[O-RS-01-4] 肺高血圧症患者に対する外来呼吸リハビリテーションの効果
キーワード:肺高血圧症, 呼吸リハビリテーション, 患者教育
【はじめに,目的】
肺動脈性肺高血圧症(PAH),慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)をはじめとする肺高血圧症(PH)は,肺血管抵抗が上昇し,右心不全に至る希少性難治性疾患である。これまで,PH患者に対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は,失神や心不全増悪,突然死などが危惧される事から,積極的には推奨されてこなかった。しかし近年,欧州を中心にPH患者に対する運動療法の効果に関する報告が散見され,運動耐容能,健康関連QOLなどの改善効果が認められている。一方で,本邦におけるPH患者に対する呼吸リハの報告は少なく,本邦におけるエビデンスの蓄積,本邦でも実施可能な方法論の確立が急務である。今回,3ヶ月以上治療を変更していない安定期PH患者に対して外来呼吸リハを施行し,その効果・安全性について検討した。
【方法】
対象は,2012年3月から現在までに当科外来で呼吸リハを受けたPH患者女性11例(CTEPH9例,PAH2例,年齢64.1±10.9歳,身長157.5±5.6cm,体重58.6±12.8kg,平均肺動脈圧46.8±16.1mmHg)。呼吸リハプログラムは,筋力増強運動,呼吸体操,歩行運動によって構成される在宅での自主トレーニング(Home-ex)を主体とし,1回/週程度当科外来を受診してもらい,Home-exの負荷量調整,ADL指導,患者教育などを実施した。評価項目は,6分間歩行距離(6MWD),大腿四頭筋筋力(QF),健康関連QOL(St George’s Respiratory Questionnaire;SGRQ),息切れ(Baseline dyspnea index;BDI,Transition dyspnea index;TDI),ADLスコア,呼吸機能,身体活動量,心エコー(三尖弁圧較差;TRPG,推定収縮期肺動脈圧;sPAP),血液データ(BNP)などとし,3ヶ月間の呼吸リハ前後の変化についてWilcoxon符号付き順位和検定を用いて検討した。
【結果】
全例が完遂し,6MWD(p=0.002),QF(p=0.006),SGRQのACTIVITYの項目(p=0.002),身体活動量(p=0.008),息切れ(TDI)で有意な改善を認めた。また,TRPG(p=0.76),sPAP(p=0.96),BNP(p=0.70)は有意な変化を認めなかった。運動療法実施中,1例のみ血圧低下を生じたが,休憩にて改善が得られた。その他心不全など,呼吸リハに伴う有害事象を認めなかった。
【結論】
安定期PH患者に対する外来呼吸リハは,運動耐容能,健康関連QOL,身体活動量などへの改善効果が期待できる。安全に呼吸リハを行うためには,心不全に準じたリスク管理,慎重な症例選択が重要である。今後も症例の蓄積,方法論の確立,疾患特異的アプローチの検討などが望まれる。
肺動脈性肺高血圧症(PAH),慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)をはじめとする肺高血圧症(PH)は,肺血管抵抗が上昇し,右心不全に至る希少性難治性疾患である。これまで,PH患者に対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は,失神や心不全増悪,突然死などが危惧される事から,積極的には推奨されてこなかった。しかし近年,欧州を中心にPH患者に対する運動療法の効果に関する報告が散見され,運動耐容能,健康関連QOLなどの改善効果が認められている。一方で,本邦におけるPH患者に対する呼吸リハの報告は少なく,本邦におけるエビデンスの蓄積,本邦でも実施可能な方法論の確立が急務である。今回,3ヶ月以上治療を変更していない安定期PH患者に対して外来呼吸リハを施行し,その効果・安全性について検討した。
【方法】
対象は,2012年3月から現在までに当科外来で呼吸リハを受けたPH患者女性11例(CTEPH9例,PAH2例,年齢64.1±10.9歳,身長157.5±5.6cm,体重58.6±12.8kg,平均肺動脈圧46.8±16.1mmHg)。呼吸リハプログラムは,筋力増強運動,呼吸体操,歩行運動によって構成される在宅での自主トレーニング(Home-ex)を主体とし,1回/週程度当科外来を受診してもらい,Home-exの負荷量調整,ADL指導,患者教育などを実施した。評価項目は,6分間歩行距離(6MWD),大腿四頭筋筋力(QF),健康関連QOL(St George’s Respiratory Questionnaire;SGRQ),息切れ(Baseline dyspnea index;BDI,Transition dyspnea index;TDI),ADLスコア,呼吸機能,身体活動量,心エコー(三尖弁圧較差;TRPG,推定収縮期肺動脈圧;sPAP),血液データ(BNP)などとし,3ヶ月間の呼吸リハ前後の変化についてWilcoxon符号付き順位和検定を用いて検討した。
【結果】
全例が完遂し,6MWD(p=0.002),QF(p=0.006),SGRQのACTIVITYの項目(p=0.002),身体活動量(p=0.008),息切れ(TDI)で有意な改善を認めた。また,TRPG(p=0.76),sPAP(p=0.96),BNP(p=0.70)は有意な変化を認めなかった。運動療法実施中,1例のみ血圧低下を生じたが,休憩にて改善が得られた。その他心不全など,呼吸リハに伴う有害事象を認めなかった。
【結論】
安定期PH患者に対する外来呼吸リハは,運動耐容能,健康関連QOL,身体活動量などへの改善効果が期待できる。安全に呼吸リハを行うためには,心不全に準じたリスク管理,慎重な症例選択が重要である。今後も症例の蓄積,方法論の確立,疾患特異的アプローチの検討などが望まれる。