第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-03] 口述演題(地域)03

2017年5月12日(金) 14:10 〜 15:10 A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:樋口 由美(大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科)

日本地域理学療法学会

[O-TK-03-6] 居住地域の標高と加齢変化からみたボリビア人の身体的特徴
健康障害予防策への提言

志村 圭太1, 久保 晃2, 西田 裕介2, 河野 健一1, 竹内 真太1 (1.国際医療福祉大学成田保健医療学部理学療法学科, 2.国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健医療学専攻理学療法学分野)

キーワード:標高, 肥満, ボリビア

【はじめに,目的】

ボリビア多民族国(以下,ボリビア)は南米の内陸国である。その国土は地理的な特徴を有し,標高によって高地高原地帯,渓谷地帯,平原地帯に分けられる。このうち標高2400m以上の渓谷地帯および高地高原地帯は低圧・低酸素環境であり,経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下など,身体・生理機能へ影響を与える。また,近年ボリビアでは肥満率が増加していると指摘されている。肥満は糖尿病や心疾患など生活習慣病のリスク因子であり,体格(栄養状態)の管理をすることが重要である。一方でボリビアの健康に関するデータは信頼性に乏しく,基礎データの集積および分析が疾病予防には必要である。本研究の目的は,ボリビア国内の標高が異なる地域に住む人々の血圧,SpO2,身長,体重,Body Mass Index(以下BMI)の加齢に伴う特徴を明らかにし,標高によって異なる身体機能に適合した健康障害予防策の必要性を提言することである。

【方法】

対象者は,ボリビア国内において標高の異なる4地域(250~2850m)に居住する589名の身体に明らかな障害のない成人ボリビア人(年齢46±18歳,男性209名,女性380名)とした。身長,体重,収縮期血圧(以下SBP),拡張期血圧(以下DBP),SpO2,を測定し,BMIを求めた。データ分析では,4地域を標高により低地群と高地群に分類し,各標高群の対象者を10歳ごとに6階級に区分した。統計解析には,各測定項目に対し標高と年齢階級を要因とした二元配置分散分析を用いて主効果と交互作用について検討した。有意水準はp<0.05とした。

【結果】

二元配置分散分析の結果,標高の主効果がSBP,DBP,SpO2に認められ,いずれの項目も高地群が低い値を示し,SBPに対する標高と年齢階級の交互作用が認められた。また,年齢階級の主効果がすべての項目に認められた。高地群では55歳以上の血圧値が34歳以下よりも有意に高かった。低地群では55歳以上の血圧値が35歳以下よりも有意に高く,65歳以上のSBPの分散が有意に大きかった。BMIは両群ともに18~24歳よりも35~54歳が高値を示した。

【結論】

高地居住者は血圧値が低い一方,その背後に動脈の加齢変化が存在する可能性があり,壮年期以降は血圧値を注意深く観察する必要がある。低地居住者に対しては,壮年期前から血圧測定を実施し,65歳以上の高血圧罹患率を減少させる積極的な管理が必要である。BMIでは両群ともに18~24歳以外の年齢階級すべてが過体重に相当し,加齢とともに増加して35~54歳の平均値は29台である。肥満は全身の炎症反応,インスリン抵抗性,交感神経活動の亢進を喚起し,動脈硬化症から生活習慣病を発症させるため,生活習慣や活動量へ目を向けた肥満対策が必要である。本研究で標高と加齢の影響によるボリビア人の身体的特徴を示し,居住地域に応じた疾病予防の必要性を提言できた点は,今後のボリビアの健康傷害予防に対して有益な情報提供になると考える。