[O-YB-02-5] 学校保健法に基づく運動器検診の実施
Keywords:学校保健法, 運動器検診, 理学療法士
【はじめに】
文部科学省の省令改正により学校保健安全法に基づいて平成28年4月1日から学校定期健診に運動器検診の項目が加わった。運動器の評価を専門的な知識をもって実施できる理学療法士(以下,PT)が,本事業へ参加する意義は大きいものと考えられる。今回,理学療法士が小学生を対象に運動器検診を実施したので,その結果について報告する。
【方法】
対象は,K市内の小学校に通う296名(1年生44名,2年生44名,3年生53名,4年生54名,5年生47名,6年生54名)。事前準備として検査項目をクラス担任により,児童に体験させた。その後,各家庭に運動器検査項目の説明書とアンケートを行い,検査の周知に努めた。2日間の内に,すべての児童をPT 3名が検診した。測定項目は,①側弯症の検診,②体幹の前屈,③体幹の後屈,④左の片脚立ち(5秒以上の可否),⑤右の片脚立ち,⑥しゃがみ込み動作,⑦左肘の屈曲伸展,⑧右肘の屈曲伸展,⑨左肘のバンザイ動作,⑩右のバンザイ動作,⑪指尖床間距離である。『千葉県版運動器検診保健調査票掲載マニュアル』を参考に判定基準を設け,指尖床間距離は,床に指尖が接地しない者のみを測定した。
【結果】
検診に要した時間は,1児童当たり約5分であった。運動器検診中に何らかの身体的問題が生じた児童はいなかった。左右の片脚立ちが不可能な児童の割合は,1年生から順に左脚24.4%,11.1%,5.6%,1.9%,4.3%,5.6%,右脚20.0%,8.9%,5.6%,1.9%,4.3%,1.9%であり,低学年において高率であった(p<0.01)。しゃがみ込みが不可能な児童の割合は,1年生から順に2.2%,6.7%,0%,9.3%,8.5%,16.7%であり,高学年において高率であった(p<0.01)。指尖床間距離の測定において床に指先が接地しない児童の割合は,1年生から順に31.1%,28.8%,46.3%,24.1%,44.7%,53.7%であり,高学年において高率であった(p<0.01)。側弯症が疑われる児童は,全体で6名であった。体幹の前屈・後屈で腰痛が誘発された児童は,全体で16名であった。肘関節,肩関節の可動域異常を認めた児童は,全体で2名であった。
【結論】
左右の片脚立ち能力の向上は,平衡機能の発達を反映したものと考えられた。しゃがみ込み動作が不可能な被験者が増加したことは,指尖床間距離からみた柔軟性の低下を反映するものと推察された。今後は,経年的に運用することによって個々の児童の身体機能問題を縦断的に追跡することが可能であろう。少数ではあるが,側弯症が疑われる児童や腰痛,関節可動域の障害を有する児童を発見できた。検診は,運動器疾患のスクリーニング機能を果たすことができるかもしれない。本事業は,理学療法士の新たな職業分野の確立および国民健康増進へ貢献できる可能性がある。理学療法士が参加することによって本事業がより有益なものに発展していけるよう検診の継続と改良を行っていきたい。
文部科学省の省令改正により学校保健安全法に基づいて平成28年4月1日から学校定期健診に運動器検診の項目が加わった。運動器の評価を専門的な知識をもって実施できる理学療法士(以下,PT)が,本事業へ参加する意義は大きいものと考えられる。今回,理学療法士が小学生を対象に運動器検診を実施したので,その結果について報告する。
【方法】
対象は,K市内の小学校に通う296名(1年生44名,2年生44名,3年生53名,4年生54名,5年生47名,6年生54名)。事前準備として検査項目をクラス担任により,児童に体験させた。その後,各家庭に運動器検査項目の説明書とアンケートを行い,検査の周知に努めた。2日間の内に,すべての児童をPT 3名が検診した。測定項目は,①側弯症の検診,②体幹の前屈,③体幹の後屈,④左の片脚立ち(5秒以上の可否),⑤右の片脚立ち,⑥しゃがみ込み動作,⑦左肘の屈曲伸展,⑧右肘の屈曲伸展,⑨左肘のバンザイ動作,⑩右のバンザイ動作,⑪指尖床間距離である。『千葉県版運動器検診保健調査票掲載マニュアル』を参考に判定基準を設け,指尖床間距離は,床に指尖が接地しない者のみを測定した。
【結果】
検診に要した時間は,1児童当たり約5分であった。運動器検診中に何らかの身体的問題が生じた児童はいなかった。左右の片脚立ちが不可能な児童の割合は,1年生から順に左脚24.4%,11.1%,5.6%,1.9%,4.3%,5.6%,右脚20.0%,8.9%,5.6%,1.9%,4.3%,1.9%であり,低学年において高率であった(p<0.01)。しゃがみ込みが不可能な児童の割合は,1年生から順に2.2%,6.7%,0%,9.3%,8.5%,16.7%であり,高学年において高率であった(p<0.01)。指尖床間距離の測定において床に指先が接地しない児童の割合は,1年生から順に31.1%,28.8%,46.3%,24.1%,44.7%,53.7%であり,高学年において高率であった(p<0.01)。側弯症が疑われる児童は,全体で6名であった。体幹の前屈・後屈で腰痛が誘発された児童は,全体で16名であった。肘関節,肩関節の可動域異常を認めた児童は,全体で2名であった。
【結論】
左右の片脚立ち能力の向上は,平衡機能の発達を反映したものと考えられた。しゃがみ込み動作が不可能な被験者が増加したことは,指尖床間距離からみた柔軟性の低下を反映するものと推察された。今後は,経年的に運用することによって個々の児童の身体機能問題を縦断的に追跡することが可能であろう。少数ではあるが,側弯症が疑われる児童や腰痛,関節可動域の障害を有する児童を発見できた。検診は,運動器疾患のスクリーニング機能を果たすことができるかもしれない。本事業は,理学療法士の新たな職業分野の確立および国民健康増進へ貢献できる可能性がある。理学療法士が参加することによって本事業がより有益なものに発展していけるよう検診の継続と改良を行っていきたい。