The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本小児理学療法学会 » 口述発表

[O-SN-03] 口述演題(小児)03

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:日浦 伸祐(社会医療法人大道会森之宮病院リハビリテーション部)

日本小児理学療法学会

[O-SN-03-1] 日本における小児がんに対する理学療法のエビデンス
システマティックレビューと新展開

飛田 良1, 園田 悠馬1, 多賀 崇2 (1.滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.滋賀医科大学小児科学講座)

Keywords:小児がん, 理学療法, システマティックレビュー

【はじめに,目的】

近年,小児がん医療の進歩により,代表疾患である急性リンパ性白血病の長期生存率は80%を超えている一方で,小児がん経験者の半数以上に,成長障害や内分泌障害,二次がん等の晩期合併症が起こっている。また,小児がんを巡る問題点として,復学,同胞支援などが挙げられ,これらの把握と克服のため,早期および長期的なリハビリテーション(以下,リハ)が行われることは有意義である。特に運動療法は,いくつかの先行研究によって有効性と安全性が報告されている。しかしながら,社会・国家(人種や制度)による差異が示唆され,日本国内での検討も重要である。そこで本研究の目的は,本邦における小児がん患者に対するリハ介入の現状と将来の展望を明らかにすることである。


【方法】

関連のある臨床試験のうち,日本国内で実施され,2016年10月1日までに出版された英語および日本語の論文を,電子データベース(以下,eDB)(MEDLINE/PubMed,CENTRAL,医学中央雑誌)を用いて検索した。検索式は<‘Childhood Cancer’OR‘Pediatric oncology’OR‘Pediatric hematology’> AND <‘Physical therapy department,Hospital’OR‘Rehabilitation’OR‘Exercises’> AND <‘Japan’OR‘Japanese’>とした。国内のeDBでは<‘小児がん’OR‘小児癌’> AND <‘リハビリテーション’OR‘理学療法’OR‘運動療法’OR‘エクササイズ’>にて文献の抽出を行った。尚,対象となる研究デザインは,レビューとレクチャーを除き,ランダム化比較試験のみならず,非ランダム化比較試験,コホート研究,症例対照研究を含む臨床研究とした。また,未出版の臨床試験を調べるためにUMIN臨床試験登録システムによる検索も行った。


【結果】

83件の臨床試験が抽出されたが,いずれも日本における小児がん患者に対するリハ介入効果を検証したものではなかった。未出版の臨床試験においても,当院のものの他にみられなかった。当院における臨床試験は,リハ介入開始時期の違いによる有効性を検証することを目的としたランダム化比較試験であり,2016年10月現在で7名の症例が登録されており,現在の所,両群の差は不明瞭であり,全般的に四肢の筋力や歩行機能などのパフォーマンスよりも,体幹機能に主な低下がみられる傾向がある。


【結論】

国外では,入院中または退院後の身体活動増加に対する試験が散見されるが,メタ分析の対象となる文献は少なく,介入内容やアウトカムにバラつきが大きいことが課題である。また既存のレビューでは,理学療法士などのリハ専門職が行う介入に限定されておらず,医学的管理あるいは入院加療が必要な患者に対してのリハ介入の安全性が不明瞭である。さらに,日本に適合したリハのエビデンスは確立されておらず,今後,質の高い研究報告が望まれる。したがって,当院で開始された前向き臨床試験は,日本における小児がんリハの拡充における発起となることを期待する。