The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本スポーツ理学療法学会 » 口述発表

[O-SP-05] 口述演題(スポーツ)05

評価

Sun. May 14, 2017 10:20 AM - 11:20 AM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:相澤 純也(東京医科歯科大学スポーツ医歯学診療センター)

日本スポーツ理学療法学会

[O-SP-05-6] 動的課題における腰椎安定性とパフォーマンスの関連性について
股関節屈曲課題時の腰椎変位量と股関節屈曲角速度を用いて

大嶺 俊充, 岩田 晃, 和中 秀行 (大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科)

Keywords:腰椎安定性, 股関節屈曲角速度, 動的課題

【はじめに,目的】近年体幹,腰椎の安定性が,様々なパフォーマンスの向上や下肢傷害予防に重要であると,着目されている。Reevsらは,安定性は「刺激を与え,それに対する新たな反応を観察することで評価されるもの」であると述べている。腰椎安定性に関する先行研究では,立位保持やActive SLR testなどの静的課題で検証されており,体幹筋収縮により腰椎の動きが少ないことが,安定性が高いと評価される。一方,Hodgesらは歩行やスポーツ動作時に求められる腰椎安定性は,動的課題で検証すべきであり,静的課題の安定性と同様に捉えるべきではないと指摘している。従って,短距離sprintやT-Run testなどのパフォーマンスと静的課題における腰椎安定性を関連づけることは適切ではない可能性がある。そこで本研究の目的は,動的課題における腰椎安定性と,パフォーマンス(本研究では立位股関節屈曲課題時の角速度)に関連性があると仮説を立て,本研究の安定性を計測する手法により,仮説を検証することである。


【方法】対象は,健常男性37名(年齢:28.0±5.3歳,身長:171.4±4.9cm,体重:65.3±8.9kg)。課題は,安静立位から右股関節をできるだけ速く屈曲させることとし,3回計測し,股関節屈曲角速度(角速度)が最高値を示した試技を分析対象とした。角速度は,右大腿中央に取り付けたGyroscope(sample rate:500Hz)により計測した。腰椎安定性の指標(安定性指標)の計測方法を以下に述べる。まず,腰椎の移動,課題に伴い起こる上下側方移動を各々計測するために,第4腰椎棘突起と,左大転子に直径20mmの半球形マーカー(L4,大転子)を貼付した。その後,Gyroscopeと同期させた状態で,ハイスピードカメラ(撮影速度:240fps)により,被験者の後方から課題時のマーカーの動きを撮影した。次にGyroscopeで規定した股関節屈曲開始時と安静立位時の静止画をimage-Jに取り込み,L4,大転子の縦,横の移動距離から,変位量を以下の式で計算し,安定性指標とした。安定性指標=[(L4縦-大転子縦)2+(L4横-大転子横)21/2統計処理はSPSSver24.0を使用し,安定性指標と角速度の関連性をpearsonの積率相関係数を用い検討した。なお有意水準は5%未満とした。


【結果】安定性指標は0.81±0.47cm,角速度は490.8±65.4deg/sであった。安定性指標と角速度の間には,r=-0.38(P=0.02)で有意な負の相関が認められた。


【結論】本研究の安定性指標は,安静立位時のL4と大転子の位置関係を基準0とし,股関節屈曲動作開始時における腰椎の変位量を表している。故にReevsらの安定性の定義から,股関節屈曲という刺激を与えた際に,安定性指標の値が小さい方が腰椎の安定性が高いと捉えることができる。立位股関節屈曲課題における腰椎の変位量と角速度に有意な相関が認められたことから,パフォーマンスが高い人は,動的課題における腰椎の安定性が高いことが示唆される。