[O-RS-03-3] 脳卒中片麻痺患者の胸腹部可動性と病期の関連
Keywords:脳卒中, 胸腹部可動性, 病期
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺患者は肺炎など呼吸器合併症が生じやすく,その原因の一つとして胸郭可動性の低下による換気量減少が挙げられる。維持期の脳卒中片麻痺患者では麻痺側胸郭の可動性が低下すると報告されているが,急性期の脳卒中片麻痺患者では明らかでない。そこで今回,急性期でも測定可能な深呼吸時の胸腹部可動性に着目し,急性期および維持期の脳卒中片麻痺患者における胸腹部可動性の特性を把握することを目的とした。
【方法】
対象者は,脳卒中発症前独歩で発症後1~2週経過し,意思疎通が可能な初発の急性期脳卒中片麻痺患者(急性期群)21名(年齢71±9歳,男性12名),歩行可能で脳卒中発症後6ヶ月以上経過した意思疎通が可能な維持期脳卒中片麻痺患者(維持期群)21名(84±7歳,男性11名)とし,胸郭の手術の既往,呼吸器疾患が有る場合は除外した。上肢Brunnstrom Recovery Stage(BRS),Barthel Index(BI),胸腹部可動性を測定した。胸腹部可動性は呼吸運動評価スケールを用いて,左右上部胸郭,左右下部胸郭,腹部の計5カ所における深呼吸運動を測定し,呼吸運動測定器に表示された9段階(0~8)のスケールで表した。測定はベッド上背臥位にて各2回行い,最大値を採用した。また,上部胸郭と下部胸郭は左右でそれぞれ平均し,3部位を合計したスケール値(合計スケール値)を求めた。上下部胸郭および腹部のスケール値は4未満,合計スケール値は12未満を可動性低下とした。急性期群と維持期群における胸郭可動性の麻痺側と非麻痺側を比較するためにWilcoxonの符号付順位和検定を行った。上肢BRSと呼吸運動評価スケール値の相関にはSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
測定結果(急性期群,維持期群:中央値)は上肢BRS(5,5),BI(60点,70点),麻痺側上部胸郭可動性(3,3),非麻痺側上部胸郭可動性(3,3),麻痺側下部胸郭可動性(3,3),非麻痺側下部胸郭可動性(3,3),腹部可動性(4,4),合計スケール(10.5,10)であった。急性期群は下部胸郭で非麻痺側より麻痺側が有意な低下を認めたが,上部胸郭では有意差を認めなかった。維持期群は上部胸郭で非麻痺側より麻痺側が有意な低下を認めたが,下部胸郭では有意差を認めなかった。可動性低下者数は,上部胸郭(13名,12名),下部胸郭(16名,19名),腹部(4名,8名),合計スケール(12名,17名)だった。また,相関関係は維持期群の麻痺側下部胸郭スケール値と上肢BRSで中等度の有意な相関(r=0.51)を認めたが,急性期群では認められなかった。
【結論】
脳卒中片麻痺患者は多くの対象者で胸郭可動性が低下し,急性期と維持期の胸郭可動性の特性は異なることが示唆された。急性期では下部胸郭拡大作用をもつ横隔膜機能が麻痺側で低下し,維持期では上肢運動麻痺が上部胸郭可動性を抑制している可能性が考えられる。
脳卒中片麻痺患者は肺炎など呼吸器合併症が生じやすく,その原因の一つとして胸郭可動性の低下による換気量減少が挙げられる。維持期の脳卒中片麻痺患者では麻痺側胸郭の可動性が低下すると報告されているが,急性期の脳卒中片麻痺患者では明らかでない。そこで今回,急性期でも測定可能な深呼吸時の胸腹部可動性に着目し,急性期および維持期の脳卒中片麻痺患者における胸腹部可動性の特性を把握することを目的とした。
【方法】
対象者は,脳卒中発症前独歩で発症後1~2週経過し,意思疎通が可能な初発の急性期脳卒中片麻痺患者(急性期群)21名(年齢71±9歳,男性12名),歩行可能で脳卒中発症後6ヶ月以上経過した意思疎通が可能な維持期脳卒中片麻痺患者(維持期群)21名(84±7歳,男性11名)とし,胸郭の手術の既往,呼吸器疾患が有る場合は除外した。上肢Brunnstrom Recovery Stage(BRS),Barthel Index(BI),胸腹部可動性を測定した。胸腹部可動性は呼吸運動評価スケールを用いて,左右上部胸郭,左右下部胸郭,腹部の計5カ所における深呼吸運動を測定し,呼吸運動測定器に表示された9段階(0~8)のスケールで表した。測定はベッド上背臥位にて各2回行い,最大値を採用した。また,上部胸郭と下部胸郭は左右でそれぞれ平均し,3部位を合計したスケール値(合計スケール値)を求めた。上下部胸郭および腹部のスケール値は4未満,合計スケール値は12未満を可動性低下とした。急性期群と維持期群における胸郭可動性の麻痺側と非麻痺側を比較するためにWilcoxonの符号付順位和検定を行った。上肢BRSと呼吸運動評価スケール値の相関にはSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
測定結果(急性期群,維持期群:中央値)は上肢BRS(5,5),BI(60点,70点),麻痺側上部胸郭可動性(3,3),非麻痺側上部胸郭可動性(3,3),麻痺側下部胸郭可動性(3,3),非麻痺側下部胸郭可動性(3,3),腹部可動性(4,4),合計スケール(10.5,10)であった。急性期群は下部胸郭で非麻痺側より麻痺側が有意な低下を認めたが,上部胸郭では有意差を認めなかった。維持期群は上部胸郭で非麻痺側より麻痺側が有意な低下を認めたが,下部胸郭では有意差を認めなかった。可動性低下者数は,上部胸郭(13名,12名),下部胸郭(16名,19名),腹部(4名,8名),合計スケール(12名,17名)だった。また,相関関係は維持期群の麻痺側下部胸郭スケール値と上肢BRSで中等度の有意な相関(r=0.51)を認めたが,急性期群では認められなかった。
【結論】
脳卒中片麻痺患者は多くの対象者で胸郭可動性が低下し,急性期と維持期の胸郭可動性の特性は異なることが示唆された。急性期では下部胸郭拡大作用をもつ横隔膜機能が麻痺側で低下し,維持期では上肢運動麻痺が上部胸郭可動性を抑制している可能性が考えられる。