[O-TK-02-6] 第6-8頚髄損傷者を対象とした植物工場の作業効率の向上にむけて開発した簡易な補助具による作業時間と筋活動変化の検討
Keywords:頚髄損傷者, 植物工場, 補助具
【はじめに,目的】
我々は頚髄損傷者が農業就労できることを目指して,完全人工光型植物工場のユニバーサルデザイン化について研究を進めてきた。これまでに植物工場の座位作業に適した環境や実践的作業による身体的・心理的影響を明らかにしたが,頚髄損傷者の就労にむけて作業効率の向上が課題となっていた。そこで,頚髄損傷者に植物工場の作業体験及びモニタリングを行い簡易な補助具を作成した。
本研究では,第6-8頚髄損傷者を対象に植物工場を想定したモデル環境と実際の植物を用いた実践的な作業量を設定し,補助具を使用しない場合と使用した場合の作業時間と筋活動を測定し,比較した。
【方法】
対象は男性第6-8頚髄損傷者5名(年齢34.2±8.1歳)とした。作業課題は,縦30cm×横60cmのスポンジに種を蒔く播種,縦50cm×横50cmのトレーに植えられたレタスの収穫とし,各々150株を行わせた。Protocolを設定し,Protocol Aでは,播種は素手もしくはスプーンを用い,収穫は安全に配慮した刃のない模造型裁断機を用いた。Protocol Bでは,播種は左右へスライドさせると均等に種が蒔ける改良型播種器を用い,収穫はトレーの下に回転盤を設置し,手のひらサイズの皿を横にスライドすると収穫できるように開発した簡易収穫器を用いた。作業時間は,作業開始から終了までを測定した。筋活動は,表面筋電計(Noraxon社製)を用いて作業中の筋電図電位を記録し,作業開始から作業終了までを解析区間とした。対象筋は,座位作業時に疲労の出現しやすい利き手側の僧帽筋上部(UT),三角筋前部(AD),上腕二頭筋(BB)の3筋とした。測定波形は整流化し,各筋の最大随意収縮を基準に正規化(%MVC)し,各作業の平均%MVCを求めた。また,各作業の%MVCの二乗平均平方根(RMS)値を算出した。統計処理は,2群間の比較をWilcoxon signed-rank testを用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
Protocol Aでは,作業時間は播種が533.8±195.2秒,収穫が1157.6±405.5秒であり,平均%MVCは播種時にUT:12.4±6.3%,AD:9.0±4.1%,BB:1.9±1.0%,収穫時にUT:18.9±8.0%,AD:19.8±17.7%,BB:3.3±2.4%であった。Protocol Bでは,作業時間は播種が101.4±26.9秒,収穫が833.4±198.4秒であり,平均%MVCは播種時にUT:14.7±9.6%,AD:13.5±6.0%,BB:3.6±2.2%,収穫時にUT:19.5±11.1%,AD:16.2±12.5%,BB:3.1±0.9%であった。
播種時の作業時間,UTとADの%MVC RMS値は,Protocol Aに比べProtocol Bが有意に低値であった。播種時のADの平均%MVCは,Protocol Aに比べProtocol Bが有意に高値であった。
【結論】
本研究により,第6-8頚髄損傷者の播種は,モニタリングを経て開発した補助具の使用により作業時間が有意に短縮することが分かった。補助具の使用は,上肢挙上に関わる僧帽筋や三角筋の平均筋活動が高まるが作業時間が短くなることで相対的に総筋活動量が減少するため,作業効率の向上や身体的負担の軽減に期待できる。
我々は頚髄損傷者が農業就労できることを目指して,完全人工光型植物工場のユニバーサルデザイン化について研究を進めてきた。これまでに植物工場の座位作業に適した環境や実践的作業による身体的・心理的影響を明らかにしたが,頚髄損傷者の就労にむけて作業効率の向上が課題となっていた。そこで,頚髄損傷者に植物工場の作業体験及びモニタリングを行い簡易な補助具を作成した。
本研究では,第6-8頚髄損傷者を対象に植物工場を想定したモデル環境と実際の植物を用いた実践的な作業量を設定し,補助具を使用しない場合と使用した場合の作業時間と筋活動を測定し,比較した。
【方法】
対象は男性第6-8頚髄損傷者5名(年齢34.2±8.1歳)とした。作業課題は,縦30cm×横60cmのスポンジに種を蒔く播種,縦50cm×横50cmのトレーに植えられたレタスの収穫とし,各々150株を行わせた。Protocolを設定し,Protocol Aでは,播種は素手もしくはスプーンを用い,収穫は安全に配慮した刃のない模造型裁断機を用いた。Protocol Bでは,播種は左右へスライドさせると均等に種が蒔ける改良型播種器を用い,収穫はトレーの下に回転盤を設置し,手のひらサイズの皿を横にスライドすると収穫できるように開発した簡易収穫器を用いた。作業時間は,作業開始から終了までを測定した。筋活動は,表面筋電計(Noraxon社製)を用いて作業中の筋電図電位を記録し,作業開始から作業終了までを解析区間とした。対象筋は,座位作業時に疲労の出現しやすい利き手側の僧帽筋上部(UT),三角筋前部(AD),上腕二頭筋(BB)の3筋とした。測定波形は整流化し,各筋の最大随意収縮を基準に正規化(%MVC)し,各作業の平均%MVCを求めた。また,各作業の%MVCの二乗平均平方根(RMS)値を算出した。統計処理は,2群間の比較をWilcoxon signed-rank testを用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
Protocol Aでは,作業時間は播種が533.8±195.2秒,収穫が1157.6±405.5秒であり,平均%MVCは播種時にUT:12.4±6.3%,AD:9.0±4.1%,BB:1.9±1.0%,収穫時にUT:18.9±8.0%,AD:19.8±17.7%,BB:3.3±2.4%であった。Protocol Bでは,作業時間は播種が101.4±26.9秒,収穫が833.4±198.4秒であり,平均%MVCは播種時にUT:14.7±9.6%,AD:13.5±6.0%,BB:3.6±2.2%,収穫時にUT:19.5±11.1%,AD:16.2±12.5%,BB:3.1±0.9%であった。
播種時の作業時間,UTとADの%MVC RMS値は,Protocol Aに比べProtocol Bが有意に低値であった。播種時のADの平均%MVCは,Protocol Aに比べProtocol Bが有意に高値であった。
【結論】
本研究により,第6-8頚髄損傷者の播種は,モニタリングを経て開発した補助具の使用により作業時間が有意に短縮することが分かった。補助具の使用は,上肢挙上に関わる僧帽筋や三角筋の平均筋活動が高まるが作業時間が短くなることで相対的に総筋活動量が減少するため,作業効率の向上や身体的負担の軽減に期待できる。