[O-YB-02-3] 身体機能の改善と運動の継続性との関係
客観的数値による改善と主観的な実感との違い
Keywords:効果の実感, 運動継続性, 行動変容
【はじめに,目的】理学療法士にとって対象とする者の身体機能評価を実施することは必須である。同時に身体機能の改善を客観的数値として提示することは,対象者の動機づけを高めることにつなげるだけでなく,介入内容を見直すきっかけにもなる。しかし,数値による改善をいくら提示したとしても,対象者自らが改善を実感するに至らないケースは少なからず見受けられる。自主的な運動を継続させるためにも,運動の効果を自ら実感することは重要な要素と言える。これまで,我々は運動効果の実感を評価し,提示することがその後の在宅運動の継続につながることを明らかにしてきた。しかしながら,客観的数値の改善と主観的な実感のそれぞれが運動の継続性に対し関連するかどうかについては明らかにしていない。そこで,本研究は具体的に客観的数値の改善と主観的な実感のそれぞれが,在宅運動の継続性へどの程度関連するかについて明らかにすることを目的とする。
【方法】要支援・要介護者46名(男21名,女25名;平均77.8±5.8歳)を対象とした。評価項目は,基本属性,身体機能(TUG,開眼片脚立ち,階段昇降時間,5m最大歩行速度,CS-5),および効果の実感は,身体機能の5項目に対し,それぞれ効果を実感したかどうかについて7件法により回答を求め平均得点を算出した。在宅運動の継続性はセルフチェックシートを用いて,実施した在宅運動量の合計得点を算出した。なお,評価を実施した時期は,身体機能が初期および1ヵ月後であり,効果の実感および在宅運動実施状況は1ヵ月後に評価した。統計解析は,ピアソンの積率相関係数を用いた。
【結果】身体機能の変化量と在宅運動継続性との関係について相関係数を算出した結果,階段昇降時間の項目にのみ有意な相関が認められた。一方,効果の実感と在宅運動継続性との関係は,開眼片脚立ち,階段昇降時間,5m最大歩行速度,CS-5の4項目において,有意な相関関係にあることが認められた。
【結論】本研究は客観的数値の改善と主観的な実感のそれぞれが,在宅運動の継続性へ,どの程度関連するかについて明らかにすることである。本研究結果から,身体機能の客観的数値がいくら改善を示したとしても,在宅における自主的な運動の継続性と関係性が低いことが明らかとなった。一方,各身体機能の主観的な実感と在宅運動の継続性との相関が有意であったことから,運動の効果を実感することが在宅における自主的な運動の継続につながる可能性が示唆された。本研究で得られた知見は,自助を醸成する役割を担う理学療法士に対する新たな患者評価の必要性を探るための視座を与えるものと言える。
【方法】要支援・要介護者46名(男21名,女25名;平均77.8±5.8歳)を対象とした。評価項目は,基本属性,身体機能(TUG,開眼片脚立ち,階段昇降時間,5m最大歩行速度,CS-5),および効果の実感は,身体機能の5項目に対し,それぞれ効果を実感したかどうかについて7件法により回答を求め平均得点を算出した。在宅運動の継続性はセルフチェックシートを用いて,実施した在宅運動量の合計得点を算出した。なお,評価を実施した時期は,身体機能が初期および1ヵ月後であり,効果の実感および在宅運動実施状況は1ヵ月後に評価した。統計解析は,ピアソンの積率相関係数を用いた。
【結果】身体機能の変化量と在宅運動継続性との関係について相関係数を算出した結果,階段昇降時間の項目にのみ有意な相関が認められた。一方,効果の実感と在宅運動継続性との関係は,開眼片脚立ち,階段昇降時間,5m最大歩行速度,CS-5の4項目において,有意な相関関係にあることが認められた。
【結論】本研究は客観的数値の改善と主観的な実感のそれぞれが,在宅運動の継続性へ,どの程度関連するかについて明らかにすることである。本研究結果から,身体機能の客観的数値がいくら改善を示したとしても,在宅における自主的な運動の継続性と関係性が低いことが明らかとなった。一方,各身体機能の主観的な実感と在宅運動の継続性との相関が有意であったことから,運動の効果を実感することが在宅における自主的な運動の継続につながる可能性が示唆された。本研究で得られた知見は,自助を醸成する役割を担う理学療法士に対する新たな患者評価の必要性を探るための視座を与えるものと言える。