[O-SN-03-5] 慢性腰痛を有する成人脳性麻痺者における2点識別覚と身体知覚異常の変化
Keywords:脳性麻痺, 腰痛, 2点識別覚
【はじめに,目的】
成人脳性麻痺(CP)者は健常者に比べて疼痛の発生頻度が高く,腰痛は成人CP者が経験することの多い筋骨格系障害の1つである。しかし,成人CP者の粗大運動能力,姿勢の非対称性及び痙性は疼痛に関与しないことが報告されており,成人CP者の慢性腰痛に関連する要因は未だ明らかになっていない。近年,CPでない慢性腰痛症例における身体イメージの異常や2点識別覚閾値(Two Point Discrimination Threshold:TPD)の増加,また,それを標的とした理学療法の有効性が報告されている。しかし,成人CP者において,腰痛の有無によって身体イメージの異常やTPDの増加に違いが認められるか明らかでない。本研究では,成人CP者に対して,腰部の身体知覚の評価を行い,これらが成人CP者の腰痛に関連する要因であるか否かを検討した。
【方法】
対象は20歳以上とし,腰痛が6か月以上持続する成人CP者11名(男性7名,女性4名,平均年齢43.0±15.9歳)を疼痛群,腰痛のない成人CP者10名(男性4名,女性6名,平均年齢45.6±17.7歳)を非疼痛群とした。除外基準は6ヶ月以内に外科手術及びボツリヌス療法を行った者,質問紙の理解及びTPDの評価が困難である者とした。評価項目は粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System:GMFCS),疼痛強度(Numeric Rating Scale:NRS),身体知覚異常(Fremantle Back Awareness Questionnaire:FreBAQ)及び頬部と腰部のTPDとした。データは中央値(四分位範囲)で記載した。統計学的解析は,各評価項目における群間比較をマン・ホイットニーのU検定を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
GMFCSは,疼痛群でIが1名,IIが2名,IIIが1名,IVが4名,Vが3名,非疼痛群でIが2名,IIが1名,IIIが3名,IVが2名,Vが2名であった。頬部のTPDは疼痛群が15.0(11.8-20.0)mm,非疼痛群が15.0(10.6-19.3)mmであり,有意な差は見られなかったが(p=0.61),腰部のTPDは疼痛群が63.7(55.0-70.6)mm,非疼痛群が51.2(45.0-62.5)mmであり,疼痛群で有意に増加していた(p<0.05)。FreBAQは疼痛群が13.0(11.0-20.0),非疼痛群が4.0(1.5-5.2)であり,疼痛群で有意に高値であった(p<0.01)。
【結論】
本研究において,成人CP者の疼痛群は非疼痛群と比較して,頬部のTPDに有意な差を認めなかったが,腰部のTPDの増加が認められたことから,腰痛を有する成人CP者では腰部に対応した中枢神経系の変調が生じている可能性が示唆された。また,非疼痛群と比較して疼痛群でFreBAQが有意に高値であったことから,身体知覚異常が慢性腰痛患者と同様に成人CP者の慢性腰痛に関連している可能性が示唆された。以上のことから,成人CP者の腰痛の改善には,身体イメージの異常やTPDの改善を標的とする慢性腰痛の治療に準じたアプローチが重要となる可能性が示唆された。
成人脳性麻痺(CP)者は健常者に比べて疼痛の発生頻度が高く,腰痛は成人CP者が経験することの多い筋骨格系障害の1つである。しかし,成人CP者の粗大運動能力,姿勢の非対称性及び痙性は疼痛に関与しないことが報告されており,成人CP者の慢性腰痛に関連する要因は未だ明らかになっていない。近年,CPでない慢性腰痛症例における身体イメージの異常や2点識別覚閾値(Two Point Discrimination Threshold:TPD)の増加,また,それを標的とした理学療法の有効性が報告されている。しかし,成人CP者において,腰痛の有無によって身体イメージの異常やTPDの増加に違いが認められるか明らかでない。本研究では,成人CP者に対して,腰部の身体知覚の評価を行い,これらが成人CP者の腰痛に関連する要因であるか否かを検討した。
【方法】
対象は20歳以上とし,腰痛が6か月以上持続する成人CP者11名(男性7名,女性4名,平均年齢43.0±15.9歳)を疼痛群,腰痛のない成人CP者10名(男性4名,女性6名,平均年齢45.6±17.7歳)を非疼痛群とした。除外基準は6ヶ月以内に外科手術及びボツリヌス療法を行った者,質問紙の理解及びTPDの評価が困難である者とした。評価項目は粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System:GMFCS),疼痛強度(Numeric Rating Scale:NRS),身体知覚異常(Fremantle Back Awareness Questionnaire:FreBAQ)及び頬部と腰部のTPDとした。データは中央値(四分位範囲)で記載した。統計学的解析は,各評価項目における群間比較をマン・ホイットニーのU検定を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
GMFCSは,疼痛群でIが1名,IIが2名,IIIが1名,IVが4名,Vが3名,非疼痛群でIが2名,IIが1名,IIIが3名,IVが2名,Vが2名であった。頬部のTPDは疼痛群が15.0(11.8-20.0)mm,非疼痛群が15.0(10.6-19.3)mmであり,有意な差は見られなかったが(p=0.61),腰部のTPDは疼痛群が63.7(55.0-70.6)mm,非疼痛群が51.2(45.0-62.5)mmであり,疼痛群で有意に増加していた(p<0.05)。FreBAQは疼痛群が13.0(11.0-20.0),非疼痛群が4.0(1.5-5.2)であり,疼痛群で有意に高値であった(p<0.01)。
【結論】
本研究において,成人CP者の疼痛群は非疼痛群と比較して,頬部のTPDに有意な差を認めなかったが,腰部のTPDの増加が認められたことから,腰痛を有する成人CP者では腰部に対応した中枢神経系の変調が生じている可能性が示唆された。また,非疼痛群と比較して疼痛群でFreBAQが有意に高値であったことから,身体知覚異常が慢性腰痛患者と同様に成人CP者の慢性腰痛に関連している可能性が示唆された。以上のことから,成人CP者の腰痛の改善には,身体イメージの異常やTPDの改善を標的とする慢性腰痛の治療に準じたアプローチが重要となる可能性が示唆された。