The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-13] 口述演題(神経)13

Sun. May 14, 2017 10:20 AM - 11:20 AM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:諸橋 勇(いわてリハビリテーションセンター機能回復療法部)

日本神経理学療法学会

[O-NV-13-1] 脳損傷後片麻痺患者の歩行時における肩関節運動と肩甲胸郭間関節運動の動態計測

大田 瑞穂, 青木 淳, 市原 克哉, 梶原 千尋, 菊池 尊徳, 金 賢志, 芝谷 淳, 中村 友紀, 濱田 春菜 (特定医療法人社団三光会誠愛リハビリテーション病院リハビリテーション部)

Keywords:片麻痺歩行, 肩関節運動, 肩甲胸郭間関節

【はじめに,目的】

ヒトの歩行運動時におけるArm Swingの役割は歩行速度の向上と左右動揺の減少など報告されている。これらの研究の多くは広義の肩関節運動を用いており,肩甲骨動態を含めた報告はない。さらに脳損傷後片麻痺患者の場合,肩甲帯など近位部の運動機能障害も呈していることが多く,片麻痺患者のArm Swingを再建するにあたり,肩甲骨動態も含めた特徴を明確化する必要性がある。本研究の目的は脳損傷後片麻痺患者における歩行時の肩関節および肩甲胸郭間関節(STJ)の計測行い,特徴を明確にすることである。


【方法】

対象は肩関節に高度な可動域制限を認めない脳損傷後片麻痺患者25名(年齢55.2±17.1歳)。計測課題は杖を用いない快適自由歩行とした。使用機器は3次元動作解析装置VICON MXと床反力計を使用し,マーカーセットはHelen Hays maker setと両側肩峰にAcromion Marker Cluster(AMC),胸骨柄にSternum Marker Cluster(SMC)を用いた。STJはAMCとSMCとの相対角度を算出し,静止立位時の非麻痺側STJ角度を用いて補正した。肩関節およびSTJの角度データから1歩行周期での肩関節最大屈曲時及び最大伸展時における値を算出し,6歩行周期分の平均値を代表値とした。分析方法は麻痺側・非麻痺側の比較をWilcoxonの順位和検定を用いて検討し,Fugel Myer Assessment(FMA)を含めた各値の関係性をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した(有意水準5%未満)。


【結果】

肩関節屈曲最大値は麻痺側10.9±7.4°,非麻痺側15.1±10.3°となり有意な差を認めた(p<0.01)。肩関節伸展最大値は麻痺側6.5±12.4°,非麻痺側13.5±8.6°となり有意な差を認めた(p<0.01)。肩関節最大屈曲時のSTJでは上方回旋角度のみ有意な差を認めた(麻痺側-2.2±7.7°,非麻痺側:2.9±7.1°,p<0.01)。肩関節最大伸展時のSTJでは内転角度のみ有意な差を認めた(麻痺側-3.6±11.9°,非麻痺側:5.2±6.2°,p<0.05)。関係性の検証では肩関節伸展最大角度とFMA上肢(r=0.66),FMA下肢(r=0.77)に有意な相関を認め(p<0.01),肩関節最大伸展時のSTJ内転角度とFMA下肢(r=0.54),肩関節伸展最大角度(r=0.75)に有意な相関を認めた(p<0.01)。


【結論】

片麻痺患者のArm Swingの特徴として,肩関節屈曲・伸展が小さくなり,STJでは上方回旋と内転が起こりにくい状態であることが示唆された。先行研究では立脚後期から前遊脚期にかけて三角筋後部や上腕三頭筋・広背筋・僧帽筋などの活動が上昇し,屈曲した上肢を引き戻そうとする働きがあると考えられている。片麻痺患者において,それらの筋活動が乏しく肩関節伸展やSTJ内転が低下したものと考えられた。肩関節屈曲とSTJ上方回旋の低下に関しては,STJの初期位置が非麻痺側と比較して下方回旋位であったことが原因であると考えられる。本研究では肩関節伸展やSTJ内転と下肢機能の関係性を認めながらも原因の帰結にまでには至っておらず,今後は下肢・骨盤・体幹との関連性を踏まえた検証を行っていきたい。