The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-01] 口述演題(地域)01

Fri. May 12, 2017 11:00 AM - 12:00 PM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:壹岐 英正(医療法人瑞心会渡辺病院リハビリテーション科)

日本地域理学療法学会

[O-TK-01-1] 後期高齢者におけるフレイルとソーシャルキャピタルとの関係性
小学校区レベルでの検討

松本 大輔1,2, 高取 克彦1,2 (1.畿央大学健康科学部理学療法学科, 2.畿央大学ヘルスプロモーションセンター)

Keywords:後期高齢者, フレイル, ソーシャルキャピタル

【はじめに,目的】我が国の高齢化率は27.3%と世界で最も高く,さらに後期高齢者(75歳以上)の増加が見込まれている。後期高齢者の多くの場合,フレイルという中間的な段階を経て,徐々に要介護状態に陥ると考えられており,フレイルの一次,二次予防は喫緊の課題である。フレイルの実態について,各都道府県,市町村レベルでは検討されているものはあるが,実際に予防的介入を進めるあたって必要な小地域での検討されているものは少ない。また,近年,高齢者において,地域のつながり等を示すソーシャルキャピタル(以下SC)が豊かな地域に住む人は健康であると言われている。しかし,フレイルとソーシャルキャピタルとの関連性を示した報告は少ない。そこで,本研究の目的は,地域在住の後期高齢者に対し,フレイルの実態を小学校区レベルで把握し,フレイルとソーシャルキャピタルとの関連性を検討することとした。



【方法】対象は奈良県A市在住で,要支援・要介護認定を受けていない75歳以上の後期高齢者6517名から基本チェックリストを含む自記式質問紙を配布し,情報提供に署名にて同意した者で,欠損値を除外した5918名(男性2968名,女性2950名,平均年齢79.9±4.2歳)を解析対象とした。評価項目は基本チェックリスト(運動,栄養,口腔,閉じこもり,認知,うつについての25項目)を用い,各リスク該当数とSatakeらの基準に基づき,点数から0~3点をロバスト(健常),4~7点をプレフレイル,8点以上をフレイルと判定した。また,質問紙票にてSCをその3要素である近隣住民への信頼および交流,社会参加の多さについて聴取した。

データ解析はフレイルの有病率,基本チェックリスト該当数,SC等について小学校区間での比較をχ二乗検定および一元配置分散分析および多重比較検定を,個人レベルおよび小学校区レベルでの各項目との関連性についてはSpearmanの相関係数を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】個人レベルではフレイル742名(12.5%),プレフレイル1785名(30.2%)であった。フレイルとSCについて信頼,交流,社会参加のすべてに弱い相関が認められた(p<0.01)。また,小学校区間の比較ではフレイル8.3~19.0%で有意差を認め,小学校区レベルでのSCとの関連については,ボランティアの参加(ρ=-0.79)および社会参加の多さ(ρ=-0.58)に有意に強い相関が認められた(p<0.01)。

【結論】今回,小学校区間の比較ではフレイルの有病率が約2.3倍の格差があり,また,個人・小学校区レベルともフレイルとSCの関連性があることが示唆された。この結果は,より小地域での検討の必要性を示し,特に個人レベルよりも小学校区レベルではフレイルとSCの強い相関が認められ,社会参加を促進される介入がフレイルを予防する可能性を示唆された。各市町村の実情に合わせ,より地域に根差した介入が求められると考えられる。