The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-04] 口述演題(地域)04

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:小泉 利光(訪問看護ステーションきずな)

日本地域理学療法学会

[O-TK-04-2] 要介護高齢者の要介護度改善に影響を及ぼす認知機能について
8868名における2年間の追跡調査

林 悠太1, 波戸 真之介1, 島田 裕之2 (1.株式会社ツクイ, 2.国立長寿医療研究センター)

Keywords:要介護高齢者, 要介護度, 認知機能

【はじめに,目的】

著者は,要介護度の改善と運動機能との関連について調査(林ら,2015)したところ,軽度要介護高齢者の改善には運動機能は有意な関連を示さず,認知機能の関連が窺えた。そこで本研究では,要介護1,2の軽度要介護高齢者(以下,軽度),要介護3~5の重度要介護高齢者(以下,重度)を対象に要介護度の改善に影響を与える認知機能を分析し,介護予防に対する効果的なサービス提供につなげていくことを目的とした。

【方法】

対象は,通所介護サービスを2年以上継続利用していた軽度要介護高齢者7073名(年齢82.0±6.3歳,男性2432名,女性4641名),重度要介護高齢者1795名(年齢81.7±7.1歳,男性732名,女性1063名)とした。測定・調査項目は,サービス利用開始時のFIM認知項目(以下,認知FIM)を測定し,ベースライン時から2年間の毎月の要介護度を追跡した。ベースライン時から2年間で要介護度が改善した群を改善群,維持または悪化した者を維持・悪化群として2群に分けた。

群間における認知FIMの差を比較するため単変量分析を行った。有意な関連が認められた項目は,点数が6点以上を自立,5点以下を非自立として,ダミー変数化し2値化した。この2値化した項目を独立変数,改善群と維持・悪化群を従属変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。

【結果】

単変量分析の結果から,軽度は認知FIM項目すべてで,改善群が維持・悪化群に比べ有意に自立度が高く,重度でも同様の結果を示した。ロジスティック回帰分析の結果,軽度に関しては,問題解決,記憶が重度化に影響を与える要因として抽出された。これらの要因の改善に対するオッズ比(odds ratio:OR)と95%信頼区間(confidence interval:CI)は,問題解決(OR 1.56,95%CI 1.04-2.33,P<0.05)記憶(OR 2.19,95%CI 1.52-3.17,P<0.01)であった。重度に関しては,社会的交流,問題解決が抽出され,これらのORと95%CIは,社会的交流(OR 1.65,95%CI 1.18-2.30,P<0.01)問題解決(OR 1.80,95%CI 1.28-2.52,P<0.01)であった。

【結論】

軽度・重度の要介護度改善に影響を及ぼす要因として,問題解決能力が共通して抽出された。問題解決能力とは,金銭的,社会的,個人的な出来事に関して,合理的かつ安全にタイミングよく決断,実行する能力である。問題解決能力が低下している場合,身体機能が高くてもADLを遂行出来ない可能性があり,要介護度の改善を阻害することが予測される。及川は,社会認知スコアと服薬管理,セルフケア能力に関連が認められたと報告していることからも,要介護度改善を図る上で,問題解決能力の評価やアプローチの必要性が窺える。また,社会的交流や記憶も抽出されており,対人交流を通して社会認知能力を維持・向上させるプログラムが必要であると考えられる。