The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本スポーツ理学療法学会 » 口述発表

[O-SP-04] 口述演題(スポーツ)04

肩関節

Sun. May 14, 2017 9:00 AM - 10:00 AM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:尾崎 勝博(野崎東病院アスレティックリハビリテーションセンターリハビリテーション部)

日本スポーツ理学療法学会

[O-SP-04-6] 投球動作における“体の開き”の評価基準の検討

内田 智也1, 大久保 吏司2, 古川 裕之1, 松本 晋太朗1, 小松 稔1, 野田 優希1, 石田 美弥1, 佃 美智留1, 藤田 健司1 (1.藤田整形外科・スポーツクリニック, 2.神戸学院大学)

Keywords:投球動作, 三次元動作解析, 下肢・体幹動作

【はじめに,目的】投球障害の主因は不良な投球動作であると考えられており,その代表例として,早期に骨盤・体幹の回転運動が開始する動作,いわゆる“体の開き”が挙げられ,投球動作指導における重要な着眼点であるとされている。しかし,その良否を評価する基準は統一化されておらず,“体の開きをがまんする”などの抽象的な表現が投球動作指導に用いられることも多い。そこで,本研究はその評価基準を統一化する一助となるべく,いわゆる“体の開き”に関連があるとされるEarly Cocking期(E.C.期)の軸足動作と骨盤回旋のタイミング(TPR)との関連を検討したため報告する。

【方法】対象は中学野球選手の投手68名であり,ハイスピードカメラ(CASIO社製)および三次元動作解析装置MAC3D system(Motion Analysis社製)を用いて投球動作の撮影を行った。E.C.期の軸足動作の良否はハイスピードカメラの動画を基に,我々が過去に報告した評価基準に則って,後方および側方の二方向からの二次元動作解析(2D解析)によって評価した。また,TPRはMAC3D system専用の制御ソフトcoretexを用いて,Foot Contactからボールリリースまでを100%に正規化したピッチングサイクルの中で,胸部座標系に対する骨盤座標系の左回旋角度が最大となった時間を抽出した(%pitch)。そして,軸足動作の2D解析において後方且つ側方からの評価で良好となった選手を良好群,それ以外の選手を不良群として2群に群分けし,各群のTPRの平均値を対応のないt-検定を用いて比較した。

【結果】2D解析による分類の結果は良好群19名,不良群38名となり,各群の身長・体重・年齢に有意差はなかった。各群のTPRの平均値はそれぞれ,良好群25.6±12.0%pitch,不良群12.4±16.0%pitchであり,良好群のTPRが有意に高値を示した(p<0.01)。

【結論】不良な投球動作の代表例である“体の開き”の定義は不明瞭であり,明確な評価基準は提示されておらず,動作指導において様々な野球用語が用いられているのが現状である。そこで,本研究ではその評価基準を提示するべく,軸足動作の良否を評価する2D解析により対象者を二群に群分けし,各群のTPRを比較したところ,良好群のTPRが有意に高値を示した。本研究で用いた2D解析の評価基準は軸足股関節屈曲動作の良否を分類する指標であることやFoot Contact時の軸足股関節屈曲角度とTPRに正の相関があることが報告されていることから,良好群の選手はE.C.期に軸足股関節屈曲位を保持した状態での体重移動を行った結果,骨盤回旋のタイミングが遅くなったため,TPRが高値を示したと考えられた。よって,本研究で用いた2D解析の評価基準はいわゆる“体の開き”を評価することが出来る可能性があり,評価基準を統一化するための一助になり得ることが示唆された。