第52回日本理学療法学術大会

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日本小児理学療法学会 » 口述発表

[O-SN-01] 口述演題(小児)01

2017年5月12日(金) 11:00 〜 12:00 A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:鶴崎 俊哉(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻)

日本小児理学療法学会

[O-SN-01-2] 新生児集中治療室管理を要したハイリスク児の予後予測について
―退院時頭部MRIと運動機能獲得時期からの検討―

長谷川 三希子1, 内尾 優1, 後藤 圭介1, 志真 奈緒子1, 今井 憲2, 内山 温2, 楠田 聰2, 猪飼 哲夫3 (1.東京女子医科大学リハビリテーション部, 2.東京女子医科大学母子総合医療センター新生児医学科, 3.東京女子医科大学リハビリテーション科)

キーワード:NICU, ハイリスク児, 予後予測

【はじめに】

NICU(Neonatal Intensive Care Unit)管理を要したハイリスク児の予後予測は発達・両親支援において重要である。退院時頭部MRI所見は神経学的予後を予測する上で有用であるが,PT評価も含めた総合的な判断が重要と考える。そこで,今回MRI所見に運動機能獲得時期を加え検討した。




【方法】

2013年4月から2015年3月に新生児科よりリハビリ依頼があった149名の内,退院時頭部MRI評価を施行し,定期的な外来が継続できた児で,染色体異常や筋疾患等の基礎疾患を有する場合や低体温療法を施行した児を除いた71名を対象とした。MRI所見は,医師読影より正常と異常に分類した。

発達予後については,脳性麻痺(Cerebral Palsy;以下CP)の有無と,定頚,足を持つ,寝返り,座位,腹這い,起き上がり,四つ這い,立ち上がり,独歩の9項目の運動機能の獲得時期を修正月齢で評価した。

MRI(正常・異常)とCP(有・無)の2項目をそれぞれ2群に分け,運動獲得時期を比較検討した。統計処理はKruskal-Wallis検定後,Steel-Dwass検定で多重比較を行い,危険率5%未満を統計学的有意とした。




【結果】

MRIの所見から,正常が51名,異常が20名だった。異常は脳室内出血(gradeI-IV),水頭症,脳室周囲白質軟化症,点状白質病変,小脳出血・萎縮等だった。CPと診断された児は9名で,GMFCSレベルIが3名,IIが5名,IIIが1名だった。CP全例がMRI異常であったため,1群;MRI正常・CP無(51名),MRI正常・CP有(0名),2群;MRI異常・CP無(11名),3群;MRI異常・CP有(9名)に分けられた。全例が低出生体重・34週以下の早産で,それぞれの平均体重,平均在胎週数は1089±340g・29週3日±2週2日,1067±396g・28週2日±3週2日,979±519g・27週3日±4週2日だった。出生体重は有意差を認めず,在胎週数には認められた。

運動機能獲得時期は修正月齢で(1群/2群/3群)と示した。定頚(3/3/3),足を持つ(6/6/8),寝返り(7/6/8),座位(8/8/11),腹這い(8/8.5/12),起き上がり(9/10/14.5),四つ這い(10/10/14),立ち上がり(10/9/14),独歩(14/15/24)であった。定頚と寝返り以外の7項目で有意差を認めた。多重比較では,足を持つは1群と3群が,座位,腹這い,起き上がり,四つ這い,立ち上がりの5項目は3群が1群,2群それぞれと,独歩は3群間それぞれに有意差を認めた。




【結論】

本研究では,退院時の頭部MRI所見が神経学的予後と完全に一致はしなかった。運動機能獲得時期を加え検討した結果,今回対象であったGMFCSレベルI~IIのCPは,定頚や寝返りの初期の発達には遅れを認めず,足を持つや座位以降の発達に遅れを示した。このことより,抗重力活動が盛んになる修正6~8ヶ月の運動発達評価はCPを予測できる可能性があると考えられた。MRIは異常だったがCPでない児は独歩のみで遅れを示し,立位以降のバランス能力等について評価する必要性が考えられた。