第52回日本理学療法学術大会

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日本支援工学理学療法学会 » 口述発表

[O-SK-01] 口述演題(支援工学)01

2017年5月13日(土) 09:30 〜 10:30 B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:高井 逸史(大阪経済大学人間科学部)

日本支援工学理学療法学会

[O-SK-01-1] 知覚入力型インソールによる足底圧中心位置の指導が立ち上がり動作中の下肢筋活動にあたえる影響について

長谷川 正哉1, 足立 あやめ2, 高宮 尚美1, 島谷 康司1, 金井 秀作1, 田中 聡1 (1.県立広島大学保健福祉学部理学療法学科, 2.関西リハビリテーション病院リハビリテーション部)

キーワード:知覚入力型インソール, 立ち上がり, 動作指導

【はじめに,目的】足底感覚刺激を用いて動作中の足底圧中心位置(Center of foot pressure:以下,COP)を指導する知覚入力型インソール(Perceptual Stimulus Insole:以下,PSI)を開発している。PSIの使用方法として対象者がインソール上に設置した突起を知覚しつつ,「踏みながら」動作することで動作パターンの変容を促す。また,先行研究にて,PSIの使用によりCOP移動軌跡の微細な制御が可能になることを報告している。一方COPの定位の影響については検証しておらず,本研究ではPSIを用いたCOP定位位置の指示とその制御が立ち上がり動作におよぼす影響について調査した。

【方法】対象は下肢に既往のない健常女性20名を対象とした。実験条件およびPSIの設定について,PSIの突起にはプラスチック製の半球シールを用いた。突起の貼付位置によって条件を設定し,母趾球下,小趾球下,踵内側部,踵外側部に突起を貼付する4条件およびコントロール条件を加えた計5条件での実験を行った。次に,立ち上がり動作について,運動時間は2秒間としメトロノームを用いて規定した。また,椅子には電動式昇降装置を用いて,各被験者の下腿長に基づきの椅子の高さを調節した。筋電位の計測にはNORAXON社製マイオシステムを用い内側広筋,外側広筋,内側ハムストリングス,外側ハムストリングスの筋電位をサンプリング周波数1,000Hzにて計測した。筋電位の解析は全波整流およびスムージング処理を行った後,各条件における積分筋電図値を求め,コントロール条件の値にて正規化した。統計解析には,一元配置分散分析を行い,Scheffe法を用いて各条件間の比較を行った。なお,統計学的有意水準は5%に設定した。

【結果】内側広筋では母趾球条件,小趾球条件と比較し踵内側条件にて有意な増加を認めた(それぞれp=0.017,p=0.025)。外側広筋では母趾球条件と比較し踵内側条件にて有意な増加を認めた(p=0.047)。内側ハムストリングスでは踵内側条件,踵外側条件と比較し母趾球条件にて有意な増加を認めた(それぞれp=0.008,p=0.017)。外側ハムストリングスではすべての条件間に有意差は認められなかった。

【結論】PSIを用いたCOPの指導と意識的なCOP制御により下肢筋活動が変化することが確認された。これは,被験者が環境の変化を知覚し,その変化に身体を適応させながら立ち上がり動作課題を実施した結果を示している。そのため,PSIを用いた動作指導により環境に適応的な身体機能の獲得につながる可能性が示唆される。また,PSIを用いた動作指導は対象者と理学療法士の感覚的なコミュニケーションを補助するツールとして利用可能であり,対象者の下肢筋の選択的トレーニングや安楽な動作ストラテジの指導につながる可能性が示唆される。なお,本研究は平成28~30年度科学研究費助成(若手研究B:課題番号16K21297)を受け実施した。