第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-04] 口述演題(地域)04

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:小泉 利光(訪問看護ステーションきずな)

日本地域理学療法学会

[O-TK-04-4] スパイダーを利用した運動療法の長期効果の検討
シングルケースデザインを用いた2症例検討

早乙女 雄紀1, 大沼 亮1,2, 松田 雅弘3 (1.介護老人保健施設ケアタウンゆうゆう, 2.埼玉県立大学大学院, 3.植草学園大学保健医療学部理学療法学科)

キーワード:要介護高齢者, 体重免荷運動, シングルケースデザイン

【はじめに】スパイダーは現在,小児理学療法領域で体重免荷によって姿勢制御能力向上の目的にて使用され,奥田ら(2015)は重症心身障害者における関節可動域と下肢筋活動の改善を報告した。このスパイダーとはユニバーサルフレーム(アシスト社製)に8本のゴムを取り付け,そのゴムと身体を結び付けて体重免荷環境をつくり,転倒リスクなく自発運動・抵抗運動が可能となる。我々は高齢者に対してのスパイダーを使用した運動療法の即時効果を報告した。今回,シングルケースデザイン(BAB法)を用いて,長期的な効果の検討を目的とした。

【方法】対象は当施設通所サービス利用者2名(A;72歳女性,パーキンソン病,要介護1,B;80歳男性,パーキンソン病,要介護1)を対象とし,各2週間のBAB法を用い,通常理学療法(個別20分)+スパイダー介入期(B1期),通常理学療法とスパイダーと同様の運動の基準水準期(A期),B1と同様のスパイダー介入期(B2期)に分け,介入前後でバランス機能・運動機能を測定した。バランス機能はFRT,TUG,運動機能は5回の立ち座り時間(STS)を計測した。スパイダーの設定はゴムを8本身体に装着し,スクワット運動10回,ステップ練習等を実施した。統計的な処理は,介入の変化値の比較をウィルコクソンの順位和検定を用いて分析した。

【結果】被験者Aは初期から最終時と平均1回の変化量,B1期FRT13.6cm→18.2cm,2.1±0.4,TUG13.6→13.7sec,-0.8±0.8,STS7.1→8.3sec,0.1±1.2,A期FRT19.5cm→14.5cm,-0.3±0.6,TUG13.6→12.6sec,-0.1±0.6,STS8.9→6.4sec,0.1±0.6,B2期FRT13.2cm→21.7cm,1.0±3.6,TUG12.3→11.3sec,-0.4±0.8,STS6.1→5.6sec,-0.1±0.7となり,B期で変化量が大きい傾向があった。被験者BはB1期FRT13.6cm→18.2cm,5.9±4.3,TUG13.6→13.7sec,-0.6±1.0,STS7.1→8.3sec,-1.4±0.5,A期FRT10.5cm→12.3cm,4.1±1.6,TUG12.8→13.8sec,-0.2±0.3,STS10.9→8.3sec,-1.1±0.7,B2期FRT13.6cm→18.2cm,5.9±1.7,TUG13.6→13.7sec,-1.1±0.4,STS7.1→8.3sec,-0.9±0.5となり,B期において特にFRTで改善がみられ,各スパイダー介入前後で有意にFRT,TUG,STSとも改善の効果がみられた。

【考察】スパイダーによる運動療法でバランス能力の即時効果を報告したが,今回2症例の長期的な検討でバランス能力の改善に効果があることが示唆された。易転倒者は立位制御能力の低下しており,高齢者でスパイダーを利用することで転倒の危険や不安が取り除かれ,免荷による立位姿勢制御能力の向上に対する運動療法が可能であり,バランス能力の改善に有効的な手段であることが考えられる。サービス利用者は易転倒者,立位保持が困難な者が多く,通常の理学療法だけではなく,立位の不安性を軽減したなかで自発的な運動を実施することで,立位バランス能力を相乗的に高められることが考えられる。