The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » 口述発表

[O-YB-03] 口述演題(予防)03

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:吉田 剛(高崎健康福祉大学保健医療学部理学療法学科)

日本予防理学療法学会

[O-YB-03-6] 2年間の追跡調査による筋量サルコペニアの発生頻度とその危険因子の検討
GAINA study

中祖 直之1, 松浦 晃宏1, 秋田 朋子1, 仲田 奈生1, 松本 浩実2, 萩野 浩2 (1.大山リハビリテーション病院, 2.鳥取大学医学部付属病院)

Keywords:筋量サルコペニア, 発生頻度, 危険因子

[はじめに,目的]

筋量サルコペニアは四肢骨格筋量が低下した状態であり,高齢者においては有症率が比較的高く,筋力や身体機能の低下を併発することによりサルコペニアと呼ばれる。サルコペニアは身体的虚弱を促進させる大きな要因として知られ,転倒や各種疾患へのリスクが高まることがわかっている。その前提となる筋量サルコペニアの発生に関しては,横断的に示された報告が多く,前向きコホート調査は限られている。本研究の目的は,2年間の前向きコホート調査にて,地域在住高齢者における筋量サルコペニアの発生頻度および,ベースライン調査時の危険因子を検討することである。

[方法]

対象は鳥取県日野町の集団健診を受診した273名のうち,要介護認定者を除いた223名(男性82名,女性141名,年齢73.6±8.3歳)とした。ベースライン調査として,基本項目,BMI,変形性股・膝関節症の有無,脊椎疾患の有無,骨量,骨粗鬆症の有無,アルブミン値,歩行速度,握力,転倒歴の有無,足腰の痛みの有無(VAS),体組成データなどを調査した。筋量の測定には体組成計を用い,筋量サルコペニアはAsian Working Group for Sarcopeniaの定義に従い判別した。非筋量サルコペニアの該当者のなかより1年後と2年後の追跡調査にて,それぞれ筋量サルコペニアの発生頻度を調査した。2年後の追跡調査にて,筋量サルコペニアと判別されたものを筋量サルコペニア発生群,その他を維持群として群間比較を行った。次に筋量サルコペニア発生の有無を従属変数とするロジスティック回帰分析を行い,筋量サルコペニア発生におけるベースライン調査時の危険因子の抽出を行った。また,ロジスティック回帰分析により関連のみられた要因に対して,ROC曲線を用いてカットオフ値を算出した。

[結果]

ベースライン調査に参加した223名中,170名(76.2%)が非筋量サルコペニアに該当し,そのうち82名が1年後と2年後の追跡調査に連続参加した。1年後に新たに筋量サルコペニアを発生したものは7名(8.5%),2年後では16名(19.5%)であった。BMI(Odds:0.464,95%CI:0.293-0.734,p=0.001)と体脂肪率(Odds:0.874,95%CI:0.777-0.983,p=0.024)が筋量サルコペニア発生における危険因子として抽出された。また,2年後の筋量サルコペニア発生の有無における,ベースライン調査時のBMIのカットオフ値を21.95とした場合,感度71.2%,特異度75.0%,曲線下面積0.746であった。

[結論]

地域在住高齢者を対象としたコホート調査では,筋量サルコペニアの発生頻度は年単位で約10%であった。その危険因子としてBMIと体脂肪率が抽出され,標準的な体格指数であっても筋量サルコペニアの状態に陥る危険性があり,BMIや体脂肪率が高めのものほどその危険が低くなる可能性が示唆された。