The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-06] 口述演題(地域)06

Sat. May 13, 2017 6:10 PM - 7:10 PM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:小林 丈人(小諸厚生総合病院リハビリテーション科)

日本地域理学療法学会

[O-TK-06-2] 地域在住の慢性期脳卒中片麻痺者における視覚的手がかりを用いた歩行練習が歩行パフォーマンスに及ぼす短期的効果

橋立 博幸1, 鈴木 友紀2, 原田 和宏3, 笹本 憲男4 (1.杏林大学保健学部理学療法学科, 2.医療法人笹本会おおくに通所リハビリテーション, 3.吉備国際大学保健医療福祉学部理学療法学科, 4.医療法人笹本会やまなしケアアカデミー)

Keywords:慢性期脳卒中, 歩行, 視覚的手がかり

【はじめに,目的】急性期や回復期だけでなく慢性期の脳卒中者に対する歩行練習において外的手がかりが有用な介入手段になりうると考えられるが,慢性期脳卒中者では視覚的手がかりを用いた歩行練習の効果が十分に検証されていない。本研究の目的は,1か月間,通所施設で視覚的手がかりを用いた歩行練習を実施した慢性期脳卒中者の症例の経過をとおして,視覚的手がかりを伴う歩行練習が歩行速度および歩数に及ぼす即時的かつ短期的な効果を検討することとした。


【方法】症例は,65歳,男性,8年前に脳出血右片麻痺を発症し,自宅退院後,週2回の通所リハビリテーションを継続していた。初回評価の時点では,Brunnstrom stage右上肢IV,右下肢IV,右上下肢表在・深部感覚軽度鈍麻,歩行はT字杖歩行が屋内自立レベルであり,5m歩行速度(5m歩数)は通常速度0.58m/s(15歩),最大速度0.82m/s(13歩),timed up and go test(TUG)は通常速度23.3秒,最大速度16.7秒であった。初回評価からの1か月間,週2回,通所施設にて,60分間の通常のリハビリテーションプログラムとともに,視覚的手がかりを用いた歩行練習を毎回10分間実施した。視覚的手がかりを用いた歩行練習は,歩行路の直線進行方向に沿って床面に直線ライン状の目印となるテープを貼り,対象者に「非麻痺側の足でラインを踏みながら直線進行方向へ歩いてください」と教示して往復直線歩行を行う非麻痺側下肢ラインステップ課題を付加した。毎回の歩行練習実施前後において5m歩行時間と5m歩数を測定し,対応のあるt検定を用いて検討した。


【結果】通所施設での歩行練習は1か月間で計8回実施した。8回の通所施設における歩行練習前後の歩行速度と歩数を比較した結果,歩行練習実施後(n=8)は,歩行練習実施前(n=8)に比べて,通常速度および最大速度での5m歩行速度が有意な高値を示し,5m歩数は有意な低値を示した(p<0.05)。また,8回目の歩行練習実施後では,5m歩行速度(5m歩数)は通常速度0.79m/s(12歩),最大速度1.22m/s(10歩),TUGは通常速度16.7秒,最大速度12.4秒であった。


【結論】歩行練習前後において歩行速度の有意な増加と歩数の有意な減少が認められたことから,最大速度条件下での非麻痺側下肢による身体外部への外的焦点に基づくライン上のステップを行う際に歩行中の麻痺側下肢への荷重が促進され,重複歩距離が増加し,各練習前後における即時的な歩行速度向上効果が得られたと推察された。また,初回評価時と比べて1か月後では歩数の減少とともに歩行速度の増加とTUGの成績向上を認めたことから,1か月間の非麻痺側下肢ラインステップ課題を付加した歩行練習は,慢性期脳卒中者の歩行パフォーマンスを改善する臨床的に有用な歩行練習方法であると考えられた。