The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-01] 口述演題(地域)01

Fri. May 12, 2017 11:00 AM - 12:00 PM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:壹岐 英正(医療法人瑞心会渡辺病院リハビリテーション科)

日本地域理学療法学会

[O-TK-01-5] 認知的フレイルが認知症発症に及ぼす影響

島田 裕之, 牧迫 飛雄馬, 土井 剛彦, 堤本 広大, 中窪 翔, 牧野 圭太郎 (国立長寿医療研究センター)

Keywords:フレイル, 認知障害, 認知症

【はじめに,目的】認知的フレイルは,身体的フレイルと認知障害を合併した状態として定義され,概念的枠組みが整理されつつある。ただし,その概念を操作的に測定可能な変数に定義して,認知的フレイルが認知症発症に対する影響を調べた研究はない。そこで本研究では,高齢者を対象として,身体的フレイル,認知障害,そしてそれらを合併した認知的フレイルの状況を調べ,認知症発症を追跡調査することで,認知的フレイルと認知症発症との関係を明らかにすることを目的とした。


【方法】対象者は愛知県大府市に在住する65歳以上の高齢者4,072名であった。身体的フレイルは,歩行速度低下,筋力低下,疲労感,身体活動低下,体重減少の5つの項目のうち3つ以上の異常とした。認知障害は,National Center for Geriatrics and Gerontology-Functional Assessment Toolの記憶,注意,実行機能,処理速度検査を用いて,5歳年齢階級の平均値から1.5標準偏差以上の認知機能の低下が2つ以上ある状態を認知障害ありとした。認知症の発症情報は,診療情報明細書情報から取得し,24か月間の追跡調査を実施した。統計解析は,混乱要因を調整したCox比例ハザードモデルを用いて,健常,身体的フレイル,認知障害,認知的フレイルの各群における認知症発症を比較した。


【結果】身体的フレイル,認知障害,認知的フレイルの有症率は,それぞれ5.1%,5.5%,1.1%であった。追跡期間中,認知症を発症した者は81名(2.0%)であった。健常,身体的フレイル,認知障害,認知的フレイルの各群における認知症発症率は,それぞれ1.3%,5.8%,6.3%,18.6%となり,認知的フレイルにおける発症率が高かった。Cox比例ハザードモデルによる分析の結果,健常な高齢者に対するハザード比は,身体的フレイル1.95(95%信頼区間:0.97-3.91),認知障害3.85(95%信頼区間:2.09-7.10),認知的フレイル6.19(95%信頼区間:2.73-13.99)となり,認知的フレイルにおいて高い認知症発症の危険性が認められた。


【結論】身体と認知的問題を合併した高齢者は,認知症になる危険性が高いことが明らかとなった。今後は,これらの高齢者に有効な認知症予防の介入方法を検証していく必要がある。