第52回日本理学療法学術大会

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日本予防理学療法学会 » 口述発表

[O-YB-01] 口述演題(予防)01

2017年5月13日(土) 09:30 〜 10:30 B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:柴 喜崇(北里大学医療衛生学部)

日本予防理学療法学会

[O-YB-01-2] 地域在住中高年者の2年後のロコモ移行に関わる要因の検討
ロコモ25のアンケート追跡調査からの男女別の解析

新井 智之1,2, 藤田 博暁1,2, 丸谷 康平1,2, 旭 竜馬2,3, 森田 泰裕2,4, 細井 俊希1,2, 石橋 英明2,5 (1.埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科, 2.高齢者運動器疾患研究所, 3.日本医療科学大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻, 4.JCHO東京新宿メディカルセンター, 5.伊奈病院整形外科)

キーワード:ロコモティブシンドローム, 高齢者, ロコモ25

【はじめに,目的】ロコモティブシンドローム(ロコモ)は2015年に臨床判断値が発表され,ロコモ度テストによりロコモを判定することが可能となった。ロコモ25はロコモ度テストの1つであり,7点以上をロコモと判定する質問表である。本研究ではロコモ25のアンケート追跡調査から,ロコモ非該当の中高年者の2年後のロコモ移行に関わる要因を明らかにすることを目的とする。

【方法】対象は2013年の初回調査に参加した60-79歳の中高年者462人のうち,初回のロコモ25の得点が7点未満であり,かつ2年後のアンケート調査が可能であった266人(平均年齢69.0±5.1歳,男126人,女140人)である。初回調査では,年齢,BMI,握力,片脚立ち時間,5回起立時間,立ち上がりテスト,最大歩行速度,2ステップ値,膝伸展筋力,WOMAC痛みスコア,簡易栄養状態評価表(MNA-SF),骨粗鬆症・腰部脊柱菅狭窄症・変形性膝関節症の有無,転倒・骨折の有無を測定した。なお立ち上がりテストは,40cm台からの片脚立ち上がりの可/否を解析に使用した。さらに2年後にロコモ25のアンケート調査を行った。解析では,2年後にロコモ25の得点が7点未満だった者を非ロコモ群と,2年後のロコモ25の得点が7点以上に悪化した者をロコモ移行群に対象者を分け,両群間で初回調査の測定項目の比較を男女別に行った。さらにロコモ移行の有無を従属変数として,単変量解析で有意差のあった項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い,2年後のロコモ移行に関わる因子を男女別に検討した。


【結果】2年後にロコモ25が7点以上となった対象者は全体で41人であり,男性で17人(13.5%),女性で24人(17.1%)であった。年齢・性別・BMIを調整した多重ロジスティック回帰分析の結果,2年後のロコモ発生に関わる要因として抽出されたのは,男性ではMNA-SF(オッズ比0.440,95%CI:0.265-0.731,p=0.002),40cm台からの片脚立ち上がりの可/否(オッズ比5.010,95%CI:1.439-17.449,p=0.011),脊柱管狭窄症の有無(オッズ比9.452,95%CI:1.799-49.948,p=0.008)であり,女性では,MNA-SF(オッズ比0.558,95%CI:0.356-0.875,p=0.011),WOMAC痛みスコア(オッズ比2.977,95%CI:1.530-5.795,p=0.001),最大歩行速度(オッズ比0.009,95%CI:0.001-0.109,p<0.001)であった。


【結論】本研究の結果,2年後のロコモ発生に関わる男女共通の要因として栄養状態が抽出された。さらに男性では下肢筋力と腰部脊柱管狭窄症の有無,女性では移動能力と痛みが将来のロコモ発生に影響していた。このことからロコモの予防ためには,低栄養に対する対策に加え,男性においては,下肢筋力の向上と腰椎疾患の予防,女性においては移動能力の向上と痛みへの対策が重要であることが示唆された。