[O-SP-05-3] 動的バランスにおける小学生のバランス制御について
片脚ドロップジャンプ着地テストによる床反力の検討
Keywords:動的バランス, 小児, 床反力
【はじめに,目的】
幼児から児童期の静的バランス能力を成人と比較した場合,重心の位置が高く,力学的に不安定なことから,重心動揺軌跡長が長く,足圧中心の移動速度が速いことが知られている。しかし,姿勢反射機能が成人とほぼ同水準になる12歳頃までの静的バランス能力についての報告は散見されるが,同年齢における動的バランス能力に関する報告は乏しい。そこで本研究は,小学生の動的バランス能力の特徴を,成人との比較を通じて検討することを目的とした。
【方法】
対象は,下肢に重篤な症状がない小学生10名(平均年齢10.4±1.4歳),健常成人10名(平均年齢24.6±4.8歳)であった。測定は,前方または側方へ20 cmの高さから片脚ドロップジャンプ着地テストを行わせ,同側の脚で着地した時の床反力を床反力計により計測した。背中から外力を加え先に前方へ踏み出した脚を利き脚として,利き脚,非利き脚で前方・側方の各方向へ各6回ジャンプした。その際,上肢は胸の前で組ませた。床反力はダイナミックバランス評価システム(テクノロジーサービス社製)を用い,サンプリング周波数1kHzで計測した。動的バランス能力は,床反力データから,緩衝係数,着地後20-200ms間の足圧中心(以下COP)軌跡長,床反力鉛直成分ピーク値,鉛直成分ピーク時刻について検討した。
統計は,小学生と成人を利き脚,非利き脚の前方・側方に分けて対応のないt検定を用いて行い,有意水準5%とした。
【結果】
緩衝係数は,小学生が成人と比較し利き脚前方,非利き脚前方・側方で有意に大きくなった(利き脚前方;P<0.05,非利き脚前方・側方;P<0.01)。COP軌跡長は,小学生が成人と比較し利き脚側方,非利き脚前方・側方で有意に長くなった(利き脚側方;P<0.05,非利き脚前方・側方;P<0.01)。床反力鉛直成分ピーク値は,各条件において有意差は認められなかった(P>0.05)。鉛直成分ピーク時刻は,小学生が成人と比較し利き脚前方・側方,非利き脚前方・側方で有意に速くなった(利き脚前方・側方P<0.01,非利き脚前方・側方;P<0.01)。
【結論】
小学生で非利き脚前方・側方の緩衝係数は有意に大きく,床反力鉛直成分ピーク値に有意差がなく,鉛直成分ピーク時刻が有意に速いことから衝撃緩衝能が成人と比較し低いことが示唆された。小学生は成人と比較し非利き脚前方・側方の着地直後のCOP軌跡長は有意に長くなった。これは,衝撃緩衝能が低いことから,接地直後の加速度が大きくなり,重心動揺が生じていることでCOP軌跡長が増大したと考えられる。着地した瞬間や着地直後のごく短時間の姿勢制御は,着地で生じる外力に対し予測的に応答するフィードフォワード制御が貢献しており,本研究から,小学生の動的バランスは成人と比較しフィードフォワード制御による姿勢制御が未発達なことが推察された。
幼児から児童期の静的バランス能力を成人と比較した場合,重心の位置が高く,力学的に不安定なことから,重心動揺軌跡長が長く,足圧中心の移動速度が速いことが知られている。しかし,姿勢反射機能が成人とほぼ同水準になる12歳頃までの静的バランス能力についての報告は散見されるが,同年齢における動的バランス能力に関する報告は乏しい。そこで本研究は,小学生の動的バランス能力の特徴を,成人との比較を通じて検討することを目的とした。
【方法】
対象は,下肢に重篤な症状がない小学生10名(平均年齢10.4±1.4歳),健常成人10名(平均年齢24.6±4.8歳)であった。測定は,前方または側方へ20 cmの高さから片脚ドロップジャンプ着地テストを行わせ,同側の脚で着地した時の床反力を床反力計により計測した。背中から外力を加え先に前方へ踏み出した脚を利き脚として,利き脚,非利き脚で前方・側方の各方向へ各6回ジャンプした。その際,上肢は胸の前で組ませた。床反力はダイナミックバランス評価システム(テクノロジーサービス社製)を用い,サンプリング周波数1kHzで計測した。動的バランス能力は,床反力データから,緩衝係数,着地後20-200ms間の足圧中心(以下COP)軌跡長,床反力鉛直成分ピーク値,鉛直成分ピーク時刻について検討した。
統計は,小学生と成人を利き脚,非利き脚の前方・側方に分けて対応のないt検定を用いて行い,有意水準5%とした。
【結果】
緩衝係数は,小学生が成人と比較し利き脚前方,非利き脚前方・側方で有意に大きくなった(利き脚前方;P<0.05,非利き脚前方・側方;P<0.01)。COP軌跡長は,小学生が成人と比較し利き脚側方,非利き脚前方・側方で有意に長くなった(利き脚側方;P<0.05,非利き脚前方・側方;P<0.01)。床反力鉛直成分ピーク値は,各条件において有意差は認められなかった(P>0.05)。鉛直成分ピーク時刻は,小学生が成人と比較し利き脚前方・側方,非利き脚前方・側方で有意に速くなった(利き脚前方・側方P<0.01,非利き脚前方・側方;P<0.01)。
【結論】
小学生で非利き脚前方・側方の緩衝係数は有意に大きく,床反力鉛直成分ピーク値に有意差がなく,鉛直成分ピーク時刻が有意に速いことから衝撃緩衝能が成人と比較し低いことが示唆された。小学生は成人と比較し非利き脚前方・側方の着地直後のCOP軌跡長は有意に長くなった。これは,衝撃緩衝能が低いことから,接地直後の加速度が大きくなり,重心動揺が生じていることでCOP軌跡長が増大したと考えられる。着地した瞬間や着地直後のごく短時間の姿勢制御は,着地で生じる外力に対し予測的に応答するフィードフォワード制御が貢献しており,本研究から,小学生の動的バランスは成人と比較しフィードフォワード制御による姿勢制御が未発達なことが推察された。