第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会 » 口述発表

[O-RS-03] 口述演題(呼吸)03

2017年5月14日(日) 09:00 〜 10:00 B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:関川 清一(広島大学大学院医歯薬保健学研究院), 座長:田平 一行(畿央大学)

日本呼吸理学療法学会

[O-RS-03-1] 姿勢変化が左右胸郭体積変化に及ぼす影響

正保 哲, 柿崎 藤泰 (文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科)

キーワード:左右胸郭体積変化, 三次元動作解析装置, 姿勢変化

【はじめに,目的】

臨床において疲労感や呼吸困難感を訴える患者の胸郭に着目して評価すると,呼吸筋活動の左右非対称性がみられることが多く,矢状面上での異常アライメントに加え,前額面上で骨盤に対する胸郭の変位や呼吸時の胸郭拡張差の左右差を多く経験する。そこで今回,姿勢の異なる座位における左右の胸郭形状を3次元動作解析装置を用いた上下左右胸郭体積変化から比較検討することを目的とした。


【方法】

対象は,若年男性11名とした。測定姿勢は,直立座位(骨盤傾斜角0度)と後傾座位(骨盤傾斜角20度)と,胸郭運動による体積変化の測定には3次元動作解析装置Vicon MX(Vicon社)を使用した。胸郭運動による体積変化の測定は,体表に貼付した赤外線反射マーカの変化量から算出し,マーカ貼付位置は,胸骨運動の触診で使用される部位を目安とし,胸骨切痕レベル,第3肋骨レベル,胸骨剣状突起レベル,第8肋骨レベル,第10肋骨レベル,臍レベルとした。各レベルの正中線上に貼付したマーカから近い順に内側,中央,外側に左右に3個ずつ計6個,腹・背部の表裏をなす位置に計84個のマーカを貼付した。胸郭体積の算出は,対応する腹・背側のマーカから中点を算出し,上部胸郭は腹側から中点までの前面,下部胸郭は中点から背側までの後面としてそれぞれ各六面体での体積変化量を算出した。また,胸骨切痕から第3肋骨までの合計を上部胸郭体積変化,胸骨剣状突起から第10肋骨までの合計を下部胸郭体積変化とした。


【結果】

直立座位では,安静呼吸,深呼吸ともに上部胸郭では,右胸郭に比べ左胸郭で有意に大きな体積変化が認められた(P=0.003,P=0.002)。また,安静呼吸,深呼吸ともに下部胸郭では,左胸郭に比べ右胸郭で有意に大きな体積変化が認められた(P=0.002,P=0.001)。後傾座位では,安静呼吸で下部胸郭において,右胸郭に比べ左胸郭で有意に大きな体積変化が認められた(P=0.003)。直立座位では,上部胸郭では,安静呼吸,深呼吸ともに呼気・吸気で左胸郭で(P=0.003,P=0.003),(P=0.003,P=0.003),下部胸郭では,安静呼吸,深呼吸ともに呼気・吸気で右胸郭で大きな体積変化が認められた(P=0.003,P=0.003)。後傾座位では,上部胸郭で深呼吸時に呼気・吸気ともに左胸郭で(P=0.03,P=0.03),下部胸郭では,安静呼吸,深呼吸ともに呼気・吸気で左胸郭で大きな体積変化が認められた(P=0.01,P=0.016)(P=0.008,P=0.026)。下部胸郭では,直立座位に比べ後傾座位で安静呼吸,深呼吸ともに,吸気,呼気で左胸郭で大きな体積変化が認められた(P=0.003,P=0.003)。


【結論】

後傾座位では胸郭形状の左右差が低下し胸椎は対称になり姿勢保持は安定するが,換気に対する不利な状況を増大させる可能性も危惧される。骨盤後傾位の改善はより良い呼吸環境を提供する上で重要な一つの手段の成り,前額面上での胸郭形状を評価することは,呼吸しやすい環境を提供することに繋がると思われる。