[O-SN-03-3] 青年期発達障害児と青年期健常児における上肢運動機能の比較
Keywords:発達障害児, 上肢運動機能, 協調運動
【はじめに,目的】
発達障害児は,運動面の不器用さが併存することが多く,運動面の不器用さは走行や跳躍などの全身運動だけでなく,就労能力と関連する上肢の不器用さも問題となっている。しかし,発達障害児の定量的な上肢機能評価に関する報告や,発達障害児と健常児の運動機能の比較はなされていない。また,発達障害児に関する報告は,就学前の児童の報告が多く,就労に向けた活動が重要になる青年前期の報告は少ない。そこで,本研究では青年期発達障害児と青年期健常児における上肢運動機能の比較を行い,発達障害児の上肢運動機能の実態の把握を目的とした。
【方法】
書面にて本研究への同意が得られた特別支援学校の知的学級に通学している発達障害児25名(15~16歳)のうち,Box and Block Test(以下BBT)を測定した18名を対象とした。また,一般高等学校に通学している健常児25名(15~16歳)のうち,発達障害児と年齢,性別,体重をマッチンングさせた18名を対象とした。評価項目は,BBT,新田の基本的協調運動評価表から前腕回内外運動,指対立試験,ボールを使用した運動によるN式幼児協調性評価尺度とした。BBTは2つに仕切られた箱の片方の空間にある150個の正方形のブロックを,1つずつ仕切りの反対側の空間に移動させ,1分間で移動できた個数を左右1回ずつ測定した。前腕回内外運動は肘を90°程度屈曲し体幹から少し離し,前腕回内外運動を一側ずつ指示した。指対立運動は,示指と母指がふれた状態から,示指から小指へ母指と触れる指を順次変え,その後小指から示指へと折り返す動作を一連の流れとした。N式幼児協調性評価尺度は,バレーボールとテニスボールを使用した5項目の計54点で評価を行った。発達障害児と健常児の各測定項目の比較を対応のないt検定,χ2検定にて行った。統計処理にはIBM SPSS Statistics Ver.21を使用し有意水準を5%とした。
【結果】
BBT利き手は発達障害児では64±11個(平均値±標準偏差),健常児では78±8個,非利き手は発達障害児では61±11個,健常児では77±9個と発達障害児が有意に低かった。また,N式幼児協調性評価尺度の合計点は,発達障害児では74±3点,健常児では75±1点と発達障害児で有意に低くかった。そして前腕回内外動作では,発達障害児は18人中13人が可能だったのに対し健常児は全員が可能であった。手指対立動作では,発達障害児は18人中7人が可能であったのに対し健常児は全員が可能と発達障害児が有意に各動作を行えていなかった。また,発達障害児におけるBBT利き手と非利き手の比較では,発達障害児でBBT非利き手が有意に低かった。
【結論】
発達障害児では健常児に比べ,上肢の協調運動の困難さと微細運動での手先の不器用さがあることが示唆された。また,BBTと前腕回内外運動と手指対立動作,ボール動作は発達障害児の上肢運動機能においての評価ツールとして有効である可能性が示唆された。
発達障害児は,運動面の不器用さが併存することが多く,運動面の不器用さは走行や跳躍などの全身運動だけでなく,就労能力と関連する上肢の不器用さも問題となっている。しかし,発達障害児の定量的な上肢機能評価に関する報告や,発達障害児と健常児の運動機能の比較はなされていない。また,発達障害児に関する報告は,就学前の児童の報告が多く,就労に向けた活動が重要になる青年前期の報告は少ない。そこで,本研究では青年期発達障害児と青年期健常児における上肢運動機能の比較を行い,発達障害児の上肢運動機能の実態の把握を目的とした。
【方法】
書面にて本研究への同意が得られた特別支援学校の知的学級に通学している発達障害児25名(15~16歳)のうち,Box and Block Test(以下BBT)を測定した18名を対象とした。また,一般高等学校に通学している健常児25名(15~16歳)のうち,発達障害児と年齢,性別,体重をマッチンングさせた18名を対象とした。評価項目は,BBT,新田の基本的協調運動評価表から前腕回内外運動,指対立試験,ボールを使用した運動によるN式幼児協調性評価尺度とした。BBTは2つに仕切られた箱の片方の空間にある150個の正方形のブロックを,1つずつ仕切りの反対側の空間に移動させ,1分間で移動できた個数を左右1回ずつ測定した。前腕回内外運動は肘を90°程度屈曲し体幹から少し離し,前腕回内外運動を一側ずつ指示した。指対立運動は,示指と母指がふれた状態から,示指から小指へ母指と触れる指を順次変え,その後小指から示指へと折り返す動作を一連の流れとした。N式幼児協調性評価尺度は,バレーボールとテニスボールを使用した5項目の計54点で評価を行った。発達障害児と健常児の各測定項目の比較を対応のないt検定,χ2検定にて行った。統計処理にはIBM SPSS Statistics Ver.21を使用し有意水準を5%とした。
【結果】
BBT利き手は発達障害児では64±11個(平均値±標準偏差),健常児では78±8個,非利き手は発達障害児では61±11個,健常児では77±9個と発達障害児が有意に低かった。また,N式幼児協調性評価尺度の合計点は,発達障害児では74±3点,健常児では75±1点と発達障害児で有意に低くかった。そして前腕回内外動作では,発達障害児は18人中13人が可能だったのに対し健常児は全員が可能であった。手指対立動作では,発達障害児は18人中7人が可能であったのに対し健常児は全員が可能と発達障害児が有意に各動作を行えていなかった。また,発達障害児におけるBBT利き手と非利き手の比較では,発達障害児でBBT非利き手が有意に低かった。
【結論】
発達障害児では健常児に比べ,上肢の協調運動の困難さと微細運動での手先の不器用さがあることが示唆された。また,BBTと前腕回内外運動と手指対立動作,ボール動作は発達障害児の上肢運動機能においての評価ツールとして有効である可能性が示唆された。