第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本スポーツ理学療法学会 » 口述発表

[O-SP-03] 口述演題(スポーツ)03

膝関節

2017年5月13日(土) 14:10 〜 15:10 A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:吉田 昌平(京都学際研究所附属病院リハビリテーション科)

日本スポーツ理学療法学会

[O-SP-03-4] バドミントン選手における膝関節痛の既往と打点の高さが斜め前方ランジ動作に与える影響

西平 真子1, 山縣 桃子2, 市橋 則明2 (1.京都大学医学部人間健康科学科, 2.京都大学大学院医学研究科人間健康科学専攻)

キーワード:スポーツ障害, 三次元動作解析, 関節モーメント

【はじめに,目的】

バドミントンにおいて,様々な打点での斜め前方ランジは試合中多く行われる動作である。先行研究では,膝関節痛の有無によりバドミントン選手における斜め前方ランジの動作形態が異なることが明らかにされている。しかし,打点の高さを変えたときに膝関節痛がランジ動作に与える影響を明らかにした報告はない。そこで本研究は,バドミントン選手における膝関節痛の既往と打点の高さが斜め前方ランジ動作に与える影響を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は膝関節痛がある右利き大学生バドミントン選手8名(膝痛群),健常な右利き大学生バドミントン選手9名(健常群)とし,膝痛群の包含基準は現在または過去半年以内に利き手側の膝関節に疼痛がある者とした。打点の高さを床から上前腸骨棘までと床から膝関節裂隙までの2条件として,利き手側の斜め45°方向への右斜め前方ランジ動作を5回測定した。被験者はラケットとシューズを使用し,スタート位置から2歩でランジを行い,糸でつるされたシャトルを打ち,再びスタート位置に戻るという一連の動作をできるだけ速く行った。1歩目は左足とし,2歩目で右足部が床反力計上にのるようにした。2歩の合計ランジ距離は棘果長の2.5倍とした。運動学データは赤外線カメラ8台を用いた三次元動作解析装置Vicon MX(Vicon Motion Systems社,Oxford)を用いてサンプリング周波数200Hzにて取得し,直径14mm赤外線反射マーカーを身体の40箇所に貼付した。床反力は床反力計(AMTI社,Watertown)4基を用いてサンプリング周波数1000Hzにて取得した。得られたデータから2歩目が接地している間の右膝関節屈曲,内外反,内外旋と体幹前傾,側屈,回旋,骨盤前傾角度の最大値を算出した。さらに,右膝関節屈伸,内外転,内外旋モーメントの最大値を算出した。統計処理は,各関節角度およびモーメントの最大値と打点の高さ2条件でのそれぞれの変化量に対して群間に対応のないt検定を行い,有意水準は5%とした。


【結果】

最大膝関節屈曲モーメントの変化量が膝痛群で有意に高値を示した。膝痛群では打点の高低により1.59Nm/kgから1.16Nm/kgへと変化し,健常群では1.81Nm/kgから1.74Nm/kgへと変化した。しかし,その他の関節角度,モーメントの最大値およびそれぞれの変化量では群間に有意差は認めなかった。


【結論】

膝痛群では健常群と比較して,打点を低くした際に利き手側の最大膝関節屈曲モーメントをより大きく低下させてランジを行っていた。膝痛群は疼痛の発生を避けるために低い打点の条件でモーメントをより小さくしたと考えられ,利き手側斜め前方ランジ動作において,膝関節痛が打点を変えた際の利き手側最大膝関節屈曲モーメントの変化量に影響を与えることが示唆された。