[O-YB-01-3] 歩行機能低下が軽度要介護高齢者の重度化を引き起こす
~31457名を対象とした24か月間の縦断調査~
Keywords:要介護高齢者, 歩行機能, 縦断研究
【はじめに,目的】
要介護状態の重度化予防のために,理学療法士が歩行機能の維持・向上を図る場面は多い。しかし,元気高齢者と比較して要介護高齢者を対象とした研究報告は少なく,要介護高齢者の歩行機能と重度化の関連性について,データの蓄積とエビデンスの構築をしていくことが必要とされている。
そこで本研究の目的は,軽度要介護高齢者の重度化と歩行機能の関連性を24か月間の追跡調査によって明らかにすることとした。
【方法】
対象は,2006年1月から2015年10月までに全国のデイサービス440施設を利用していた軽度要介護高齢者31457名(平均年齢82.3±6.8歳,男性10896名,女性20561名,要介護1:17493名,要介護2:13964名)とした。
デイサービス利用開始後,通常歩行速度を測定した時点をベースラインとして,その後24か月間,毎月の要介護度を調査して,要介護3よりも重度と認定された月を抽出した。
統計学的解析として,ベースラインにおける歩行機能が将来の重度化に及ぼす影響を検討するため,歩行速度が速い順に四分位でI~IV群,測定不可者をV群として分類したのちに,各群の要介護状態の重度化発生率をKaplan-Meier法によって算出し,Log-rank検定を用いて群間の重度化発生率曲線の比較を行った。
【結果】
歩行速度の結果より,I群は男性0.870m/sec以上,女性0.845m/sec以上,II群は男性0.869~0.667m/sec,女性0.844~0.638m/sec,III群は男性0.666~0.476m/sec,女性0.0.637~0.454m/sec,IV群は男性0.475m/sec以下,女性0.453m/sec以下とした。このとき,24か月の調査期間において軽度要介護状態から重度化したのは,I群で1008/6904名(14.6%),II群で1165/6439名(18.1%),III群で1306/6174名(21.2%),IV群で589/6239名(25.5%),V群で1990/5701名(34.9%)であった。
Log-rank検定により,重度化発生率曲線の群間比較を行ったところ,I群からV群までの全ての組み合わせで有意な差が認められた。
【結論】
軽度要介護高齢者において,歩行機能が低下するほど要介護状態の重度化率は高まり,歩行できない場合はさらに重度化につながりやすいことを大規模集団で縦断的に示すことができた。また,本研究では段階的に各歩行機能レベルにおける重度化発生率を示すことができたため,介護保険施設等で歩行関連プログラムの必要性を検討する場合にも参考としやすい結果であると考える。
介護保険領域における理学療法士の役割として,歩行機能の維持・向上を求められることは多い。今後は理学療法介入による歩行機能の維持・向上が,要介護高齢者の重度化予防につながっていることを縦断的に示すことが必要であろう。
要介護状態の重度化予防のために,理学療法士が歩行機能の維持・向上を図る場面は多い。しかし,元気高齢者と比較して要介護高齢者を対象とした研究報告は少なく,要介護高齢者の歩行機能と重度化の関連性について,データの蓄積とエビデンスの構築をしていくことが必要とされている。
そこで本研究の目的は,軽度要介護高齢者の重度化と歩行機能の関連性を24か月間の追跡調査によって明らかにすることとした。
【方法】
対象は,2006年1月から2015年10月までに全国のデイサービス440施設を利用していた軽度要介護高齢者31457名(平均年齢82.3±6.8歳,男性10896名,女性20561名,要介護1:17493名,要介護2:13964名)とした。
デイサービス利用開始後,通常歩行速度を測定した時点をベースラインとして,その後24か月間,毎月の要介護度を調査して,要介護3よりも重度と認定された月を抽出した。
統計学的解析として,ベースラインにおける歩行機能が将来の重度化に及ぼす影響を検討するため,歩行速度が速い順に四分位でI~IV群,測定不可者をV群として分類したのちに,各群の要介護状態の重度化発生率をKaplan-Meier法によって算出し,Log-rank検定を用いて群間の重度化発生率曲線の比較を行った。
【結果】
歩行速度の結果より,I群は男性0.870m/sec以上,女性0.845m/sec以上,II群は男性0.869~0.667m/sec,女性0.844~0.638m/sec,III群は男性0.666~0.476m/sec,女性0.0.637~0.454m/sec,IV群は男性0.475m/sec以下,女性0.453m/sec以下とした。このとき,24か月の調査期間において軽度要介護状態から重度化したのは,I群で1008/6904名(14.6%),II群で1165/6439名(18.1%),III群で1306/6174名(21.2%),IV群で589/6239名(25.5%),V群で1990/5701名(34.9%)であった。
Log-rank検定により,重度化発生率曲線の群間比較を行ったところ,I群からV群までの全ての組み合わせで有意な差が認められた。
【結論】
軽度要介護高齢者において,歩行機能が低下するほど要介護状態の重度化率は高まり,歩行できない場合はさらに重度化につながりやすいことを大規模集団で縦断的に示すことができた。また,本研究では段階的に各歩行機能レベルにおける重度化発生率を示すことができたため,介護保険施設等で歩行関連プログラムの必要性を検討する場合にも参考としやすい結果であると考える。
介護保険領域における理学療法士の役割として,歩行機能の維持・向上を求められることは多い。今後は理学療法介入による歩行機能の維持・向上が,要介護高齢者の重度化予防につながっていることを縦断的に示すことが必要であろう。