The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本小児理学療法学会 » 口述発表

[O-SN-02] 口述演題(小児)02

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:浪本 正晴(九州中央リハビリテーション学院教務部)

日本小児理学療法学会

[O-SN-02-6] 脳性麻痺GMFCS IIIの痙直型両麻痺における杖歩行児と歩行器歩行児の粗大運動能力の比較

東 周平, 阿部 光司, 節原 康大, 近藤 直樹 (北九州市立総合療育センター訓練科理学療法係)

Keywords:GMFCS III, 痙直型両麻痺, GMFM

【はじめに,目的】脳性麻痺の粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System;GMFCS)レベルIIIの児が使用する歩行補助具は主に杖と手掌支持型歩行器がある。操作の難易度は杖の方が高く,日常生活で杖歩行が可能な児と,歩行器を使い歩行する児との間には粗大運動能力に違いがあると考えられるが,その詳細は明らかではない。そこで,サブタイプとして多くみられる痙直型両麻痺を対象に,粗大運動能力尺度(Gross Motor Function Measure;GMFM)を用いて杖歩行児と歩行器歩行児の粗大運動能力を比較した。

【方法】2004年4月から2016年9月までにGMFM-88を評価した脳性麻痺,GMFCS III,痙直型両麻痺児を対象とした。なお,整形外科手術後1年以内の者,ボツリヌス毒素療法後4ヵ月以内の者,選択的後根切除術を受けた者は除外した。群分けはThe Functional Mobility Scale version 2(FMS)の50mの区分を使用し,FMS 3の杖群8名(平均年齢13.2±3.9歳,幅8歳7ヵ月~20歳1ヵ月),FMS 2の歩行器群18名(平均年齢11.9±4.2歳,幅5歳1ヵ月~22歳11ヵ月)とした。GMFM-88の結果はGross Motor Ability Estimater-2を用いて算出した。両群の比較は,GMFM-88総合点とGMFM-88各領域の点数についてStudentのt検定,GMFM-88各項目の点数についてMann-WhitneyのU検定を行った。統計解析ソフトはSPSS 11.0J for Windowsを用いて,有意水準5%とした。

【結果】GMFM-88総合点は杖群80.5%,歩行器群68.6%で有意差がみられた(p=0.001)。GMFM-88各領域の点数は,杖群でA領域97.1%,B領域99.2%,C領域92.6%,D領域68.3%,E領域45.5%,歩行器群でA領域97.3%,B領域95.8%,C領域85.1%,D領域42.3%,E領域22.7%であり,B領域・D領域・E領域で有意差がみられた(p<0.05)。GMFM-88各項目の点数は88項目中11項目に有意差がみられ(p<0.05),全て杖群の点数が高かった。有意差がみられた項目は,D領域4項目「56.立位:上肢の支えなしで,20秒間保持する」「57.立位:左足を持ち上げ,上肢の支えなしで,10秒間」「58.立位:右足を持ち上げ,上肢の支えなしで,10秒間」「64.立位:上肢で支えずに,床から物をつまみ上げ,立位に戻る」,E領域7項目「69.立位:前方へ10歩歩く」「70.立位:前方へ10歩歩いて止まり,180度回転し戻ってくる」「72.立位:前方へ10歩歩く,大きな物を両手で持って」「73.立位:20cmの間隔の平行線の間を,前方へ10歩連続して歩く」「78.立位:右足でボールを蹴る」「79.立位:左足でボールを蹴る」「84.立位,一方の手すりにつかまって:4段登る,一方の手すりにつかまって,交互に足を出して」であった。そのうち7項目(項目56,64,69,70,72,78,79)は中央値の差が2点以上あり,特に差が大きかった。

【結論】GMFCS IIIの痙直型両麻痺児では杖群と歩行器群に粗大運動能力の違いがあり,特に立位・歩行能力の差が大きいことが示された。独歩の能力や支持基底面内での立位保持能力に着目することで,杖歩行獲得予後予測や歩行能力向上に向けた理学療法に役立てられると考える。