The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本呼吸理学療法学会 » 口述発表

[O-RS-04] 口述演題(呼吸)04

Sun. May 14, 2017 10:20 AM - 11:20 AM B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:高橋 仁美(市立秋田総合病院リハビリテーション科), 座長:俵 祐一(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学・作業療法学講座)

日本呼吸理学療法学会

[O-RS-04-2] 男性COPD患者における6分間歩行距離「370m」の臨床的意義の検証

今泉 裕次郎1, 堀江 淳2, 内田 賢3, 柴田 貴章3, 河島 通博3, 林 真一郎4 (1.JCHO佐賀中部病院リハビリテーション科, 2.京都橘大学健康科学部, 3.JCHO佐賀中部病院呼吸器内科, 4.NPO法人はがくれ呼吸ケアネット)

Keywords:COPD, 6MWD-370m, 臨床的指標

【はじめに,目的】

6分間歩行距離(6MWD)は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の死亡率の上昇や入院回数の増加の予測因子であり,その距離は370mであると報告されている(J.S. Krahnkeら,ATS, 2013)。本研究では,370m未満,370m以上の2群で群分けし,身体特性の差異の比較,およびCOPDの相対評価であるCOPD Assessment Test(CAT)のcut off値から,6MWD-370mの臨床的意義について検証した。


【方法】

対象は,研究の参加に同意が得られた病状安定期の男性COPD患者86名で,平均年齢は73.3±7.5歳,BMIは22.4±4.7,%FEV1は59.3±25.2%であった。主要測定指標は6MWDとした。副次的測定指標は,CAT,mMRC,呼吸筋力(MIP,MEP),握力,膝伸展筋力,片足立脚時間,5m最速歩行時間,Timed Up and Go時間(TUG),長崎大学呼吸ADL質問票の総得点(NRADL),健康関連QOL質問票の総得点(SGRQ),精神症状質問表の総得点(HADS)とした。統計学的解析は,死亡率,入院回数の増加が上昇し始める6MWD-370m未満群と以上群の2群間の身体特性の比較を独立サンプルのt検定にて分析した。また,サブ解析として6MWD-370m未満群と以上群を従属変数,CAT得点を説明変数としてROC曲線を求め,CATのcut off値を算出した。曲線の精度は,ROC曲線下面積(AUC)にて分析した。統計学的有意水準は5%とし,統計解析ソフトはSPSS version20を使用した。

【結果】

6MWD-370m未満群と以上群の比較では,mMRC(2.5±0.8vs1.2±0.7,p<0.001),MEP(72.0±39.7vs104.4±35.2cmH2O,p<0.001),MIP(44.3±21.9vs64.2±25.3cmH2O,p<0.001),握力(25.9±5.7vs32.9±7.3kg,p<0.001),膝伸展筋力(27.1±9.3vs35.8±9.1kgf,p<0.001),片足立脚時間(27.7±30.2vs71.7±43.2秒,p<0.001),5m最速歩行時間(3.6±1.2vs2.6±0.5秒,p<0.001),TUG(7.9±2.0vs5.8±1.0秒,p<0.001),CS-30(13.4±3.1vs 18.3±4.1回,p<0.001),NRADL(62.2±20.2vs87.7±13.6点,p<0.001),SGRQ(54.6±14.6vs29.8±16.5,p<0.001),HADS(12.6±4.8vs9.7±5.3点p=0.015)で370m未満群が有意に低値を示した。また,CAT得点での死亡率上昇,入院回数の増加が生じ始めるcut off値は13点(AUC=0.83)であった。

【結論】

6MWD-370m未満群の各身体機能,身体能力,ADL,QOL,息切れ症状,精神症状が有意に低下していた。COPD患者の6MWD-370mを境界とした歩行距離は,臨床上重要な指標となり得ることが示唆された。また,6MWD-370mは,高い精度のCAT得点のcut off値が得られた。6MWD-370mは,死亡率の上昇,及び入院回数増加を想起させるcut off値でもあることから,CAT得点もそれらリスクを想起できる指標となり得ることが示唆された。