.05),患者群は健常群に比べ注意機能が低く,回避行動の距離が短かった。また,各群の注意機能と回避行動の相関係数は,-0.70~-0.82で有意な強い負の相関関係を認めた(p<0.05)。運動療法前後の比較では,患者群10名のTMT-Aは平均122.2±76.4秒から103.6±41.5秒に,TMT-Bは320.5±79.0秒から295.3±53.6秒に,回避行動距離は100.0±44.8cmから115.0±38.4 cmに,回避行動間隔は10.6±3.3cmから11.4±2.3 cmに向上し,TMT-Aと回避行動距離は有意差が認められ(p<0.05),TMT-Bと回避行動間隔では有意傾向に留まった(p<0.1)。

【結論】

患者群は健常群よりも注意機能が低く,回避行動距離が短いことや,注意機能は回避行動と負の相関関係にあること,運動療法後,注意機能が向上し回避行動の距離が長くなることが明らかになった。