[O-SP-04-5] 無症候性野球競技者における棘下筋厚と棘下筋伸長性との関連性
~核磁器共鳴画像法magnetic resonance imagingを用いて~
Keywords:萎縮筋, 棘下筋厚, 棘下筋伸長性
【はじめに,目的】
我々は第51回日本理学療法術学術大会において,無症候性野球競技者の棘下筋厚(以下:ISPW)は投球側と非投球側を比較し投球側ISPWが著明に薄いことを報告した。棘下筋萎縮の原因として,肩甲上神経障害や筋の付着部断裂,筋腹断裂の筋障害等が考えられている。しかしながら,無症候性野球競技者のISPWについては渉猟した限り一定の見解を得られていない。藤野らは,萎縮筋について筋線維径の減少という萎縮により弾性要素が破壊・消失することで,伸長に対する他動張力の低下をおこすと報告している。本研究目的は,無症候性野球競技者のISPWと棘下筋伸長性との関連性を明らかにする事である。
【方法】
対象者は投球動作時に疼痛を有しない本学に在学する野球競技者12名。平均年齢20.5±0.9歳,全員右利き,計12名24肩を対象とした。ISPW測定は,日立MRイメージング装置(Apertoシリーズ)を用い核磁気共鳴画像法(以下:MRI)を施行。肩関節MRIの水平断のT2強調画像を用いて調査を行った。ISPWの計測には肩甲骨関節窩の幅が最大となる像を用いた。肩甲骨関節窩の中点と肩甲骨体部の厚みが薄くなる点を結び関節窩軟骨下骨から4cm近位で垂線を引きこの線を基準にしてSteller Orderにてtransverse planeでのISPWを実数値に換算し測定した。棘下筋伸長性の測定は,棘下筋が最も伸張される肢位として端座位にて肩関節30度伸展位,肘関節完全伸展位,前腕中間位から,passiveにて肩関節内旋可動域(以下:Ext30-IR)を測定。全て同一検者にて行った。統計学的解析は,対応のあるt検定を用いて,各パラメーターを投球側と非投球側間の比較を行い有意水準は5%未満とした。また,ISPWと棘下筋伸長性についての関係をスピアマンの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
ISPWは投球側26.4±3.4mm,非投球側28.8±3.6mmであり有意差を認めた(P<0.01)。Ext30-IRは,投球側58.8±19.4°,非投球側87.1±21.6°であり有意差を認めた(P<0.01)。ISPWと棘下筋伸長性の間には,投球側と非投球側共に相関を認めなかった。
【結論】
従来,フォロースルー期において肩関節の強制内旋を強いることにより,棘下筋自体の損傷・肩甲上神経の圧迫・牽引等の末梢神経損傷が棘下筋の萎縮を引き起こす一因と考えられているが,本研究において無症候性野球競技者を対象としている。本研究の結果から投球側ISPWが著明に薄いと先行研究を支持する結果となり,併せて投球側棘下筋伸長性が低下している事がわかった。しかしながら,ISPWと棘下筋伸長性との間には相関は認められなかった。故に,無症候性野球競技者における投球側ISPWは,萎縮筋であると一概に言えない可能性が示唆された。
我々は第51回日本理学療法術学術大会において,無症候性野球競技者の棘下筋厚(以下:ISPW)は投球側と非投球側を比較し投球側ISPWが著明に薄いことを報告した。棘下筋萎縮の原因として,肩甲上神経障害や筋の付着部断裂,筋腹断裂の筋障害等が考えられている。しかしながら,無症候性野球競技者のISPWについては渉猟した限り一定の見解を得られていない。藤野らは,萎縮筋について筋線維径の減少という萎縮により弾性要素が破壊・消失することで,伸長に対する他動張力の低下をおこすと報告している。本研究目的は,無症候性野球競技者のISPWと棘下筋伸長性との関連性を明らかにする事である。
【方法】
対象者は投球動作時に疼痛を有しない本学に在学する野球競技者12名。平均年齢20.5±0.9歳,全員右利き,計12名24肩を対象とした。ISPW測定は,日立MRイメージング装置(Apertoシリーズ)を用い核磁気共鳴画像法(以下:MRI)を施行。肩関節MRIの水平断のT2強調画像を用いて調査を行った。ISPWの計測には肩甲骨関節窩の幅が最大となる像を用いた。肩甲骨関節窩の中点と肩甲骨体部の厚みが薄くなる点を結び関節窩軟骨下骨から4cm近位で垂線を引きこの線を基準にしてSteller Orderにてtransverse planeでのISPWを実数値に換算し測定した。棘下筋伸長性の測定は,棘下筋が最も伸張される肢位として端座位にて肩関節30度伸展位,肘関節完全伸展位,前腕中間位から,passiveにて肩関節内旋可動域(以下:Ext30-IR)を測定。全て同一検者にて行った。統計学的解析は,対応のあるt検定を用いて,各パラメーターを投球側と非投球側間の比較を行い有意水準は5%未満とした。また,ISPWと棘下筋伸長性についての関係をスピアマンの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
ISPWは投球側26.4±3.4mm,非投球側28.8±3.6mmであり有意差を認めた(P<0.01)。Ext30-IRは,投球側58.8±19.4°,非投球側87.1±21.6°であり有意差を認めた(P<0.01)。ISPWと棘下筋伸長性の間には,投球側と非投球側共に相関を認めなかった。
【結論】
従来,フォロースルー期において肩関節の強制内旋を強いることにより,棘下筋自体の損傷・肩甲上神経の圧迫・牽引等の末梢神経損傷が棘下筋の萎縮を引き起こす一因と考えられているが,本研究において無症候性野球競技者を対象としている。本研究の結果から投球側ISPWが著明に薄いと先行研究を支持する結果となり,併せて投球側棘下筋伸長性が低下している事がわかった。しかしながら,ISPWと棘下筋伸長性との間には相関は認められなかった。故に,無症候性野球競技者における投球側ISPWは,萎縮筋であると一概に言えない可能性が示唆された。