[O-YB-03-1] フレイル高齢者に対する包括的運動支援システムの運用による介入効果
―無作為化比較対照試験―
Keywords:フレイル, 身体活動量, 筋力トレーニング
【はじめに,目的】
施設に通所しているフレイルな高齢者に対する運動介入としては,レジスタンストレーニングによる筋力増強の有用性が確認されており,現在広く用いられている。一方で,施設通所高齢者の身体活動量は,一般の高齢者よりも著しく低いことが多い。フレイルな高齢者が効果的な介護予防効果を得るためには,施設通所時の一時的な筋力トレーニングのみでなく,在宅における活動性も向上させる必要があると思われる。しかしながら,現状では筋力トレーニングに加えて,在宅での身体活動量も管理し,包括的に運動を支援できるシステムは存在しない。本研究では上記のシステム(包括的運動支援システム)を開発し,それを運用することによる効果を明らかにすることを目的とする。
【方法】
本研究のデザインは無作為化比較対照試験である。対象は通所施設を利用しており,自立歩行が可能であるフレイル(プレフレイル)高齢者41名とした。介入期間は24週間とし,対照群(20名)には一般的な漸増負荷の筋力トレーニングを実施した(ウェルトニックシリーズ,ミナト医科学社)。介入群(21名)には,筋力トレーニングに加えて,腕時計型身体活動量計(Actiband,TDK社)を用いて活動量を24時間モニタリングした。筋力トレーニングの遂行状況,活動量データ(歩数,中強度活動量,低強度活動量,不活動時間等)をシステム上で一元管理し,定期的にフィードバックすることで,施設および家庭での運動を包括的に支援できるようにした。なお,活動量は前月の10%改善を目標として指導した。主要アウトカムは身体的フレイル(Friedらの基準),副次アウトカムは,移動能力(TUG),下肢筋力,強度別身体活動量,行動変容ステージ,IADL(老研式活動能力指標),健康関連QOL(SF8)とした。解析にはIntention to Treat解析を採用し,分割プロットデザイン分散分析を用いて効果を検証した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
ベースライン時に身体的フレイルに該当したのは,介入群で12名(57%),対照群で12名(60%)であり,その他は全員プレフレイルに該当した。対象者のうち,24週間のプログラムを完遂し,すべての評価を実施できたのは,介入群18名,対照群14名であった。副次アウトカムの変化としては,介入群において行動変容ステージが向上し,低強度の身体活動量が増大していた(交互作用:p<0.05)。また,移動能力,下肢筋力にも有意な向上を認めた(交互作用:p<0.05)。IADL,健康関連QOLには有意な改善を認めなかった。主要アウトカムである身体的フレイルの状況については,介入群においてのみ,身体的フレイルに該当する割合が57%から24%に減少し,7名がプレフレイルに移行していた(p<0.05)。
【結論】
フレイルの改善には,従来の筋力トレーニングに加え,トレーニング量や活動量の管理とフィードバックを基盤とした包括的運動支援システムの運用が有効である。
施設に通所しているフレイルな高齢者に対する運動介入としては,レジスタンストレーニングによる筋力増強の有用性が確認されており,現在広く用いられている。一方で,施設通所高齢者の身体活動量は,一般の高齢者よりも著しく低いことが多い。フレイルな高齢者が効果的な介護予防効果を得るためには,施設通所時の一時的な筋力トレーニングのみでなく,在宅における活動性も向上させる必要があると思われる。しかしながら,現状では筋力トレーニングに加えて,在宅での身体活動量も管理し,包括的に運動を支援できるシステムは存在しない。本研究では上記のシステム(包括的運動支援システム)を開発し,それを運用することによる効果を明らかにすることを目的とする。
【方法】
本研究のデザインは無作為化比較対照試験である。対象は通所施設を利用しており,自立歩行が可能であるフレイル(プレフレイル)高齢者41名とした。介入期間は24週間とし,対照群(20名)には一般的な漸増負荷の筋力トレーニングを実施した(ウェルトニックシリーズ,ミナト医科学社)。介入群(21名)には,筋力トレーニングに加えて,腕時計型身体活動量計(Actiband,TDK社)を用いて活動量を24時間モニタリングした。筋力トレーニングの遂行状況,活動量データ(歩数,中強度活動量,低強度活動量,不活動時間等)をシステム上で一元管理し,定期的にフィードバックすることで,施設および家庭での運動を包括的に支援できるようにした。なお,活動量は前月の10%改善を目標として指導した。主要アウトカムは身体的フレイル(Friedらの基準),副次アウトカムは,移動能力(TUG),下肢筋力,強度別身体活動量,行動変容ステージ,IADL(老研式活動能力指標),健康関連QOL(SF8)とした。解析にはIntention to Treat解析を採用し,分割プロットデザイン分散分析を用いて効果を検証した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
ベースライン時に身体的フレイルに該当したのは,介入群で12名(57%),対照群で12名(60%)であり,その他は全員プレフレイルに該当した。対象者のうち,24週間のプログラムを完遂し,すべての評価を実施できたのは,介入群18名,対照群14名であった。副次アウトカムの変化としては,介入群において行動変容ステージが向上し,低強度の身体活動量が増大していた(交互作用:p<0.05)。また,移動能力,下肢筋力にも有意な向上を認めた(交互作用:p<0.05)。IADL,健康関連QOLには有意な改善を認めなかった。主要アウトカムである身体的フレイルの状況については,介入群においてのみ,身体的フレイルに該当する割合が57%から24%に減少し,7名がプレフレイルに移行していた(p<0.05)。
【結論】
フレイルの改善には,従来の筋力トレーニングに加え,トレーニング量や活動量の管理とフィードバックを基盤とした包括的運動支援システムの運用が有効である。